ディスガイア3番外編 七夕記念 侍×盗賊SSS それは、魔界にはとても珍しい、星の綺麗な夜のこと。 今日は、人間界で有名な、織姫と彦星が年に一度出会うことが出来る記念日―――七夕。 いつのことだか、その七夕というイベントは魔界にも侵食し、ここ、魔立邪悪学園にも、七夕を純粋に楽しもうとする悪魔達はたくさん存在していた。 「見て見て、白銀!お星さま、とっても綺麗だよー!」 オッドアイの盗賊の少女、クロエの無邪気にはしゃぐ姿を見て、侍の白銀はフッと微笑んだ。 その後ろで、縁側にぴったりと隣り合って座っている刀祢と六合が、そよ風でゆらゆらと揺れる短冊を見据えている。 そう―――、刀祢・白銀姉弟、クロエ、六合。この四人もまた、七夕を親しむ者達のうちである。 クロエは暫く星を観るのに夢中になっていたが、やがて満足したのか、三人のいる寄宿舎の縁側にとてとてと戻ってきた。 そして、短冊に幾つもぶら下がっている、願い事を書いた色紙を順番に見詰め、にっこりと微笑んだ。 「皆の願いがいっぱいだね、えへへっ。ねぇ、白銀はどんなお願い事書いたの?」 「俺か?……俺は毎年同じ願い事だ」 白銀はあっさりとそれだけ言った。 もちろん、クロエの問いの答えには十分ではないので、クロエはむーと若干不満気に頬を膨らませる。 「そうだ、六合はどうなんだ?」 「僕ですか?僕は――…"はやく強くなって、白銀さまと刀祢さまを御守りする役目を果たせるようになりますように"と…」 「フッ、なんとも、流石というか、六合らしいというか……」 相変わらずの六合の純真な生真面目さに、白銀が微笑ましさを感じているその瞬間、ずずいっと刀祢がアヤシイ微笑みで割り込んできた。 「ねぇねぇ、白銀ー!私の願い事教えてあげよっか?教えてあげよっかー?」 「姉上。悪いがお断りさせて頂きます。」 「私の願いごとはねー、もちろん……!」 どうやら白銀の意見など、最初から聞く耳持たずなよう。最初から願い事を言いたいだけか。 白銀が呆れるのとほぼ同時に、ぐるっと刀祢は満面の笑顔で六合を振り向いた。 「もちろん、六合をこれからもたっぷり可愛がれますようにってvvすりすりナデナデ〜〜ぇvv」 「ととと刀祢さま、だからっ、まま待ってくださっ……むぎゅぅっ!」 間髪入れずに、六合は刀祢の胸の谷間へと埋められていった。 結局、というかやっぱり、ショタコンモードを発動する切欠が欲しかっただけだったらしい。白銀は呆れ果てると、そっと、隣のクロエの手を取った。 「? 白銀?」 「姉上がああなってしまっては、暫く六合を放すまい。……その間に、俺達は寄宿舎の屋上に行こう」 「屋上、に?」 「ああ。きっと、そっちのが高いから、クロエの好きな星がもっとよく見えるぞ」 「ほんと?!じゃあ、行く♪ わーい、わーい♪」 星がよく見える、と聞いた途端に、また無邪気にはしゃぎだすクロエの様子を見て、白銀は微笑まずにはいられなかった。さあ行こう、とクロエをエスコートし、二人は屋上へと登っていった。 「わぁっ…!ほんとに、星がすごくよく観える…!」 屋上に着いてすぐのこと、案の定クロエは目の前に広がる天の川の美しさに、めいいっぱい純粋無垢な喜びを込めて、ぴょんぴょんと飛び跳ねて始めてしまった。 本当に、クロエは星が好きなのだろう。黒い空に、綺羅綺羅と煌く、何千何万もの美しい光。彼女がそれに捕らわれてしまうのも無理はない。なんびとたりとも平等に光り輝いてみせるこの美しい星空は、確かに、誰もが見惚れて止まぬ自然の美なのであるから。 そこで不意に、もっと彼女を喜ばせてやりたい衝動に駆られ、白銀はぽてぽてと走り回る彼女の華奢な体を捕まえると、ひょいっ、と軽々抱き上げた。 「ひゃあっ?!え、白銀、なんでいきなりクロを抱っこしたの?」 「何故かって、ほら―――この方が、もっともっと星が近くに見えるだろう?」 そう言って、白銀は空を見上げる。その視線につられてクロエもまた空を見上げてみれば、確かに、先程よりも幾分星空が近付いて見えた。 ほんの数十センチの身長差でも、世界は確かに変わって見えた。 素直にクロエはその新しい世界に見惚れていたが、やがて、ぽつり、と何かを呟きだした。 「クロエ、どうした?」 「……あのね。切ないなぁって。織姫さまと彦星さまは、一年に一度しか逢えないんでしょ?……クロは大切な人とずっと一緒にいれるのに。不公平だよね…」 「…そうだな…」 「クロもいつか、大切な人と逢えなくなっちゃったり、しないよね……?」 それは、彼女の無意識の中に眠る記憶の欠片が、孕ませた不安なのだろうか。 白銀は目を細めて暫く考え込んでいた、が、抱き上げた少女の体に、そっと自分の頬を摺り寄せた。 「白銀?」 「……馬鹿を言うな。俺はずっと傍にいる。お前の"願い事"を叶えてやる」 「! 白銀、クロの願い事何か知ってたの?」 「知ってるも何も。短冊に人数分"誰々とずっと一緒にいられますように"って丁寧に書かれてたら、ごく自然と分かるだろう」 「えへへ…。だって、"みんなとずっと一緒にいられますように"じゃ味気ないでしょ?だから、一人ずつ書くの。白銀、刀祢お姉ちゃん、りっくん、リリィ、アイリス、サラ、レヴィン、フローレンス、クラスメイトのみんな……。みんな大好きなんだもん。……クロ、欲張りかな?」 「いや。それだけ純粋な願いなら、いっぱい願っても赦されるだろう。きっと、な」 白銀が真っ直ぐに認めてくれたことが嬉しくて、クロエは、はにゃっと笑った。 そして、そのまま摺り寄せられた白銀の頭をぎゅっと抱き締める。夏の夜の、少し肌寒い空気の中では、その触れ合った温もりが優しく暖かかった。 「……ねぇ。そういえば、白銀の願い事って結局なんだったの?」 「言っただろ。毎年同じ願い事だ、って」 「ぶぅ〜。そんなこといって、毎年白銀は教えてくれないじゃないっ」 「フッ。気にするな、どうせこの願いはずっと変わらないのだから。……いつか教えてやる。いつか、な」 俺の願い事……それは…… "クロエが幸せになれますように、それまでずっと、この手で護っていられますように" それだけが、俺の願い……俺の使命……俺の総てなのだから…… あとがき。 以上、七夕記念、ディスガイア3より侍×盗賊小説でした。 若干、侍♀×侍♂も混ざってますが。この四人はディスガイア3の我がメイキングの中でもお気に入りの四人ですので、ついつい贔屓してかきたくなっちゃいます。 実のところ、北国では七夕というのは他の県より一ヶ月先のことなんですね。季節感ない私は対外毎年スルーして終わるのですがたまにはそれらしいのを、ということでブログ向けに描いたSSSです。 それでは、ここまで読んで頂き有難う御座いました。 ブラウザバックでお戻り下さい。 |