それは桜の舞う季節に知った、 初めての感情。 |
| 朝靄の立ち込める慰霊碑で。 話しかけることは、いつも同じ。 オビト。 今日もオレは生きてるよ。 お前に貰った命。未来。抱えてちゃんと生きてるよ。 先生や、お前の守りたかった里は、今日も相変わらずだ。 オレの日常も相変わらずで。 胸が焦がれるような感情を、まだ覚えてはいないけれど。 最近よく、先生の言っていた、神サマの生まれた日の話を思い出すんだ。 遠い異国の地で起きた奇跡。救いを求める人々へ差し込んだ、光の話。 オレは神サマとか、そんなキレイなもの、今だって信じちゃいないけど。 でも、もしもいつか、オレも「大事な人」に、出会えたら。 その人は、きっと神サマみたいに思えると、思うんだ。 先生のようになれば少しはわかるかもしれないと思って、教師の道を選んだけれど。 そう簡単にはいかないね。 どうも、オレは教育者には向かないようだ。 オレの合否テストは厳しいって評判だよ。 未だに合格者ゼロ。 今度の試験もダメだったら、下忍担当の役目は降りようと思う。 けれど、やがてその思いは覆される。 幼かった自分の、それに一番良く似ていると思った少年が。 自分が一番憧れていた光景を作り出した。 今まで、誰一人成し得なかったことを。 今まで、誰一人辿り着けなった答えを。 初めて、やってのけた少年。 うちはサスケ。 それは嘘みたいに単純なコト。 仲間に弁当を分け与える。そんな、嘘みたいに単純で、些細なコト。 たった、それだけのコトだけど、それをオレはずっと願っていたんだ。 ねぇ、サスケ。 その時の光景が、今も目に焼きついているよ。 それからは、毎日君の事を見ていたよ。 他人を寄せ付けず、必要以上に係わり合おうとせず。 素っ気無くて、無口で、無愛想で、表情が硬くて。 けれど本当は。 誰より優しいんだ。 失敗するナルトのフォローに回ったり。 こっそり気落ちするサクラに言葉をかけたり。 照れ屋で口が悪くて、だから気付くのは難しいけれど。 本当は誰より優しくて、不器用なんだ。 それはきっと、お前も痛みを抱えて生きているから。 強いなと、思った。 キレイだなと、思った。 独りで必死で孤独に生きようとするお前が、ひどく切ないと思った。 どうして、こんなにもサスケが気になるのだろう。 どうして、こんなにも胸が痛むのだろう。 どうして、こんなにもたまらなくなるんだろう。 どうして、こんなにもー…。 「やぁだカカシ。あんたそれって恋みたい」 同僚のくの一の、赤い唇から零れた言葉。 恋? これが? これが恋? ああ、そうか。 これは「恋」で、オレはサスケが「好き」なんだ。 ああ、そうか。 これがきっと、「愛しい」と、いうことなんだ。 ああ、そうか。 ああ、そうだったのか。 これがー…。 そう、知覚したとたんに、涙が溢れた。 自分でもびっくりするぐらい、涙が自然に流れて止まらなかった。 ああ。 先生。 あなたの言っていた感情が、今ようやく理解できた。 ああ、本当に。 切なさに、胸が疼く。 ああ、本当に。 愛しさに、泣きたくなる。 ああ、本当に。 その人の存在は、なんて尊くて。 その人を想うだけで、なんて心が満たされるのだろう。 胸がしめつけられるような愛しさで、いっぱいになる。 どうしよう。 こんな。 ねぇ、どうしよう。どうしたらいい? サスケ。 君が好き。 |
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