お前と一緒にいちゃ駄目なんだ。 お前と一緒にいたいけど―――そうしたら、俺は弱くなってしまうから… キミの隣に 雪景の町、フラノール。 明日には再び救いの塔に突入する。ミトスの千年王国設立を阻止し、オリジンを開放の為に。 今は皆、それぞれの思いを胸に今日は行動を自由にしている。 そんな中、ゼロスは一人、雪が降りしきる中、宿のドアを開けて外に出た。 ロイドは確かコレットちゃんと一緒にどっか行ったっけ…と思いつつ、一歩だけ歩いて目の前の雪を踏みしめた。他の皆は宿にちゃんと待機してて偉い子ちゃんばっかりで、などとも思った。 「……雪は、嫌いだけど、な――」 真っ暗な天から無限に降って来る雪を見上げながら、ゼロスは一つ呟いた。 そう、雪は自らにとって天敵そのもの。だけど、それでも何故か無償に外に出て行きたい気分になった。 ただこうして立っているだけでも肌寒い。薄めの肩と鎖骨あたりが露出された自分の服装では結構この寒さは身にくる。さっさと中に入ってしまえ。そんな声が心の奥から語りかけてくるのに、足が上手く動いてくれなかった。 それどころか、前にも進まないと言うなんて優柔不断な足。 …前にも行けずに、後ろにも下がれずに。 まるでどっかの誰かさんだな―――と思いつつ。…やっと覚悟を決めて、未だ雪の降りしきる外に出ようとした。が、その時。 ガチャ ガゴンッ! 「いっだ――――っっっ!!!!」 「な、何やってんのサ?!あんた!!」 後頭部を両手で押さえながら、雪の積もった地面に四つん這いでいるゼロス。声がする方に振り向いてみれば、そこには黒髪と独特の衣装を身に付けた女――しいなが、此方を見ていた。 そして先ほど起こったことを思い出してみる。…歩みだそうとしたところで、背後のドアがいきなり開いてゼロスの後頭部にクリティカルヒットしたのだ。 理解したのはいいものの…なんとも間抜けな仕打ちにほとほとゼロスは呆れ返ってしまう。 一人で溜息をついていると、そこにつっこんできたのは、まぎれもなくしいな。 「何溜息ついてんのサ…、ホラ、さっさと立ちなって」 「へいへい…」 冷たい手を拭い、ゆっくりと立ち上がった。 「風邪ひいちまうよ。宿屋に戻ろう」 「…………」 ドアをいつでも開けれるようドアノブに手をかけながら、しいながゼロスを諭す。が、ゼロスは外の方を向いたまま全然動かない。 「…ゼロス?」 どうしたんだろう、としいながゼロスの顔が見れるよう彼の目の前に移動した。 が、彼はただ立ち尽くして、瞳は何処にも焦点があっていない。虚ろな瞳をしていた。 「ゼロ…」 「しいな」 声をかけようとした所でいきなり自分の名前を言われ、しいなは吃驚してばっとゼロスの顔を窺った。 まだ虚ろな瞳だけれども、それに映るのはまぎれもなく自分だった。 「な、何…どうしたのサ?」 「…しいな………」 なんだかいつになく真剣な表情の彼に、目が放せない。なんだか自分が硬直したように。寒い筈なのに何故かそれが吹き飛ぶくらい、何故か体が一気に火照る気がした。 「…雪、掃って」 「はあ?」 その言葉に、しいなはつい顰めた顔をしてしまう。けど――そんなしいなをも気にせず、ゼロスは更に言い放つ。 「…触れないから」 「…?」 しいなは思わずゼロスの顔を見上げた。 「雪、自分から触れないから」 「―――――え…」 この間にも、どんどん二人の肩や頭に、新しい雪が降り積もっていって。音がひとつも聞こえない、静寂の時間がひとつひとつ過ぎていった。 「…冗談…だよね?こ、こんな時までふざけないで―――」 少し顔を俯かせて、しいなは自らの髪の毛を弄りながらそう言った。その言葉に、ゼロスの肩がピク、と少しだけ動く。 きっと君に信じて貰えないのも、いつものせい。 いつもいつも、自分を隠して、誰も信用せずに生きてきた。 それだからこそ得た代償。本当に欲しいものが手に入らない、心の臓から溢れ変えるほどの屈辱感。 ――視界に広がるモノクロの世界が、少しだけ歪んだ。 「………しい、な」 「…何―――って…」 気付いた時には、目の前のぬくもりに頼っていた。 雪がいくつか降り積もっている小さな肩を自らの胸に寄せる形で、抱きしめた。 身長差や体格差のためかありあまる面積を、彼女の顔の横に自分の顔を近づけて、顔をうずめる形で埋めていった。 ああ、まただ。 彼女は自分にとってあまりにも暖かい存在だから。 つい、その存在に頼ってしまう。 だから、いつもみたいに自分を演じる事が出来ない。歪みをうずめるように、モノクロの視界に色を染めるように。 だけ、ど――― 「…ゼロス?」 「…悪い、な」 名残惜しそうにその肩を放し、後ずさった。寒さがより、身に染みていく。そしてそのまま、動かないしいなを置いて、そこを離れるためにふらふらと歩いていこうとした。 が、その手はしっかりとしいなに握られていた。 「…無理しなくてもいい。甘えたいなら、甘えてもいい」 いつも顔を赤くして一目散に逃げ出そうとするしいなからは考えられない台詞が、ゼロスに向かって放たれた。 その言葉に従い、さっきのようにしいなを抱きしめ直す。けれども、その背中にはしいなの腕が回されていたけれど。 「…何、してんだろうな…俺」 空いてる方の手で、髪をくしゃ、と握り締めて。自分で掃えない雪を、身を震わせることで少しずつ落としていく。 「………いいよ…もう」 その優しさに、思わず視界が少しだけ、潤む。 そのまま目を瞑って、ぬくもりを確かめるように、互いの静かな心音を聴いていた。 俺はもうすぐ裏切るんだぜ… きっとお前は怒るだろう そして、俺を信じてなんてくれないんだろう お前といると俺は弱くなるから きっとそれでいいんだと思う けれど、俺がここにいたいと望む事を許してくれるなら お前が俺を望んでくれるなら 弱くてもいいかななんて、思ってしまえるんだ ……そして、この優しさに期待することを許してくれるなら 帰って来れた時には もう一度 君の隣に―――― あとがき。 ゼロス×しいな。久しぶりの短編です。 この二人久しぶりに書いたららしくなくなった。誰だよこれ(あ/ゼロしいのつもりでございます 一応ゼロスルートです。こんなん書いてゼロス殺せるほど鬼じゃないよ!(何 ブラウザバックでお戻り下さい。 |