「〜♪ 〜♪〜」



「あれ、チェルシー何してるの?」
ふとルーティに声をかけられて、鼻歌混じりにご機嫌だったチェルシーが肩をびくんと大きく震わせた。
そのいかにも怪しい様子にルーティが前に回ってみれば、両腕を肩に押し付けて、背中を前かがみにして必死に何かを
隠そうとしているチェルシーの姿があった。
何かを隠している。それはルーティについてきていた鈍感フィリアにさえ分かったほどだ。
「ふ〜ん…ねえ、チェルシー何隠してるの?」
ルーティがそう声をかければ、チェルシーは顔を強張らせてぶんぶんと首を振った。
「なっ、な、何にも隠してないですぅ」
「あのねチェルシー。人が隠し事をしてる時ほど慌ててるものはないのよ」
「別に、慌ててないですぅ」
強情に首を振って白状しない所を見ると、もうルーティは気になって気になってしょうがない。
こうなったら最終手段だ。フィリアに耳打ちし、チェルシーの両腕を掴ませた。チェルシーがそれに混乱している隙にルーティは
ささっと後ろに回り、こちょこちょと腋の下をこちょばし始めたのだ。
「ひゃっ…あははははっ!!!くすぐったいですぅ!!」
ルーティの奇襲攻撃に太刀打ち出来ずにチェルシーは思わず両手で覆っていたものをぽろりと落としてしまった。
かつん、と音を立ててそれが床に落ちる。
「ん、何コレ?」



ルーティの視界に写ったもの――…それは、とても美しいブレスレットだった。





important present




ルーティが落ちたブレスレットを拾い上げた。チェルシーは「あ、それは…」とどもる。
「あら、綺麗ですね…」
フィリアが思わずほうと息を漏らして呟く。
ルーティの手の中に納まっているもの、それは透明で美しい石がついていて、銀の部分は美しい円を描いてきらきらと光っている。
中心に埋め込まれているひときわ大きな宝石は、淡いブルーで透き通るように美しく、聡明さが感じられる。
しかし、普通露店で売っているようなものとはまた違う様で、少しばかりいびつな感じもある。
でも、とても素敵なもので、思わずルーティも見とれてしまった。
(これ売ったらどのくらいになるだろう…)
なーんて事を考えながら。
そんなルーティを遮る様に、チェルシーが慌ててブレスレットを取り替えそうと飛び掛ってきた。
それをひょいとかわして、ルーティはブレスレットを持った腕を大きく上に上げる。
身長の低いチェルシーにはまるで届かず、ウサギのようにぴょんぴょんと飛んでみても全く届かない。
「返して下さいよ〜!」
そうチェルシーにせがまれて、ルーティはピーンと何かを思いついた。
チェルシーの手にブレスレットが届く寸前の所まで手を下ろして、チェルシーの顔をじっと見つめた。
その気迫にチェルシーはちょっと吃驚したようだが。
「ねぇチェルシー…このブレスレット、一体どうしたの?」
「そ、それは…私が作ったんです!」
はた、と一瞬ルーティが吃驚して動きを止めた。後ろでそれを聞いていたフィリアは、ゆっくりとチェルシーに近づいて
「とてもお上手ですね…どうやったらこんなに上手く出来るのでしょう…」
と、褒めていた。思わずチェルシーはそれに照れる。
「で、これチェルシーが自分でつけるの?」
ルーティがそのほのぼのとした雰囲気をさえぎって更なる質問をチェルシーにぶつけた。
「ち、違いますよぅ!それはあげるんです!」
「へーぇ…誰に?」
そう聞かれて、チェルシーはまずった、と思い硬直した。
その様子を見かねて、ルーティはふふーんと自慢気に花を鳴らし、チェルシーの耳元に自分の顔をやると、
「その様子じゃ…ファンダリア王にでもあげるんでしょ…?」
「ちっ、違いますよぅ!!!!」
言った瞬間思いっきり叫ばれたので、ルーティは思わず耳がキーンとしてしまう。
いつつ、と耳をさすりつつ、赤面しているチェルシーに向かって追い討ちをかけた。
「じゃあ他の男の人にでもあげるのかしらねぇ…チェルシーもいよいよ…」
それを耳にした瞬間、チェルシーの目の色が変わった。
「違いますぅ!!チェルシーはウッドロウ様一筋なんですからぁ!!!」
「…へーえ、やっぱりウッドロウにあげるんだ」
ルーティが満足気にニヤニヤと笑っている。その後ろではフィリアが困惑しながら一部始終を見守っていた。
「…あ」
そして、チェルシーは自分が墓穴を掘ってしまった事に気付く。






「早く言ってくれればいいのに」
「誰にも内緒にしておくつもりだったんですぅ」
だいたいのいきさつを聞いたルーティとフィリアは、チェルシーのやろうとしていた行動に共感を感じていた。
このブレスレットを、ウッドロウにあげたいと思っているらしい。
この埋め込まれているひときわ大きい宝石も、ウッドロウをイメージしたものだと言う事だ。
なんとも健気な、とちょっと涙腺がほろりとなる。
「そ、それにですね…」
チェルシーがぼそぼそと呟きだす。とても小さな声で、なかなか聞き取れない。
「何、もう一回言って」
そうルーティが言うと、チェルシーは口をぎくしゃくと動かして、必死に言葉を伝えようとした。
「ウッドロウ様、と、…お揃いに、しようと…思ってる…んですぅ…」
その姿にルーティはもう溜まらなくなった。
「くう〜!なんて可愛いのっ!これはもう応援するっきゃないわねぇ!ね、フィリア!」
「はい。チェルシーさんもこんなに頑張っているのですから」
二人は大賛成らしい。その様子にチェルシーは照れながら返して貰ったブレスレットを握り締めていた。
「で、自分のは?もう作ったの?」
「あ、えっと…それはまだなんです。これから作って、出来たらウッドロウ様に差し上げに行こうと思ってますぅ」
熱々だねぇwとルーティが楽しそうに一回突っ込んで、きゃいきゃいと女性陣の会話を交わした。
その後、じゃあ頑張って!とチェルシーに言って、二人はチェルシーと別れて行った。
「さてと、早く作っちゃいますぅ」
握り締めていたブレスレットから力を解放し、きらんと光に映って瞬く中心の石を見つめた。
この石を見ていると、奥にウッドロウが見えるような気がする。
大きな、自分を見ていてくれているような気がする。…だから、ウッドロウへのお守りがわりとして、丁度良いと思った。
道具袋から材料をごそごそと取り出し、手を動かして、ゆっくりながらももう一つの、ピンク色の石を埋め込んだブレスレット――
自分用のブレスレット。このウッドロウへ捧げるものとお揃いの、大事なもう一つの片割れ――。
「頑張りますぅ」
そう呟いた彼女の表情は、とても微笑ましいものだった。






「ふあぁぁぁあ〜〜〜…」
宿のベッドで仮眠(と言っても、長時間の昼寝に近い)を取っていたスタンが目覚めたらしい。
とても大きく、長いあくびが部屋中に響き渡る。
しかしまだよく目が覚めていない様子で、目がしょぼしょぼしている。頭もまだ上手く働かないようだ。
意味もなく回りを見渡し、頭をかいて、頭を働かせようとしている姿はこちらから見ればなんとも可笑しい。
「あ〜あぁぁぁ…」
あだあくびの名残が残っていたようで、二度目の長いあくびを繰り返した。
「でっ…」
それを遮るように、声が聞こえてきた。
「…んん…?」
思わずスタンが反応し、声の聞こえる方に振り向いたその瞬間。
「出来ましたぁ――――ッッ!!!!!!」
「うわあっ」
どうやら念願のブレスレットが完成したらしい。大喜びで、大きな声をあげてしまった。
それに吃驚してスタンはベッドから落ちたのだ。
しかしそれにも気付かず、チェルシーは大急ぎでスタンの居る男性部屋に入り込んで来た。
「スタンさーん!ウッドロウ様知りませんかぁ?!!!」
「はへぇ…」
頭から落ちて、なんともまぬけな格好をしているスタンだったが、それすら気にせずにチェルシーが質問した。
よっぽど急いでいるのか、それとも勢いが止まらないのか、チェルシーはうずうずしてなんとも収まらない様子だった。
スタンはひっくり返ってそしてまだ寝起きである頭を働かせて、チェルシーの質問に答えようとする。
「えっと…ウッドロウさんは…確か…」
しかし、思いつかない。途中で止まる言葉の先が続かない。
「えっと…」
困るスタンの目の前で、チェルシーは聞いたらすぐ走っていけるようにぴょんぴょんと小さく跳ね、肩をうずうずと動かしている。
「うー… …」
スタンがついに口ごもると、チェルシーはじれったそうに更に早くうずうずと体を動かし始めた。
スタンにとっては気まずい他なんでもない状況に、眠気を携えながら戦うのはあまりにも無謀過ぎた。
頭をかいても思いつかない。首を傾げすぎてちょっと痛めてしまった。
そしてチェルシーがもういいです、なんて言おうとした瞬間。



「お探しの王なら、川原の方に弓の鍛錬に行ったぜ?」



はた、と二人が声のした方に振り返ると、そこには吟遊詩人ジョニーの姿があった。
作曲中なのか、フンフンと鼻を鳴らしながら、「王は川原だ」ともう一度言った。それからはリズミカルな鼻歌を歌うだけだ。
それが無言の「行きな」との合図に気がついて、チェルシーはハッとして急いで走り去っていった。
しかし、宿から出る前に忘れていた一言。
「教えてくれて有難うございましたぁ――っ!」
部屋にも届くあまりにも大きな声に、スタンは思わず耳をキーンをさせた。
「元気だなぁ…」
「良いじゃないか良いじゃないか。青春だよ。」
鼻歌混じりで楽しそうにそう言うジョニーの姿に、スタンはただはぁ、と乾いた返事を返すしかなかった。






外はとてもよく晴れていて、川原には美しい水が流れ、ちろちろとせせらぎが聞こえる。
太陽の光が水に反射して、水面は眩しい程に光を放っていた。
そんな中を、息を切らしながらチェルシーが走っていく。
何処まで続くか分からないこの川原を、探し人を見つけるまで。
しかし、か弱いその体は長時間の走りに耐えられなかった。すぐピークがきて、思わず立ち止まる。
膝に手を置いて、前かがみに息をした。思わずはぁ、と大きな呼吸を繰り返してしまう。
前を向けば眩しい日差しが目に焼きついて、この川原の大きさをよりチェルシーの目に醸し出すようだった。
「はぁ、はぁ…ウッドロウ様…どこまで、いっちゃったん、だろう…」
声すら途切れて、上手く喋れない。一気に走るのは無理がすぎたか。
でも、まだまだ先まで行かねばならないだろう。なんせ相手はあの放浪癖持ちと噂されるウッドロウなのだ。
チェルシーと違って迷うような性質ではないし、良い場所を見つけるまで何処までもいきそうで怖い。
あの賢王なら程度と言うものを知っているだろうけれど。まだ日は高く上っているから、まだ先がありそうだと思われる。
ごくんとつばを飲み込むと、チェルシーは走りで疲れた足を動かして歩き始めた。






しばらくして、そろそろ逢える頃だろうかと思う時、目の前にひときわこの自然に不相応なものが視界に入る。
「橋…ですぅ」
木で作られている橋は、川原から随分と離れたチェルシーの視界に突然現れたものだ。
いつの間にか川原の上まで来てしまったのだろう。その証拠に、橋の下にはあの川原があった。
「随分と奥に来たんですねぇ…」
方向音痴な自分にとって『随分と奥に来た』事はとても心配な事だった。ウッドロウに逢えればなんとかなるだろうが
逢えなかったらと思うと背筋が青くなってくる。
早くウッドロウに逢わなければ、との思いが強くなって来て思わず弓を持つ拳に力が入る。
そんなチェルシーの目の前にある、橋。この橋の先にウッドロウが居るかも知れない。そんな気がどこからともなく高くなってきた。
「…よぉしっ」
橋の最初の木の板に、そろりと足を乗せた。その瞬間、ぎぃと音がして、チェルシーを不安にさせた。
端の綱を手で掴み、体を横にして、ゆっくりともう片方の足を乗せた。
「…!!!!」
そうするといきなりぎぃぎぃと端が揺れだして、チェルシーは怖くて怖くて動けなくなった。
(こっ…怖いですぅ…ウッドロウ様ぁ…)
でもここを通らなければウッドロウに逢えないかもしれない。そう思うといてもたってもいられなくなった。
決心して足を動かしていく。そのたびにぎぃ、ぎぃと音を立てながら、ゆっくりと前進していった。
ちょうど真ん中辺りに来た所で、一度風が止んだ。先ほどまではそよそよとしていた風がいきなり止んだので、
思わずチェルシーはあれ、と空を見上げた。
その瞬間、びゅおおおっっと大きな音を立ててチェルシーに突風が襲い掛かった。
「きゃあああああっ!!」
橋は激しく揺れ、古めかしい木の板と板とが擦れる音が響く。その橋に揺られながら、必死にチェルシーは縄に掴まっていた。
ふと目を開けた瞬間、腰から下げた道具袋から何かがするりと出てくる。
チェルシーは自分の目を疑った。視界からどんどんと遠くなっていくその物体、それはまぎれもなく自分のピンク色のブレスレットだった。
「!! 待ってブレスレット…!!」
手を伸ばしてみるが、惜しくも届かずブレスレットは下の川へと落ちていく。
橋の揺れがまだ残る中、チェルシーは手を伸ばした状態でそのまま固まっていた。目が見開いて、閉じてくれない。
「…ああっ…ブレスレット…ウッドロウ様と…お揃い…のっ…」
思わず、ぽろぽろと涙が落ちてくるのが分かった。どうしたらいいのか分からなくて、がくがくと肩が震える。
それでも、ブレスレットをなくす訳にはいかない、との思いがチェルシーを動かした。
ふと目についた崖。斜面は幾分かゆるくなってはいる。そこから下に降りられるかもしれない、とチェルシーはそう思った。
揺れの怖さなんてとうに忘れ、橋を乗り越える。ぎぃ、との音と共にかんかんと靴の音が聞こえてきた。
足早に橋を超えると、先ほど見つけた崖に足をかける。このまま、勢いに任せて降りて行きたい。そして、あのブレスレットを取りに行きたい。
しかし、向こうから見た以上に崖の斜面は激しく、思わず足がすくんでしまう。
少し足を下ろすと、ぼろぼろと土がこぼれると共にずさぁぁと足が雪崩ていってしまいそうになった。
「…!!」
その怖さに思わず足を崖から引き出す。緊張と不安でいっぱいになってしまう。
「怖……い……」
がたがたと体中が震えて止まらない。目を瞑ればぶわっと涙が溢れてきた。
しかし、手にかつんと道具袋が当たって、ハッとして道具袋をがさがさとまさぐる。
その中には、無事だったウッドロウへ捧げるブレスレットが入っていた。
それが手の中にあると、何故だか奥から限りない「ブレスレットを取りに行こう」という感情が溢れ出て来る。
崖の方にふいと振り向いて、まだ震える足をそろりと崖に下ろした。



この崖を降りれば、ブレスレットを取りに行ける…ウッドロウ様とお揃いのブレスレット…



どくん…



どくんどくんどくんどくんどくん…



どくんどくんどくんどくんどくんどくんどくんどくんどくんどくんどくんどくんどくんどくんどくん






「…――――――――ッッ!!!!」






「何をしているんだ、チェルシー!!」
いきなり後ろから手が出てきて、引っ張られた。放心して、何が起こったのかチェルシーにはよく分からなかった。
力強い腕が自分の体を包んでいて、緊張で熱くなった体とは違う、とても優しいぬくもりが感じられる。
厚い胸板が、背中越しにチェルシーの体を支えてくれている。
恐る恐る後ろに振り向けば、そこには愛しい、自分が望んでいた姿があった。
「ウッドロウ…様…?なんでここに…」
「それは私の台詞だ。チェルシー、何故こんな所に…危険だ」
ウッドロウ様に用があったからです、との言葉を飲み込んで、チェルシーはふいと顔を逸らした。
その様子を見て、ウッドロウはふうと一息つくと、チェルシーに優しく尋ねた。
「チェルシー。先程は一体何をしていたんだ?崖から降りようなど、危ない事をしては駄目だぞ」
しばらく無言が流れたが、ふとチェルシーの体が震えている事に気がついて、ウッドロウは目を見開いた。
「チェルシー…?」
思わずそう彼女の名を呼べば、泣き声でチェルシーが言葉を返してきた。
「だって…だって…、私、ウッドロウ様に贈り物をしようとしたんです。とっても綺麗なブレスレットを…。
内緒だったんですけど、それ、お揃いにしたんです。それが出来て、ウッドロウ様に渡しに行こうとして、ここに来たんです。
でも、でもあの橋で凄い風に吹かれて、そしたら私のブレスレットを落としてしまったんです。
だから私、取りに行こうと…思って……私、…うっ…」
最後の方になるたびに、どんどんと声が涙でかすれていくのが分かった。
後姿だとしても、チェルシーの悲しみがウッドロウにはひしひしと伝わってくるようだった。
軽く抱きかかえた状態の自分の手を、思わずチェルシーの体に回して、強く抱きしめてしまいそうになったが、唇を噛んで耐えた。
その代わり、手を下ろし、右手でチェルシーの頭を撫でてやった。
その手に反応して、チェルシーの体がぴくんと揺れた。
「…また、作れば良い。作るのが困難ならば、私がいくらでも手伝おう」
その言葉に、チェルシーが反応していきなりこちらに振り向いた。ウッドロウはん?と小さく短く尋ねる。
「…有難う、ございますぅ…」
小さい呟きが聞こえたと同時に、ぽろぽろとチェルシーの瞳から涙があふれ出てきた。
どういたしまして、と呟き返して涙を拭ってやった。それでもなかなか収まらないようで、空いた左手をチェルシーの肩に置き、
もっと手を動かしてマメに拭いてやる。
「泣かなくて良い。急く必要などない。私はちゃんとチェルシーの傍にいるのだから。」
「ウッドロウ様ぁ…!!」
またぶわ、と涙が溢れ出たかと思うと、チェルシーはウッドロウにがばりと抱きついた。
「っと…」
その勢いに押されて、ウッドロウが後ろに手をついた。チェルシーはしっかりと抱きついたまま大きな声をあげて泣いている。
大切なペンダントがなくなってしまった事。この橋を一人で超えた事。崖を降りようとした事。
その不安、緊張、恐怖が重なってしまったのだろう。幼いチェルシーにとって、あまりにもそれは自己の許容量を超えてしまうものだった。
「…頑張った、な」
する、と優しく背中に手をやって、ゆっくりと撫でてやる。それに反応してより強くなる抱きしめる力が、ウッドロウの心を締め付けた。
(いつになれば、大人になるのか…いや、大人になれば、その時には私など眼中にないだろうか)
こんな事を考えているなど、今のチェルシーには思いつきもしないだろう。大人になる事できっと一杯だ。
(もしその時までお前が私をまだ思っていてくれたのなら…私は…)
ふ、と微笑して目を瞑った。こんな事を考えるのは、やはり無駄だろうか。いや、考えるべきではないだろうか。
そんな思いが交差するウッドロウをさなかに、せせらぎが聞こえる川原に沿う様に泣き声が木霊していった。






「ウッドロウさま、すみませんでした」
「いや。気にしなくて良い。」
あれからしばらくして、泣き止んだチェルシーと共に、ウッドロウは帰りの道を歩んでいた。
チェルシーは方向音痴ぶりを見事に発揮し、全く道が分からないのでウッドロウの手に掴まって歩んでいく。
先程の事を気にしてか、どことなくチェルシーはいつものような元気が薄い。
そんなチェルシーに、ウッドロウが立ち止まって振り向いた。
「チェルシー」
「…あ…な、なんですか?」
チェルシーの代わりに持っていた道具袋から、青い石がうめこまれたブレスレットを取り出す。
それを目にしたチェルシーが、思わず吃驚して目を見開いた。
「そ、それは…ウッドロウ様への…」
チェルシーのその言葉を確認した所で、ウッドロウは微笑して、ブレスレットを身につけた。そして、すかさずこう言う。
「これ…貰っても構わないだろうか」
「え…」
「駄目か?」
「そ、そんな事ないですぅ!勿論です!!」
まさか貰ってくれるなんで思わなかったので、チェルシーはその言葉にぱあっと笑顔を見せてくれた。
その笑顔に反応するように、ウッドロウも優しく微笑んでくれる。
えへへー、とご機嫌になったチェルシーが、いつものようにがしっと腕に楽しそうにしがみついてくる。
「ウッドロウ様、だ〜い好きですっ!」
「こらこら」
そんな会話をしながら帰りの道を歩む二人に、前とは少し違う雰囲気が漂ったのはきっと気のせいではないだろう。



ウッドロウ様、待ってて下さいね。



絶対、いつかお揃いのブレスレットを完成させてみますから!!






おまけ
「ウッドロウさん、何してるんですか?」
「ああスタン君か。ペンダントを作っているのだよ。」
はぁー…と関心の溜息をついて、スタンは興味深そうに作りかけのペンダントを見つめる。
「へぇ…ウッドロウさんがそんなのを作るなんて…」
「私がこのようなものを作るのは、似合わないだろうか?」
ウッドロウが微笑して言う。
「そ、そんな事ないですよ」
スタンは慌てて否定した。やっぱり何かとこの人には敵わない、と思った瞬間である。
「それで…それ、誰かにあげたりなんか…するんですか?」
「ああ。そうだ」
そして、ウッドロウが小さく呟く。
「…お揃いで、な」
「え、何か言いました?」
「いや、なんでもない」
そう言いながらも、ひときわ楽しそうに微笑を浮かべるウッドロウの姿は、後にとある者の喜びへと変わったとか―…。



「楽しみにしていなさい。チェルシー…」










あとがき…
おもちちゃんと話していまして、その中で私が「お揃いブレスレットつけたウッチェルイラスト描いて下さい!(ぇマテ
私もそのネタで小説捧げますから!(ぇぇ」などと言う莫迦な事を言い出しまして。そしたらOKしてくれました(ゎ
そんな訳で、こんな小説が出来上がりました。お揃いブレスレット、つけてねぇーー(滝汗 つけてるのウッドロウ様だけじゃん!(汗
こんなんですが貰ってやって下さいな;おまけは本当におまけです(笑/ぇ



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