novel ◎  top  about  novel  diary  link  mailform  web拍手  index


8月7日の教室

「お前分かってんだろ。俺の言いたいこと」
わざわざ部活が終わるのまで待って、ご丁寧に僕を呼び出してくれた杉原は、不機嫌な顔して椅子に凭れていた。
夏の教室、しかも夏休み。
今年はこれでもかと言うほど暑いのに、今日は最近でも一番暑い気がした。
教室の廊下側の壁で二台回っている扇風機の風はここまで届かない。
「杉原、お前暑くねえの?」
だから聞いてやったというのに、汗一つかかずにさらっとした態度で睨み付けてきた。
いるんだよなたまに。
汗なのにさらさらで全然べたべたしない奴。
いや、こいつの場合本気で暑さ感じてませんって顔だ。
冬はあれだけ着込んでいたから、夏には強いタイプだろう。
夏生まれってわけじゃねえはずだが。
直射日光には弱くても暑いのは平気ってのか。
「んなことどうでもいいんだよ。それより分かってんならさっさと返せ」
「蝉元気だよなあ。さっきからミンミンミンミンと」
「佐藤!」
わざとらしくはぐらかしてにやりと笑えば、眉間顰めて立ち上がった。
「ばーか。もう僕が持ってるわけないだろ?」
その様子に呆れて言ってやれば、脱力して机に座る。
「どこ行ったんだよ」
「みっちゃんとこに決まっとんし」
全部やってある英語の課題プリントなんてそこしか行くところがない。
「まあ他の奴らは学校で写してたからなあ」
しみじみとしてしまう。
「絶対出校日に持ってこいって言っとかねえと」
不機嫌そうに髪掻き揚げるしぐさが妙に色っぽい。
実際不機嫌なんだろうが、からかってやりたいような気持ちになってくる。
「なんでそんなにいるわけ?」
「九月一日に提出なのに忘れられてたら未提出になんだろうが」
諦めたらしい杉原の発言は最もだと笑った。
こういうところだけ真面目にやっとかねえと危険だからな。
こいつの場合授業態度悪すぎで。
諦めたら気が抜けたのか、元から第二ボタンまで開いていたシャツの前を持ってぱたつかせる。
なんだ。やっぱり暑かったのか。
「せっかく授業中に終わらせたのにそれじゃお気の毒だよな」
言いながらなんとなくそこに目をやっていたらふと目があった。
「何?」
「別に?」
覗き込まれてケタケタ笑えば訝しげな顔して離れていく。
「あっそ」
会話が終わると同時に聞こえだすのは騒がしいほどの蝉の声だ。
「あっづ。お前暑くねえの?」
さっき僕が聞いたことを杉原に聞かれて苦笑した。
「暑ぃに決まってんだろ。だから涼しいことしようか」
「は?」
そのまま腕を掴んで僕の方へ引き、鳩尾膝で蹴り上げて教室の後ろにあるわずかなスペースに転がしながらも上に乗った。
我ながら流れるような動きだっただろうと思う。
杉原も驚いてこっちを見つめていた。
「床は熱いか?」
「冷てえよ」
「よかったな」
にっこり笑ってやれば「よくねえ!」と起き上がろうとしたから顎に指滑らせて口付けた。
「っ」
する間際に真面目に引かれて笑えてくる。
くすぐるように首元で笑えば身を竦ませた。
「杉原はクラスで一番感度良いもんな」
「なんでクラス全員のことなんか分かんだよ」
間近で見詰め合ってにっこり笑えば、口元引きつらせて後退したそうな動きを見せた。
「全員試してもこれだけで興奮する奴なんかいねえよ。あ、それとも杉原ってこういうシチュが好きな人?」
殴られそうになったがみっちゃんで慣れてしまっていてさらりと交わせた。
同じような体型だから片方で慣れればもう片方でも予想がつく。
「だよなぁ。わざわざこんなくそ暑ぃ教室まで呼び出すんだから」
「んなわけねえだろ。ここが一番涼しいだろうが」
両手でぎぎぎと押し合いすれば勝つのは先に手ぇ出した方だろう。
「触…んなっ!」
スラックス越しに撫で上げれば阻止しようと手が動く。
それを掴んでベルト外して、膝の上乗って動き押さえてから手首に巻きつけた。
「それだけじゃ取れんだろうな」
しみじみ思って傍にあった掃除用の箒を手に取る。
長いだけで、先端に少し掃くところがついている、モップのような形の箒だ。
「おい」
冷静に顔引き攣らせながら見つめられてにっこり笑った。
「何もこれ突っ込みはしねえから安心しろって」
「当たり前だろが!」
「そうかな?」
とたんに静かになった。
多分冷静になって抜け出す策でも考えてんだろうけど。
「うわっ変、態っ!」
「失礼なこと言うなよ」
腰浮かさせてスラックスと下着一気に脱がして、箒の長いプラスチック部分を杉原の膝の裏に挟ませた。
まあ所謂M字開脚状態で両腕使って押さえんのが面倒だから、箒の柄を利用させてもらったってことだ。
「こうすれば近づいて体でお前に棒押さえときゃ、ずっと開きっぱなしだろ?」
しかも両腕は自由だ。
真剣に嫌そうな顔する杉原のシャツの下から手入れて乳首まで持ってって触る。
「抓るようなとこねえだろ」
ついに本気で切れたらしい杉原がもっともなことを言った。
だけどまあ。
「触って擦ると気持ち良くね?」
言いながら舌で指見せ付けるように舐め上げて実行してやれば身を捩る。
声殺して頭弱く左右に振ってんのが腰にきた。
なんだかんだ言ってこいつなかなかいいよな。
からかうだけで終わってやろうと思ったんだけど。
こんな暑ぃとこまで呼び出されたんだし?
「暑いな杉原」
「っ前が!」
「ほんと暑いよなぁ。よく鳴くし」
暑いと熱いを間違えて、その上蝉が鳴いてるって意味なのに知ってか知らずか睨みつけてきた杉原にゾクリとした。
「何?杉原も暑いの?」
「お前、どこのエロ親父だよ。その年齢でそれはやべえって」
「うーん。そっかな」
「ぁ…っん」
「せっかく急所撫でて声出したのにすぐ抑えんじゃねえよ」
「佐藤、くん」
「何かしら杉原くん」
わざとふざけたしゃべり方して雰囲気ぶち壊して逃れようなんて考えても無駄だと伝えるような笑顔を見せてやる。
「気持ちいい」
なのに目ぇ逸らしていきなりんなこと言うから、油断しちまった。
「う、ぐっ!」
「ふざけてんじゃねえよ阿保たわけ馬鹿」
肩で押されて後ろにあった机にぶつかった。
「ってぇ。ったくそんな格好でどうするつもりかな杉原くんは」
「るせえな。こんなんすぐとれるわ」
完全に切れた声だして後ろに拘束された腕を動かす。
しゃがみこんでんのは一応恥じらいがあるからか。
なんて思ったら大間違いで立ったらさっきの二の舞になることがちゃんと分かってんだろう。
座られるとスペース狭ぇからこっちからは入れない。
今ならぜってー蹴られるし。
「あやしー格好してんね杉原くん。誘ってんの?」
薄く笑い浮かべて睨みつけてくるとどうしても屈服させたくなるのはどうしてかなっと。
「おいっ!」
「こないと思っただろ?でも乗ったもん勝ち」
安心したのか気ぃ抜いた瞬間狙って足の上に乗れば、解けたベルト投げ出して肘鉄かましてきたから受け止めて腕を手で押さえた。
「握力だけは負けんし」
「お前友達無くす。ぜってえに無くすからな」
「えー、いつからお友達でしたっけ?」
ケタケタ笑ってやれば脱力して壁に凭れた。
「好きにしていいわけ?」
「お前本気でやる気ねえからどうぞお好きなように」
「ふうん?よく分かってんな。そういう態度とられるとやる気なくなるよ」
「だろ」
にやりと笑い合って、その笑いにまた欲情した。
なんでこんな奴にって思うけどまあいいだろ。
するりと内股から撫でればまた眉顰める。
暫く手を動かして、その手を見ていた杉原が、嫌そうに視線を逸らした。
「何?してもいんだろ」
見ていて視覚できちゃったかなとか思いつつもやめてやらない。
「ん」
少しだけ深いとこまで撫でればやっと抵抗を見せた。
「していいんだろ?」
くすくす笑ってしまう。
何か考えてるなって分かる表情。
抵抗してもしなくてもやめてなんかやんねえけど。
杉原は杉原だし。
僕が今抱きたいのはこいつだけだし。
「んぁっ」
首元に顔近づけて鎖骨から舐め上げれば、面白いほど反応する。
余計な考えがまとまらない内にさっさとやっちまおうと、スラックスに入れておいたチューブ取り出して下半身に塗りつけた。
「お前絶対変態だろ。そのうち捕ま…るっ」
先端に垂らして滑り落ちる液体を掬いながら扱く。
「ぃ…ぁ、っ」
すっげ嫌そうな顔して乱れる姿が嬉しくて、理性とかそういうの、ぶっ飛ばしてやりたくなった。
ゴムつけた指後ろに滑らせて一本入れていいとこ探して無理やり撫でる。
悲鳴が良い喘ぎに変わったところでもう一本入れた。
「も…い、ぁあっ――やめろって!」
「嫌」
罰でも与えるかのように三本に増やして撫で上げる。
息苦しいのか暑いのか、分からない吐息の乱れが色っぽくてそのまま口を塞いだ。
歯列を割って舌を入れて、思いの他やわらかいそれを甘く噛む。
「ん…ん」
力抜けたの確認して下から指を抜いた。
「は、ぁ」
口を離して少し潤んでいる目を見つめる。
瞬きすれば泣きそうだ。
そんなに嫌だったのか、それとも感じてんのか。
そんなの見て僕まで。
自分がどういう顔してんのか分かんねえほど、どうしてか夢中になっていたことに気づいた。
「すぎ、はら」
声が熱っぽい。
両足抱え上げて無理やり突っ込んだけど大丈夫そうだった。
「ば、かかお前。馬鹿面すんじゃね、ぇっあ!」
睨まれて薄く笑って、自身突き立てて杉原追い立てたのはしっかり覚えてんのに、その後気持ち良かったとしか覚えてねえくらい良かった。
どうしてだか分かんねえけど。
なんか、すっげ感じて、とにかくよかった。
恋愛感情なんかねえのに。
ただの遊びのはずが、友達だからすっげ感じたとか?
「さ、とう。シャツ!」
杉原の声が掠れている。
いつの間に全裸にしたっけか。
ケタケタ笑いながら着せてやろうとすればすっげえきつく睨んできて奪い取られた。
「処女でもあるまいし。あぁ、処女じゃねえから自分で後始末すんのか?」
冗談でからかったら、ひくりと顔引き攣らせる。
「バックバージンだったに決まってんだろうが」
「は?」
いつからか気にしていなかった蝉の鳴き声が耳に戻ってきた。
暑い暑いと思わせる、夏の名物的な音だ。
間抜けな空間にミンミンとかわいらしい音が鳴る。
カーテンについていた蝉が、窓の付近で鳴いていた。
「まじで?」
「れ、がっ!誰が男になんか抱かれっか阿保っ!」
「あー」
ノリで抱いただけなんだけどな。
しかも処女かどうかとか考えずに。
杉原だからまあ抱いて当たり前って感じで。
あれ?
「当たり前じゃねえよな」
「何が」
「僕が杉原抱くことが」
「いっぺん死んでこい」
「それは無理」
とんとんと会話して、ふと、思いついたことを口にしていた。
「付き合おうか杉原」
何故だろう。
一番至近距離で鳴いていた蝉の声までぴたりと止み、遠くで鳴く蝉の声だけが微かに教室に届いた。
杉原からの返事はない。
気まずくなって背を向けた。
僕は言ってから何故か緊張してきて、自分で杉原の反応を確認することも出来なくなっていた。
どうしてこんな状態になってんだ。
返事が怖いのはどうしてだ。
別に好きとかそういうんじゃ…――あ。
考えたとたんに心臓が分かるほどに動き出す。
暑さと違う理由で汗が流れた。
冷や汗ともいう。
「お前、熱で頭やられたんじゃねえの」
背後からした不機嫌そうな声に、返事することも出来ずに、杉原が動く気配がないことに安堵していた。
頭、いかれたんかな。
ならどうしてこんな、緊張してんだろ。
どうして、こんな。
杉原がまともな返事しなかったくらいで、胸が痛いんだ。
「好き、って」
思い切って振り返る。
不機嫌そうな表情を見た。
顔が熱いのを隠す余裕さえないほど、切羽詰って一息で言う。
「好きだから抱いて抱いて好きって気づいちまったのって、いかれてるってことなのか?」
微かに目を見開かれて、その表情を読むことが出来ないほど動揺していた。
「お前、俺のこと好きなのか?」
なのに、杉原の声が間抜けていたから、思わず深く頷いた。
僕は、こいつが好きだ。
杉原が好きだ。
傍にいるのが当たり前のような気がするほど自然で。
とにかく好きだと思った。
どうしてそうなっちまってたのか、分かんねえけど。
何度目かの沈黙の後、杉原は苦笑いを見せた。
「マジで死ね?」

BACK

2style.net