ディスガイア2番外編 元旦記念 侍×盗賊SSS





黄と山吹色が交ざった、美しい曙がホルルト村の大地を照らす。
あまりに晴れ晴れしく、輝かしく見える初日の出を、アデルの家の屋根で一人見守り終えて、侍の青年、閃光は、ひょいっと軽々しく屋根の上から飛び降りた。
「………ふう」
一つ、静かな吐息をつく。今周りには、誰もいない。
なぜならば、皆、昨夜から今日に渡る、新年を迎えるためのカウントダウンで盛大に盛り上がり、そして、力尽き。後は明日、やや遅い朝の、ハナコ特製のお雑煮を楽しむだけだと期待しつつ、ぐっすりと眠りについている。
現在時刻、朝の6時前。
今、閃光は、東方出身の自分は、東方にいた頃から、元日の過ごし方の一つとして習慣付いていた『初日の出を見る』のを実践していたのである。
生憎、皆さきの理由でぐっすり眠っている為、共にこの美しい朝日を見てくれる人はいなかったのだが。
同じ東方出身のイライザ、ヴァジー、若狭もこの習慣は知っているのだろうが、生憎三人とも他の場所で見物しているらしい。そんな訳で、閃光は一人の初日の出見物を終えて、今から再び皆の所へ戻るとこであった。
「ったく、風習の違いってのはきついもんだ」
珍しくも、この季節の祭ごとに疎いこの俺が分かる風習だったのに……と、思わずそう不満を漏らしても、やっぱり誰も返事をしてくれる人はいない。
なんだか虚しくなってきて、どんどん登りゆく朝日を背に背負いながら、閃光がアデルの家の中に戻る。
廊下を歩いて自室へ戻る途中、ふと脳裏に、一人初日の出を見るために抜け出した時の、皆の寝顔を思いだした。
「そういえば、ルーウェンの奴、物凄いニヤけ顔してたなぁ…一体全体、どんな初夢を見てるんだか」
思わずマブダチの面白い寝顔をリアルに思いだして、ふっ、と笑みが零れる。
後でどんな夢を見てたか問い詰めてみるか、と一つ小さな楽しみを作って、閃光が扉のノブを握った、その瞬間――。


「へっぽこー!あけましておめでとー!!」


「……シャルル?!」
不意打ちの如く、耳に響いた聞きなれた声に、閃光がぎょっと眼を見開く。
「なんでお前がここに……」
「え、そんなおかしい?閃光が初日の出見に行ったって聞いたから、そろそろ戻って来る頃かと思って待ってたんだけど……」
「そ、そうなのか。いや別におかしくはないんだ、ただお前が早起きしてるのは珍しいなと思って……っつーかオイ。さっき俺の事へっぽこって呼んだろお前」
「あ、バレた?にゃははー」
新年が明けて一番最初に呼ばれたのが、この忌々しいあだ名だなんて、とちょっとさっきマブダチの間抜けな寝顔(これはこれで酷い)を想像してやや明るんだ気分が、また暗くなっていく感じがした。
「そーれーよーりー!閃光、まだあたしに"あけましておめでとう"って言ってないよ?」
無邪気な膨れ顔で催促されて、自分の気分に浸る余裕もなく、閃光はあーはいはいと呟きながら、ひとまず彼女に従う事にした。
「……あけましておめでとう、シャルル。今年も宜しく頼む」
「うんっ!あたしの方こそ、今年も宜しくねっ閃光!」
シャルルは、思い切り両手をあげて、嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねる。
新年早々、元気な奴だ…と相変わらずな彼女の様子に、吐息をつきながらも、今年も変わらない一年が始まる事に閃光は何処か、暖かな幸福を感じていた。
彼女に出会えたこと、そして今年もまた彼女と共にいれるようにと…先程見たあの朝日に、まるで願いをかけるように……
「ねっ閃光!」
「んっあっ?あ、ああ、なんだ?」
一人物思いに耽っていたところを、いきなり呼びかけられ、急遽現実に意識を戻されて、慌てて閃光が問い返す。
シャルルはそんな閃光の様子など察しもせず、変わらず無邪気なその笑顔で、そっと腕を伸ばし、ぎゅうっと閃光に抱きついた。
「うわっ?!シャルル?!」
「えへ、閃光、あったかい〜」
突然の抱擁に、閃光が顔を真っ赤にする。"暖かい"と言ったシャルルのその理由は分からないが、朝日を浴びて閃光の体が温まったせいなのか、もしくはたった今の出来事で暖かくなったのかは、とても曖昧な路線だった。
しかし、そっと肩を置いてシャルルに触れてみれば、予想以上に彼女の体は冷たい。先程『閃光を待っていた』と行っていたが、もしかして寒い廊下にぽつんと立っていたのだろうか。これでは、閃光を暖かいと感じるのも無理は無い。
「寒いなら早く布団に入れよ。俺も、皆が起きて来るまで寝なおす所だったし…お前も部屋に戻れ」
「うん、そーする。…でも、閃光。その前に……」
「その前に?……って、ッッ…?!」
何をするのかと思えば、シャルルは閃光の顔の前まで、精一杯自身の顔を寄せたまま、待ちわびるようにして目を閉じた。
こ、これは……紛れもなく、接吻のおねだり…?!!
これ異常ないほどに真っ赤になり、体が硬直し、動けなくなる閃光。そうしてる間にも、段々とシャルルは此方に近寄ってくる。まさかあの、シャルルが。こんな大胆なおねだりをするなんて…いや、もしかしてこれは…?


「ちょ…ちょ――っと待て―――ッッ!!」


一つの可能性を見出し、残り数センチまで迫った所で、がばっと閃光がシャルルの肩を掴んで引き剥がす。
「ほぇ?なんで?」
「なんでじゃないだろ!…シャルル、お前もしかして…誰かに何か言われたな…?!」
「あ、うん」
「なんて言われた?!」
「元日の朝に、二人きりで"今年初めてのちゅー"したら、今年ずっと仲良しでいられるんだって…そういうおまじないがあるって」
「アホか―――!!そんなお約束のおまじないがあるわけあるか―――!!!」
閃光が声を荒げてシャルルを叱る。わぷ、とシャルルが頭を抱えて縮こまった。
「も〜、そんな怒らないでよう」
「ち、因みに…もしかしなくてもそれ、言ったのは…!」
「エトナさん」
「やっぱりか………」
ガクッ、と首を折り、閃光は予想が完全に的中してしまった事に、有り得ない、と嘆きながら項垂れた。
……が、よくよく考えてみると…、これも、ひょっとしたらいいのかもしれない。そう思い直し、閃光はシャルルの頬に、そっと自分の手を這わせた。
「閃光?」
「まぁ、コレはエトナのデマだったわけだが……こういうおまじない、あってもいいかもしれないな」
「にょ…?…せん……」
シャルルが言葉を紡ぐ途中で、閃光のそれが続きを塞ぐ。
登りゆく朝日が、窓から、廊下を美しく照らしつけ。二人の重なった影が、壁にそっと映っていた。






「お、あけましておめでとう、閃光。なんだけすげー上機嫌だな」
「ふ、新年早々いいものを貰ったからな。…ところでルーウェン。お前こそ凄いニヤニヤした寝顔で眠ってたが、一体どんな初夢だったんだ?…もしかしなくてもクローディ」
「わーっわーっわーっ!!!そそそそそれ以上言うな閃光!!!」
ばふ、と言葉の途中でルーウェンの手が閃光の口を塞いだ。
誤魔化しても既にバレバレなのだが、それを強情に隠そうとするところが、なんともルーウェンらしいというか。閃光が思わずニヤリと微笑む。
「ふっふ…まあ、今年もいい年になるといいな〜ルーウェン」
「うるせーよこのへっぽこ侍!!」
「何っへっへっぽこ…?!」
この言葉には、流石に今まで優勢だった閃光も、ひくりと口元を歪める。
ちょっと今にも喧嘩しそうな二人の所に、師アデルの明るい声が響く。
「おい、皆!今から皆で初詣行こうぜ!」
その声で二人はぴたりと止まり、行くか、そうだな、と相槌を打って、皆と共に外に駆け出していった。
A HAPPY NEW YEAR...!!



おまけ
「いやはや、マーシェルさん、わたしたちも無事に年を越せましたね〜♪」
「そーだなー。あたいもびっくりだぞー」
「ふっふっふ…w今年も、マーシェルさんといちゃいちゃして、更にはあんな事やそんな事しちゃったり…キャーッww」
「ん?何一人で喋ってるんだローラ?」
「あ、なんでもありませーん!今年も宜しくお願いします、マーシェルさんv」
「おう、宜しくなーローラ!」










あとがき。
以上、ディスガイア2より、元旦記念に描いた侍×盗賊SSSでした。
新年早々、侍盗賊フィーバーなノリでブログ向けに描いたものです。とりあえず今年もマーシェルさんはローラの企みには気づきそうにありません。笑。
それでは、ここまで読んで頂き有難う御座いました。



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