厚く、薄暗い雲の下、(そび)えるようにして建つ、巨大な学園が在った。一体幾つの凶室で成り立っているのか把握出来ない程に大きいその建物を、首をいっぱいに曲げて見上げている、二人の若者がいた。
東方の装束を纏った、長髪の男女二人組。姿からして、どうやら彼らは侍のようだ。二人共、特徴的な二重目を持った眼をしている。
「ここが…魔立邪悪学園」
「漸く着いたわね。今日から、ここが私たちの母校…」
二人は呟くと、草鞋(わらじ)を踏みしめ、一歩ずつその学校へ近付いていく。
「有象無象の悪魔の気配を感じる…平穏に過ごせるとは思えない学校だな」
頬に傷のある男侍が、鋭い眼で彼処を見やりながら言う。ややおっとりめの女侍の方が、まあ、そうね、と頷いた。
男侍の名は、白銀(しろがね)
女侍の名は、刀祢(とね)
双子であるこの二人の侍は、とある名門侍一族として生まれた。そして、その家名を継ぐ為の修行をすべく、此処―――魔立邪悪学園へ、遠い東方からわざわざ入学してきたのである。
「ところで、姉上。クロエは何処に?先程から姿が見えないが…」
「先に行ってるわ、ちょっと所用があるらしくて。凶室に行けば逢えるから大丈夫よ。全く、白銀は相変わらずクロエのことに関すると心配性まっしぐらね♪」
からかい気味に『クロエ』という名の少女について刀祢に弄られた白銀は、俯き気味に咳込んだ。
「…ゴホン、姉上……」
「いやだ、ごめんごめん。ね、そういえば、昨日、お家を発つ寸前に、我等が従兄弟から手紙が来てたじゃない?私、まだ中見てないんだけど、どうだった?」
「ああ…あれか…見てみるか?」
白銀はゴソゴソと(ふところ)を探り、手紙を取り出すと、サッと素早く刀祢に手渡した。
刀祢は、受け取るとすぐに封筒から手紙を取り出し、それを開いた。中を見ると、縦書きに、いかにも和風を醸し出した達筆な字が書いてある。



拝啓 刀祢 白銀 殿

久し振りだな、刀祢、白銀。返事が遅くなってすまない。何せ、どこぞの従兄弟殿があの無意識ストーカーをこっちに送り付けてくれたおかげで、毎日がまたてんてこまいだ。
どうせ、俺の所に雷光を向かわせた仕掛け人はお前達だろう?とっくに分かってんだからな。
まあ、雷光は、最近新しく加入した放浪盗賊娘に熱をあげ始めたらしく、予想以上にこっちに被害は来なかったがな…。
あの雷光でさえ相手を見つけたみたいだぜ?刀祢はともかく、堅物の白銀はどうだ?クロエとは進展したか? 進展があったら、従兄弟である俺には絶対報告しろよ!
もし何か攻め方について分からないことがあったら、俺がレクチャーしてやるぜ♪
俺の彼女の猫娘もいい感じに開発出来てるしな、最近なんて…ゲフンゲフン、まあこの話は長くなるから、またそのうち、じっくりノロケを聞かせてやるよ。
敬具

追伸:魔立邪悪学園入学おめでとう。新しい環境で何かと大変だろうが、検討を祈ってるよ。

閃光より



手紙は、とある世界の、ホルルト村という場所に、二人と同じく修行に行っている閃光からだった。
何を隠そう、刀祢・白銀姉弟は、閃光・雷光兄弟とは、同じ名門侍一族の血を分けた従姉弟にあたる。
閃光の人柄がよく出ている手紙の内容を一通り読み終わると、刀祢はくすくすと楽しそうに笑い出した。
「うふふ。閃光、相変わらずみたいね」
「何が相変わらずか…最近のあいつは手がつけられぬほどドS化してるうえ、余計なことまで書きおって…」
「まあ、白銀が堅物なのは事実だし?」
「姉上…」
白銀は重い頭をもたげながら、姉の鋭い突っ込みに、苦虫を噛み潰したような顔をした。
「雷光を向かわせたのも私たちだってバレてるみたいだし。まぁ、大抵予想はつくでしょうけど」
雷光のストーカーっぷりに、双子だけでは手が負えなくなり、閃光の所に向かわせた…もとい厄介払いをしたというのは、なんとも見も蓋もない事実である。
「……ハァ…。全く、あいつらも一応、我が代々連なる名門侍一族の末裔なのだぞ…?元々、ホルルト村に派遣されたのも、一族を継ぐ力を身に付けるための修行という名目だというのに…少しは、その自覚を持って欲しいものだ……」
白銀は頭を抱え、本当に修行に行った意味があるのか、なんとも行先不安な従姉弟の惨状に溜息をつかずにはいられなかった。そんな弟の様子に、やっぱり白銀は堅物ね、と刀祢は思いながら、ポンポンと弟の背中を叩いてやった。
そうこうしているうちに、二人の目の前には、学園の大きな門が聳え立っていた。
これが、侍双子姉弟の、魔立邪悪学園での生活の開幕となる。







FIRST OUR SCHOOL







ガララ、と横開きのドアを開け、二人は凶室の中へと足を踏み込んだ。
凶室内には、人間型・魔物型の悪魔どちらともが(ひし)めきあい、ざわざわと絶えず騒いでいる。戦士、僧侶、魔法使い、アーチャー、ネコサーベル、プリニーなどなど、その種族形は非常にカテゴリー様々だ。
黒板にある座席票を確認すると(奇跡的に双子は隣同士の席だった)、二人は丁度凶室の真ん中あたりにある席へと歩いていく。そして、白銀が席に着こうとしたところで、不意に、ガタン!!と隣の席で大きな音がした。
咄嗟に音のした方を見やると、そこには、机の上で足を組み、偉そうにふんぞり返っている男戦士の姿があった。なんとも態度の悪いその戦士に、白銀が眼を細めて見据えていると、その戦士もまた白銀を睨み返して来た。
「あぁ?……テメェ、俺に何か文句でもあんのかァ?」
「…いや。随分と不良な輩が隣席に居るな、と思っただけだ」
サッパリとした白銀の言葉に、男戦士はニヤニヤと笑みを浮かべると、おもむろに立ち上がって、白銀を頭から足先までジロジロと見回した。
「あー…なるほど。お前が俺の隣席か。随分と田舎育ちの世間知らずな奴が来たもんだなァ?この学園では、俺みたいな悪魔らしい奴のことは『不良』じゃなくて『優等生』って呼ぶんだぜ?」
冷やかすような戦士の言葉に、白銀の後ろに居た刀祢が、ついにご立腹し、ズイッと横から顔を出した。
「ちょっと、白銀…!なにこの失礼な人!私、もう黙ってられないわ!」
「姉上、いい。……不作法なことを言って、失敬した。……では、俺達はこれで…」
刀祢を半ば強引に宥めると、白銀は早々に話を切り、席に着こうとした。だが、その瞬間、戦士はいきなり腰に引提げていた剣に手をかけた。
「待てよ」
「!」
ギィィン!!と激しい金属音が鳴り響き、途端、凶室内の空気が静まり返る。
白銀に向かって戦士が放った刃を、白銀は、一瞬にして自らの刀を抜き、受け止めたのだ。ギリギリと刃が擦れ合い、お互いの力がぶつかり合って、刀身が細かく震えている。
「っと…。お前、結構いい反応すんじゃねェか。この俺の剣を止めるとは…ただの田舎の剣使いってわけじゃなさそうだなァ?」
「………」
「……お前、気に入った!」
「……ぬ?」
突然、戦士が笑顔でそんな唐突なことを口走ったかと思えば、次の瞬間には既に剣を仕舞っていた。向こうの戦意がパッタリと消え失せたことを見計らい、白銀もまた剣を仕舞う。
すると、戦士は、いきなり親指で自らをビシッ!と指した。
「俺はレヴィン。強ェ奴を求めて、この学園に入学してきたんだ。お前みたいな強い奴は好きだぜ。なぁ、お前、名前は?」
「……白銀だ」
「白銀か!まぁ、折角同じクラス・隣の席になった訳だし、これも何かの縁。俺達、ダチになんねェか?」
レヴィンという戦士は、ペラペラとなんとも都合のいい理由をつけると、ガバッ!と馴れ馴れしく白銀の肩を組んできた。
「断る。」
「まぁまぁ、謙遜すんなーって!しがねェヤンキーだけどよ、これから夜露死苦ゥ!!」
白銀の冷静な拒否すら却下され、強引に友好を持つ羽目になってしまった。
困り果てた白銀が、刀祢に救いを求めて視線を向けると、刀祢は、まぁ…なんだかんだで友達第一号ってことでいいんじゃない?と適当なポジティブ意見を呟くのみだった。白銀は、たまらず重い溜息をついた。
「…そろそろ離れろ」
「ああ、悪ィ悪ィ。そんじゃまたな。っつっても隣の席だけどよ」
白銀を(無理矢理)友にしたことで満足したのか、レヴィンは漸く離れてくれた。かなーり疲れた趣で白銀は席に着き、レヴィンもまた、席に着く。先程のようにふんぞり返って、組んだ足を机の上に乗せ出した途端、何処からか、ワナワナと震えた様子の、一人の女性が近付いてきた。



「まあぁぁ…!!なんと行儀が悪い殿方ですの?!いけません、いけませんわ!!!」



「あぁ?誰だよ、お前」
いきなり、レヴィンに向かって叫んできたのは、一人の僧侶だった。美しい金髪に、絶世のプロポーション。整った顔立ちを更に引き立てるような、僧侶にしては随分と豪華なイヤリングが耳元を飾っている。
僧侶は、戦士の目前にまで迫ると、ビシッ!と指をさして凛とした声を張り上げる。
「お前、ではありませんわ!わたくしの名はフローレンス!とある僧侶貴族の正統なる一人娘ですわ!」
「はーん…、つまり、世間知らずのお嬢様、ってことか…」
レヴィンは目を細め、机の上に乗せている足を組み替えた。
「失礼なことを言わないで下さいまし!!わたくしには、穢れを嫌う僧侶として、純潔と美と正義に満ち溢れたココロを持っておりますの。そのわたくしの目が光っているうちは、貴方のような品の悪い殿方の存在は許しませんことよ!!」
フローレンスの物言いに、レヴィンは痺れを切らし、ガタァン!!と突然机を蹴って立ち上がると、フローレンスに向かって容赦なく叫び返す。
「勝手なこと抜かしてんじゃねーよ!悪いけどなァ、言う事きくつもりは一切ないぜ?何せ、俺はお前みたいなキーキー五月蝿い女が大っ嫌いなんだよ!!」
だが、フローレンスは耳に響くような打音にも、レヴィンの叫びにも、一切物怖じせず、ただレヴィンの態度に感嘆するのみだった。
「まあぁ…何処まで口が悪いのかしら…。貴方、名をなんとおっしゃいますの?」
「レヴィンだ!せいぜい覚えときな、お嬢様!」
「レヴィン。分かりましたわ。今後、貴方の行いについては、わたくしが逐一監視・更正させて頂きますわ。」
これまた、唐突に突きつけられた、とんでもない宣言に。当然ながら、レヴィンは仰天して目を丸くした。
「…はァ?!ふ、ふざけんじゃねー!!」
「ふざけてなどいませんわ。これからこのわたくしが、優しく、厳しく面倒見て差し上げます。覚悟なさいな、レヴィン!」
上には上がいるというが……このお嬢様僧侶、レヴィン以上の強引さの持ち主だな。
一部始終を見ていた白銀は、そんなことを考えながら、入学早々大変な目に合うことを約束されてしまったレヴィンのことを、少しだけ同情した。






「刀祢さまー!白銀さまー!」
六合(りくごう)、来たか」
ぽてぽてと軽い足取りで、刀祢と白銀の方に、六合と呼ばれた、一人の少年が駆け寄ってきた。纏っている装束からして、その少年は侍のようだが、白銀に比べれば身長は頭二つ分ほども低く、顔もまだ幼さを称えている。
六合は、こちらに辿り着くと、メモも見ずにスラスラと話し出した。
「はい!お二人の必要な勉強道具・お弁当の用意、下宿先の手配、予備の武器防具から、救急箱に、非常食まで。全て取り揃えておきました!」
「フッ、お前は相変わらず準備がいいな。真面目というか、なんというか…」
まるで秘書さながらのように、事細かな報告をする六合。その、年相応とは言いがたい、文句のつけようのない仕事ぶりに、白銀は思わず微笑まずにはいられない。
「だって、僕はお二人のお目付け役ですから。当主さまから任ぜられたお仕事は、しっかりとこなさないと!…それに、僕はまだ侍としては半人前で、お二人に稽古をつけて頂いている身分ですから…。僕が出来ることは、これぐらいで」
「謙遜するでない。お前の働きぶりは、俺としても非常に助かっている」
白銀の言葉に、六合の表情が、ぱぁっと明るんだ。
「えへへ…。っあ、違った! ははっ、ありがたきお言葉…!」
つい年相応の一面を出してしまい、慌ててそれを訂正する六合。その様は、なんとも可愛らしいものがある。こんな一連の動作を見せ付けられて、微笑まずにいられる者はいないだろう。
「はは…、お前は、本当に…。 ………ハッ!!まずいッ!!」
白銀も例外ではなく、柔らかな微笑みをしていたが、……ある重要なことを忘れていたことに気付き、一気に顔を強張らせ、バッ!!と速攻で後ろを振り向いた。
すると、後ろにいたのは、美人台無しのなんとも変態的なうっとりとした表情を浮かべ、涎を垂らしてハァハァしている刀祢の姿があった。
「も…もう我慢出来ない…ッvvりーくーご―――「うわああああああ!!!!!」
白銀は、がっしぃ!!と刀祢と六合をまとめて掴み上げると、猛ダッシュで凶室の外に出た。
凶室の外への避難に成功した白銀は、ぜいぜいと息を荒くしながら、刀祢を思いっきり睨みつけた。
「あ、危なかった…!!姉上、あれほど傍目を考えて下さいと、何度も―――!」
「ねぇ、白銀、もういい?もういいわよね?りく、ナデナデスリスリしていい〜?」
白銀の悲痛なる注意は、既に刀祢には届いていなかった。相変わらずハァハァしながら、変な許可を求めて止まぬ姉の姿を見て、白銀はがっくりと脱力した。
「…勝手にしろ!」
「やったーv六合、かぁわいい〜vvなでなで〜すりすり〜〜〜vvv」
「わわっ?!と、刀祢さまっ…?!わぷっ…!」
白銀の合図と同時に、刀祢は、ぎゅ〜〜〜っvvと一気に六合を抱き締める。刀祢の、サラシの巻かれた豊満な胸に、六合の顔が呆気なく埋ってしまう。
―――そう。実は、刀祢は重度のショタコンなのであった。
刀祢にとって、こんなショタコン属性満載の、大好物の男の子がお目付け役…だなんてことほど、オイシイ展開はあるまい。当然、こうして毎日抱き締めては頬擦りしまくる日々である。
家名を大事にする白銀にしては、こんな俗欲塗れた姉の醜態を周囲に晒すのは、なんとも心苦しいというもので…。かといって、ショタコンを止めさせることもかなわず…。仕方なく、こうして影でのみショタコンを揮うことを許したはずだったのだが。
どうやら、今後その約束が守られるか、非常に怪しくなってきた。
「姉上、いい加減にして下さい。六合が窒息します」
「ああ、ごめんごめ〜ん。六合が可愛くてしょうがないから、つい力が入っちゃって…」
「うきゅう…。刀祢さま、ひどいです…『可愛い』だなんて…。僕も一応、侍の卵である男の子なのに…」
刀祢の言葉に、少々拗ね気味になって言う六合。やはり、六合にとっても、敬愛する刀祢にショタコン扱いされるというのは、複雑な心境であるらしい。
そのちょっと悔しそうな、残念そうな表情が、また刀祢の胸をキュ〜〜〜ンと躍らせ……。当然だが、刀祢は再び、六合を強く強く抱き締め出した。
「ん〜〜っvvやっぱり、六合、か〜わいい〜〜〜vv」
「わぷっ?!だ、だから、刀祢さま…!」
「…もうほっとくか……」
刀祢のショタコンが発動してしまえば、暫くはあのままだろう。
六合には悪いが、完全に呆れ返ってしまった白銀は、二人を廊下に放置して、先に凶室へと戻って行った。






白銀が凶室の自席に戻ると、すぐ後ろの席に見慣れた少女が座っているのを見つけた。
「白銀!」
黒い盗賊服を身に纏った、銀髪の少女に明るく呼びかけられ、白銀の表情が一気に和らいだ。
「クロエ!もう用事を済ませて、凶室に来てたのか?…席がすぐ後ろとは、また奇遇だな」
「うん。白銀がすぐ近くで良かったあ」
この盗賊の少女が、先程、刀祢や閃光の手紙などの会話で出てきたクロエである。
右眼が黒、左眼が赤のオッドアイ。彼女が大きな両目を伏せてニッコリと微笑むと、左眼を貫通する傷痕が垣間見えた。白銀が、……、とつい何か考え込むようにしてしまう。
「ねえ、白銀。刀祢お姉ちゃんは?」
クロエの言葉でハッと気付いた白銀は、ああ…、と先程の姉の醜態を思い出し、苦笑した。
「姉上なら、廊下でまた六合を可愛がってる」
「刀祢お姉ちゃん、りっくんのこと大好きだもんね。いっぱいぎゅーってして貰えて、羨ましいなあ」
「……アレが羨ましいものなのか…?」
どちらかというと、白銀からしてみれば、六合――りっくんとは、クロエがつけた六合のあだ名である――はただショタコン扱いされて問答無用で抱き締められて、可哀相なだけだと思うのだが…。
本当のところ、クロエが羨ましく思うのと同様に、六合もまんざらでもないのか……?
残念なことに、その辺は、白銀には判断つかない部分である。
「………」
フッ、と、突然真剣な表情になる白銀。
頭に疑問符を浮かべ、どうしたんだろう、とクロエが思っていると、白銀は机越しにクロエににじり寄って言う。
「…クロエ。この学校で生活していく上で、様々なことがあると思う。もし何かあったら、俺を呼べ」
「うん。」
「辛いことがあったら、俺に言え」
「うん。」
「もし苛められたら、俺の名を出せ」
「うん。」
「他にも、宿題が分からなかったら…先生に黒板の問題を当てられたら…凶科書を忘れたら…椅子に画鋲が仕掛けられてたら…給食に嫌いなものが入ってたら……」
何をいうかと思えば、ひたっすらにありとあらゆることを心配し出した白銀。好き嫌いの行方まで心配しているようでは、刀祢に『心配性』扱いされても仕方ない域である。
クロエは、すぐににっこりと明るい笑顔で言った。
「そんなに心配しなくても、大丈夫だよ、白銀!」
「…しかし」
それでも、まだ白銀の不安はなくならないらしい。
「クロエ…お前は、本当に、ここでやっていけそうか…?」
真剣にクロエのことを心配がっている趣の白銀の手を、クロエはそっと自らの手を重ねて握り締めると、可愛らしい微笑みを見せた。
「うん。クロは、大丈夫だよ。白銀が、そばにいてくれるから」
「クロエ……」
「それに、刀祢お姉ちゃんも、りっくんもいるし。クロも、すぐにお友達たくさんつくるよ。楽しい学校生活にする。だから、クロは、大丈夫!」
「…そうか……」
白銀はやや俯くと、ぎゅ、とクロエの手を握り返した。
そして、顔を上げ、もう一度まっすぐにクロエを見据えて言う。
「でも、何かあったら、俺がお前を守る。約束したからな」
白銀の、鋭い二重目の中に宿る瞳が、確かな決意と覚悟を持って揺らめいていた。



(クロエ…俺は、何があってもお前を守る。誰にも、傷つけさせやしない……)



キーンコーンカーンコーン……
不意に、なんとも鈍い響きのチャイムが鳴り、一気に生屠たちがざわざわとし出し、慌てて自席に着き出した。廊下に居た姉も、六合に連れられて無理矢理凶室に戻らされてきた。
一部、席が空いていたり、誰もいない筈の超隅っこの席に勝手に自席を移動していたりと、その形態は様々ではあるが…。
「あっ!授業始まるよ、白銀!」
「ああ」
クロエの言葉に、白銀は名残惜しそうに手を離す。
それでも、本当の意味では絶対に離すまいと。白銀は、常に背後の少女の気配を気遣いながら、黒板の方を睨み付けた。



俺は、この学園で、必ず強くなってみせる……
クロエ…お前を守るための力を、手に入れるために……



彼等に襲い掛かる苦難の数々は、まさに未曾有(みぞう)
全ては、ここから始まっていく……彼等の、波乱万丈の学園生活が……










あとがき。
漸く始まりました、ディス3メイキング小説!
まあ、今回は一番最初ということで、かなーり始まりの説明的な感じですが…。詳しい絡みや他のメイキングたちの登場などは、後程また別の小説でどんどん出していく予定です。どうぞ楽しみにしたっといて下さいませね!(謎
それでは、ここまで読んで頂きまして、有難うございました。次の作品でお逢い致しましょう。



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