誰一人寄り付かぬ、錬金都市アルケシティの夜。
虫の声ひとつさえ響かないこの夜長は、まさにこの街の寂れ方を表すようなものだった。しーん、と今にもそんな擬音さえ耳の鼓膜に響いてきそうなほどに。
そんなアルケシティの街中を―――、風を切る音を立てて、一つの影が横切っていく。
赤い月に重なったその影が、手に携えた槍で、月を割ったように見えた。
(くそ…、拙者は…、拙者は……!)
ぎり、と痛いほどに唇を噛み締めて、狭い街道の中へとその影が潜っていく。暗闇に沈む影は、ひたすら何かを目指して馳せていた。





断罪傷跡 後編





「………くっ!」
ガゴッ、と途中の障害物に当たり、若狭は低く呻いた。
この街道は前にも、ガラテアを助けた際に通った道だ。これで通るのは二度目、だが、若狭はらしくなく苦戦を強いられていた。暗闇で周りが見えないからではない。意識が回りに向いていないせいだ。
「はぁっ…、はっ…っく、まだ着かぬのか…!」
一度も止まらず全力疾走をし、障害物に何度も(つまづ)いたせいで、既に若狭の息は酷くあがっていた。普段ならば息の一つさえ乱れさせないのに。
「……此処か」
やがて、若狭は気配の根源に辿り着いた。漸く立ち止まって、相当自分の息が荒い事に気付く。
堪らず前屈みになり、膝に手をつくと、暗闇に慣れた目が、酷くよじれて痛んでいる草鞋(わらじ)をとらえた。一度の走りでこんなにしてしまう程、どうやら自分は酷い走りをしてきたらしい。
今、自分が冷静などではない事は、既に分かっている。ただ今は、彼女をなんとしても連れ戻す事――、ただそれだけしか考えていなかった。
…彼女は確かに此処に居る。確信を持って、若狭は、ぼろぼろに崩れ落ちた扉を踏みしめて、中へと入っていった。
家の中は相変わらず暗い。前回はウィルの炎のおかげで見えたが、今はそれもない。自分の夜目と、赤い月の光だけを頼りに、若狭は奥へと歩んでいく。
そして、一番奥の部屋へと辿り着き――、手探りでドアノブを探し、そっと回して、扉を開くと―――
「………!」
目に入ってきたのは、此処へ初めて入った時と、同じ光景。
横たわる人。無造作に撒き散らかされた髪。猫の様に丸まって、しかし顔を見られないようにと突っ伏している寝姿――、そのどれもが同じ光景だった。ただ一つ、手足を拘束されていないのを除いては。それはまるで、自分の意志でここにいるのだと示しているかのよう。
「……ガラテア」
ぼそりと囁くようにして声をかけると、死んだように眠っていたガラテアが、うっすらを目を開く。寝転んだまま此方を見上げ、若狭である事を確認すると、ゆっくりとその気だるい体を起こした。
「……師匠…、いえ、若狭さん……どうしてここにいるんですか」
その声は、やはり彼女のもので――機械的で無機質な、いや、前よりももっと酷い、死人のような声だった。
あまりにもそれが酷すぎて、若狭は答えに少し躊躇った。が、真っ直ぐに此方を見据える蒼眼に押されて言葉を紡ぐ。
「お前を、連れ戻しに来た」
「どうして、師しょ…若狭さんは、私を捨てた。それなのにどうして若狭さんが私を迎えに来るのですか。……私を助けた事を後悔しているくせに」
「………」
答えられない若狭に、ガラテアが眉を引き攣らせる。
「若狭さんのしている事は蛇足しています」
「それを言うなら矛盾だ」
「………」
間違いを即座に修正されて、ガラテアはばつが悪そうに黙り込んだ。
何分、今までまともに勉強してこなかったということで、アデルの父の書斎から辞書をパクッて読んで覚えた言葉を、意味がよく分からないうちに使うという、知識薄の典型なのだろうが…。思わぬ所で出た失態に、恥ずかしそうに俯くガラテアを、若狭は溜息を吐きながら見下ろし、そっと声をかけてやった。
「…帰るぞ。皆が心配している」
「………」
「ガラテア」
座り込んで俯いたまま、ぴくりと動きもしないガラテアを、若狭が名を呼んで促す。
しかしガラテアは暫し黙り込み、やがて静かに顔を上げると、やはり機械的な声で呟いた。
「………若狭さん…お願いがあります」
「なんだ」
「今だけでいいですから、師匠と呼ばせて下さい」
「…いいだろう」
その意図はよく分からなかったが、特にそれを咎める気にもならなかったので、若狭はそれを許した。
「有難うございます…」
安堵したような表情で、ガラテアは礼を言い、息を一つついてから、ゆっくりと立ち上がって再び話し出した。
「私が此処に来たのは、死ぬためでした」
「…ッ!」
あまりに突然で、そして淡々とした告白に、若狭が眉をぴくりと顰める。ガラテア、と思わず若狭がそれを叱りかけたが、ガラテアはそれを抑えて続ける。
「私は既に一度死んだ…パパに見捨てられたあの時に。けれど私は息を吹き返した、師匠が私を助けてくれたから。……あの時から、私の全ては師匠になった……師匠だけが、私が唯一心許せる人になった………」
ガラテアの言葉に、若狭は口を開いたまま硬直した。
そんなにまで、ガラテアにとって己は、重要な存在であっただろうか。
だから、己の事をあれ程までに聞きたがったのだろうか…。
ずっと引っかかっていたものが、すうっと通り抜けていくような気がした。それと同時に、ガラテアの事など何も考えず、自分の命を貫く事だけを主義とし、きつく突き放した自分への罪悪感が湧き上ってくる。それがより一層、若狭を精神を混乱させた。
「でも…師匠は私を助けた事を後悔している。それは私の存在を否定されること。師匠に、"助けれなければ良かった"と言われたら……私はもう、生きる意味がない………」
動けない若狭の目の前で、すぅ、とガラテアは銃を取り出すと、その銃口を自らのこめかみに当てた。
「!! ガラテア、よせ……!!」
意図を察し、若狭は慌てて叫ぶ。が、ガラテアは躊躇い無く指を引き金にかける。
「さようなら、師匠…せめて、お慕いする貴方の弟子のまま……逝かせて………」
若狭の脳裏に、稲妻のような衝撃が奔る。同時に、恐ろしい景色が断片的に目の奥を襲った。血塗れになりながらも、必死で此方に手を伸ばし、行き先を伝える仲間達の姿。順番に聞こえてくる断末魔の叫び。
止めてくれ…、思い出す、蘇る、戻って来る…あの、あの忌まわしい光景が……!



『逃げろ……逃げてくれ………、お前だけは生きろ!!ミーメイ……!!』



「止めろ…、もう誰も、俺の前でいなくなるな……………ッ!!」



――――――ガァァン!!



ガラテアの手から、ガシャリ、と音をたてて銃が床に落ちる。
銃は、口から煙を吐いたまま、床の上をのたうつように回り転がって静止した。
打たれた弾は家の天井に当たり、屋根裏にミシミシと軋む悲鳴をあげさせている。ぱら、と埃と木屑が幾つか空に舞い落ちた。
一方、銃を持っていたガラテアの手首は、若狭に強く掴まれていた。若狭が寸前で、銃口を上に向けさせたのだ。それと同時に、若狭はガラテアの身体を抱き締めていた。驚きに見開いた蒼眼を、自らの胸板に押し付けるようにして。
息苦しさに耐えかねて、ガラテアが離れようとする。が、それを若狭の腕は許さない。ガラテアの細い体を引き寄せて、離さないと言わんばかりに抱き締めてくる。若狭の大きな手のひらが、微かに震えていることに気付き、ガラテアはそっと囁いた。
「…どうして、止めたの……?師匠は…、私がいらないんじゃないの…?」
「馬鹿者!…そんな訳があるか……、拙者は、拙者は…もう誰も失いたくはない…!!」
そう叫ぶように言った若狭の声は、今まで聞いたもののどれより、酷く震えた声色だった。
「…師匠…?師匠はどうして、震えているの…?」
「怖いからだ…、また、拙者は誰かを殺してしまうのかと…、それを想うと…、とてつもなく怖いからだ…!」
若狭は、必死に唇を噛み締めて、がたがたと小さく震えていた。それはガラテアの身体をすっぽりと抱き締めているのに、不思議とそれは自分のものより、ずっとずっとか細いものに見えてくる。ガラテアは抵抗を止め、大人しく腕の中に納まった。
暫く、二人はそのままだったが、赤い月が部屋の中をすぅっと月光で照らす頃――、若狭はガラテアを離し、向かい合ったまま、そっと言葉を紡ぎ出した。
「………拙者はかつて…、とある傭兵集団の一人として戦っていた……」
「! 師匠、それは…」
出だしだけを聞いて、ガラテアは思わず、若狭を引き止めそうになった。その内容が、頑なに若狭が話すのを嫌がっていた、彼の過去についてだと本能的に悟ったからだ。
「いい。お前になら、話しても構わない」
そう強く言う若狭に制され、ガラテアは大人しく引き下がる。それを確認して、再び若狭は話し出す。
「そんな生活を送っていたある日…、とある悪魔を退治して欲しいとの依頼が入った。それを拙者達は了承し、皆でその悪魔が住むという渓谷へと足を踏み入れた。……だが、それは罠だった、腕が立つ傭兵集団と噂されていた拙者達を好く思わない者達が、拙者達を皆殺しにするため、嘘の依頼を頼んだのだ」
ぴくん、と、ガラテアの耳だけが、事態の急変と呼応して動いた。
「不意をつかれた拙者達は、なす術もなく次々と討たれ…しかし、このままみすみす死ぬ訳にはいかぬと…、ただ一人でも生きて欲しいと…、拙者一人だけを逃がそうとしたのだ……」
「………」
若狭の声が、微かに、しかし徐々に震えていく。
「無論反対したが、既に手段を選ぶ時は残されてはおらず…、結局、拙者だけが一人生き残った……仲間達を皆、見殺しにして……」
その表情は、普段の彼とまるで違わないのに。彼の黒眼が、悲痛な程に哀しみを称えて揺らいでいた。
「一人生き延びて、それから襲い来るのは(おびただ)しい後悔と重責の念…。拙者はそれに耐える事など出来ず…そのまま、自決した」
「………!」
あまりに唐突で、あまりに残酷な惨状を表現する言葉に、ガラテアの蒼眼が、カッと大きく見開かれた。
「眼を覚ますと、拙者はプリニーに成り果てていて…赤い月が言った…お前は重罪を犯したと、故に罪を償えと……。それは仲間を見殺しにした罪だと思っていた。だから拙者は誓った、再び人の姿になった時には、もう人と馴れ合うのは止めようと…名を捨て、傍観者として、独り皆を遠くから見守る責務を負おうと…そう、決めた……」
そして、今に至る…。若狭はその言葉通り、名前を捨て、傍観者として勤しむ者となった。
全て余すことなく語られた彼の過去に、ガラテアはただ無言で彼を見上げるしか出来なかった。
若狭の過去を知りたいと言ったのは、ガラテアだ。若狭の事を敬愛するが故、全てを知りたいと思ったのもそう。だけれど、師匠のこんな悲痛な顔を見てしまうくらいなら……。ガラテアは、若狭の言った通り、自分がなんと下らなく浅はかな質問をしてしまったのだろう、と後悔の念が満ちた表情をして、申し訳無さそうに俯く。
しかし、そんなガラテアを、若狭はポンッと手を置き優しく撫でてやる。
「だが、違ったのだな…。赤い月は、拙者に仲間を見殺しにした罪を償わせようとしたのではない…仲間に助けられた命を、軽々しく捨てた罪を償わせようとしたのだ……。それに気付かずに、拙者と同じ事をお前にさせようとしてしまった……。拙者は、本当の愚か者だ……」
「……そんなこと…、そんなことないです……!」
ガラテアは、ふるふると首を横に振る。そして、若狭の腕を振り払い、膝立ちになって身を乗り出すと、若狭をぎゅうっと抱き締めた。
「師匠は迎えに来てくれた…私をまた助けに来てくれた。だから愚か者なんかじゃない。師匠が傍観者でありたいと願ったのも、師匠が優しいから。師匠が、誰よりも皆の事を心配しているから」
細い腕が、自分をそっと優しく包み込む。自分よりガラテアの身体ははるかに小さい筈なのに、不思議とそれが、大切で、頼れるもののような気がした。
「もう一度私を師匠の弟子にして下さい。私は絶対死にません。師匠が私を見守っていてくれるから。私は、師匠にずっと見守られていたい…」
「ガラテア………」
力なく、そのまま若狭はガラテアの胸に身を委ねる。傍観者である事を決めた時から、何者にも頼らずに生きると誓った。故に、今まで誰かの温もりを感じる事など、ただの一度もなかった。
今初めて、人肌に全て明渡して触れた気がした。とても、とても温かい。本能的な羨みとして予想してきた、そのどれよりも。
嗚呼…、人の温もりは、こんなにも愛おしいものだったのだろうか……
こんなにも、誰かに傍にいて欲しいと思ったのは、初めてだ……
自然と、目頭が熱くなる。声にならない想いの代わりとなって、じんわりと熱い涙が溢れ出てくる。それを止める術は知らない。若狭は、そのまま温もりにより沈むようにして、ガラテアの細腰に腕を回して引き寄せた。
「師匠……」
「今は、離したくない……すまぬ、もう暫し、このままで……」
「分かりました……師匠が、それを望むなら……」
涙の伝った頬を押し付けるようにして、ガラテアは、もう一度若狭の頭を強く抱き締め、静かに目を伏せた。
赤い月が、かつての罪人を慰撫(いぶ)するように、そっと優しく包み込んでいた――――




翌日、朝露に濡れる草原を踏みしめて、若狭とガラテアはホルルト村に帰還した。
その途端、アデルの家の扉が勢い良く開けられたかと思えば、二人の帰りを待ちわびていた皆に一斉に迎えられ、特に感極まっていたシャルルとローラとマーシェルが、否応無しにガラテアをぎゅうっと抱き締めた。
「?!」
「わーん!良かったぁガラテア!帰って来なかったらどうしようって心配だったよー!」
「わたしたちが無理強いしたの気にしてたらごめんね…?」
「もうあんなことしないから怒らないでくれー!」
すりすり、と涙目で頬擦りする三人に、ガラテアは訳が分からず目を点にしている。どうやら、人にこんな突拍子もない事を突然された経験がない為、恥ずかしさに困惑している模様だ。いや、普通の人でも十分恥ずかしいだろうが。
「ガラテア、何か言ってやらんとずっとそのままだぞ」
「………、さ、三人のせいじゃない。だから気にしないで」
若狭に言われ、ガラテアは素直にそう三人に告げる。まだ口調はぎこちなかったが、照れのせいか少々声色が上ずっている。
ガラテアのその言葉に、ホッと胸を撫で下ろした三人は、今度はぱぁっと満面の笑顔を見せた。
「良かったぁ!あ、そだ、ガラテアにもあだ名つけちゃおうかな!テアちゃんとかどーでしょー!」
「て、テアちゃん…?」
「お、シャルルそれいいなー!ナイスアイデアだぞー!」
「テアちゃん、これからも仲良くしてねっ♪」
どうやら、早速ガラテアに新加入者恒例のあだ名付けが持ちかけられたようだ。このあだ名付けは、一度やられるとそのまま絶対的に定着してしまうので、もうガラテアは反論の余地がないだろう。
…しかし、皆に囲まれているガラテアは、以前のように酷く人を嫌うような気配は薄くなったようだ。まだ慣れておらず困惑はしているものの、そのうち慣れていくだろう。若狭はその様子を見下ろして、フッと少しだけ微笑んだ。
と、そこで、無事にガラテアを連れ帰ってお手柄といった感じで、ルーウェンと閃光に囲まれる。
「いやぁ、よく連れ帰ってきたなー」
「そりゃあ、若の弟子だもんな、何処にいるかぐらいすぐ分かるんだろ。なぁ若?」
そう、閃光に問われ―――若狭は、暫し間を置き、目線をちらりとガラテアの方に向けながら、はっきりとした口調で答えた。
「………そうだな。こやつは拙者の弟子だからな」
「……師匠…?!」
その言葉に反応して、ガラテアがぱっと振り向く。はっきりとした若狭の師匠宣言。それがあまりにも嬉しくて堪らなかったのか、ガラテアは頬を染めながら必死に若狭を見上げている。若狭もそれに応え、二人の視線が真っ直ぐに交わった。
「……おい、閃光。なんかあやしくないか、あの二人」
「だな。もしかして何かあったのか?」
「いやぁ、若も傍観者だとか言ってるけど、なんだかんだでやる事はやって……」
「……………何下らん事をほざいている、貴様等……!!」
ルーウェンと閃光の、明らかにからかい混じりの会話に、若狭の怒りの緒に火が点いた。即座にガイアの槍を取り出して構えると、慌てて逃げ出した二人の後を追って走り出す。
「待て、貴様等ッッ!!その俗世に(まみ)れた知能を叩き直してくれるッッ!!」
「わっ…ちょ、若、眼がマジだ―――!!」
「ほんの冗談だ冗談ッ!別にお前がガラテアを襲ったとかは考えてな…」
「ふざけるな――――――!!!!!」
「せせ閃光の馬鹿野郎!!余計怒らせちまったじゃね――か!!」
「た、頼むから許しッ……うわ――――!!」
怒涛の三人の追いかけっこを見て、皆はけらけらと面白おかしく笑った。ガラテアもまた、いつもの冷静さは何処へやら、ブチ切れて問答無用で二人を追い掛け回している若狭の姿に、クスッ、と小さく笑みを漏らした。
「……え、今、ガラテア…笑った……?」
「え…私が、笑う…?これが"笑う"…?」
「そうだよぉ!わーい、ガラテアが笑った、笑ったー!」
シャルルの嬉しさ一杯の声に反応して、今にも槍で二人を貫かんとしていた寸前で、ぴたりと三人の動きが止まる。
「若を見て笑ったんだよ?!やっぱり若はテアちゃんの師匠なだけあるねっ♪」
「ほほぉ……、つーことはやっぱり若はガラテアを襲っ…」
「………本気で刺されたいか、貴様…?」
どっ、と一気に皆の笑い声が響き渡る。こんなにも皆の輪に溶け込んだのは初めてではないだろうか。恥ずかしさと共に、不思議な嬉しさと楽しさが湧いて来て、温かい空気が若狭とガラテアを包み込む。初めて味わう感覚に、二人は暫く時を忘れて酔いしれた。



……後日談
「……師匠。皆の所へ行かないんですか?」
若狭の姿は相変わらず、皆の輪とは離れた村の端っこにあった。
「やはり拙者は………ああいったものは好かん。独りでいる方が性に合う」
「……クスッ」
そう呻くような声で言った若狭の頬が、やや赤らんでいたのに気付いたガラテアは、ああ、つまりは単純に恥ずかしいんだな…、となんとなく理解して、思わず小さな微笑みを漏らした。
「何がおかしい」
「いいえ、なんでもありません。…お供します、師匠」
「………勝手にするがいい」
許しを得て、ガラテアは、そっと、佇む若狭の隣に寄り添った。
隣り合う二人は、相変わらず無表情ではあったが、以前とは明らかに違う、とても朗らかで居心地良さそうな、そんな自然な表情であった。
孤高の侍・若狭と、その弟子・ガラテア。二人の縁故(えんこ)は、まだ始まったばかりである。










あとがき。
侍盗賊小説『断罪の傷跡』後編終了です!いやはや、思ったよりも長い話になってしまい、かなり反省…。ただでさえ文がまとまっていないのに、長いだけ長くて容量が重いってどうゆう事でしょう…(さあ
若の過去がこれで全て暴かれて、ガラテアの事を弟子として受け入れる事を決意した訳ですが、二人の恋愛としての関係はここから始まります。閃光とシャルルみたいな、深い間柄まで行くかはまだ分からないとして。笑 宜しければ今後も応援してやって下さい。
それと追加。この後編を書くにあたって、色々助言を下さった方、有難うございました!これでガラテアはテアちゃんに決定です♪(何
それでは、ここまで読んで下さって有難うございました。次回の作品でお逢い致しましょう。



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