ホルルト村から外れた平原に、まだ幼い少年が、ずんずんと一人で闊歩している。 特に宛ても無く、寧ろ仲間達の陣から離れるように、ひたすら無防備に歩くその少年―――赤ドクロのウィルの周りには、当然だが、敵の魔物達がわらわらと集まってきている。中でも移動力の高い魔翔族が、孤立したウィルにここぞとばかりに襲い掛かろうと、背後を取り囲み始めた。 しかしウィルは、背後に やがて、ここら辺でいいか、と足を止め、くるりと後ろを振り向く。予想通り、ウィルの周りには何十体もの魔物達が集まっていた。 防御が低く、打たれ弱いドクロが一人になれば、頭が簡単にできている魔物達のこと、自分を狙うことなど目に見えていた。それが分かっているからこそ、ウィルはわざと一人になったのだ。 (こいつらを全部僕が倒してしまえば、手柄は僕のものだ!) そうすれば、ウィルの『皆が認める優秀な魔法使い』という夢にも一歩近付くというもの。ニヤリ、とウィルは微笑み、愛杖である魔王の杖を高々と空に掲げた。 「くらえっ!!テラファイ……」 「ぽこーんっ☆」 ウィルの声を遮るように、能天気な少女の声が響き渡る。すると次の瞬間には、敵達が次々と風に浚われ倒れていく。 「ちょっ?!ま、待ってよ?!」 ウィルの叫びも虚しく、あっと言う間に敵は全てやられてしまい、思わずウィルは口を開いたまま硬直する。 今の魔物を倒した風は、紛れもなく魔法の一種ウインド。 ……そして、先程聞こえた、いかにもバカっぽい声から察するに……このウインドの行使者は…… 立ち尽くすウィルのもとに、ぽてぽてと可愛らしい足音を立てて、黄緑色の髪をした幼い少女が走り寄ってくる。その少女をぎっと睨みつけ、ウィルは声を荒げて叫んだ。 「ディオナッッ!!僕の倒そうとしてた敵に何するんだよッッ!!」 叫ばれた少女、それはまさしく、さきのウインドの行使者である緑魔法使いディオナ。 ウィルの怒号に怯むことなく、ディオナはウィルの隣にまで走り寄ると、にぱっと能天気に微笑んだ。 「ぽこん♪」 「『ぽこん♪』じゃないよっ!!だから、今お前が倒した敵は、僕が倒そうとしてた敵で……」 「あら、二人共、そこにいたの?」 「ぽこっv」 そこでふと、僧侶クローディアが二人に近付いてきた。大好きな師匠の登場に、ディオナは一目散にクローディアのもとへ走り寄っていってしまう。 「って、人の話を聞け―――ッッ!!」 「ポコン?」 ディオナが、頭上に疑問符を浮かべて首を傾げる。確実にウィルの主張はディオナに伝わっていない。 「二人共、喧嘩しないの。……って、あら。もしかしてそこの敵、ディオナが倒したの?」 「ぽこん!」 クローディアが風に引き裂かれた敵の残骸を発見し、ディオナに問うと、ディオナは挙手をして微笑む。 「あらー、そうなの、えらいわねー」 「ポコン、ポコン♪」 「っちょ…、違、本当は僕が……」 倒していた筈だったのに、という先の言葉は、クローディアに撫でられているディオナの光景を目にしては、もう言えなくなってしまった。 本当なら、今クローディアに褒められているのは、自分の筈なのに……。そんな不満を心に充満させて、ウィルは恨めしそうにディオナを睨みつける。 (なんで僕がこんな惨めな思いをしなきゃいけないんだ…!それもこれも全部、このバカのせいだっ!!) ディオナはウィルの睨みに気付く事なく、ぽこん、と可愛らしい声をあげた。 コドモノコイ。 「全く、今日は最悪だ!厄日だ!アンラーキーデイだ〜〜〜〜っっ!!!」 戦闘から帰ってくるや否や、村中に響き渡る、赤ドクロの少年ウィルの怒声。当然大音量のそれに驚いた戦士ルーウェンが、近くにいたマブダチ・閃光の肩をつんつんと小突いて話しかける。 「おいおい、何をあんなに怒ってるんだ、ウィルは?」 閃光は、ふぅ、と溜息をつくと、いかにも呆れた様子で答えた。 「なんでも、今日もまた、自分が活躍しようとしたところを、ディオナに持っていかれたらしい……」 「ふーん…。何度目だよ、ディオナに良い所取られるの」 「……10回くらいか?」 「ちがうっっ!!もう26回目だよっ!!10回とかそんなヤワな答え言わないでよねっっ!!」 「は、はあ……すんませんでした」 二人の話を地獄耳の如く聞いていたウィルは、閃光の適当な答えを即座に正す。 こいつ、本当に14歳かよ…と疑いたくなるくらいの威圧感で、四つも年上の閃光を黙らすとは。冷や汗をかく二人を尻目に、ウィルは再びブツブツと忌まわしげに独り言を呟き始める。 「ああもう、なんなんだあのバカはっ……、僕の優秀への道をいつもいつも邪魔して、まさか、僕をハメようとしてるんじゃ……いやあんなバカがそんな細かいことが出来るはず……いやでも流石に26回ともなると……」 「……悩みは尽きないな」 「そして懲りないな…」 今度こそ聞こえないように、非常に小声でルーウェンと閃光は呟き合った。 そこでふと、ぱたぱたと軽快な足音をたてながら、盗賊の少女シャルルが駆け寄ってきた。 「やっほー、せんこー、ししょー、ルーウェン♪」 「よ、シャルル…って、うわっ!」 三人への挨拶を一気に済ませた後、シャルルは真っ先にぴょんっと閃光に抱きついた。閃光は当然吃驚しておのめくが、何とか倒れず受け止める。 「はは、相変わらず閃光にべったりだな」 「えへー♪ ……あれ、師匠、なんかご機嫌ななめー?」 そこで漸くウィルの異変に気付いたシャルル。閃光が、抱きつかれたままシャルルの疑問に答える。 「ああ、またディオナとひと悶着あったらしくて……」 「へえー。……あ、そうだ!ねえねえ師匠ー!」 シャルルは何かを思いついたらしく、一端閃光から離れると、駆け足でウィルの元に近寄っていく。 弟子の呼びかけに、流石にウィルも一端愚痴を呟くのを止め、シャルルの方を振り向いた。 「シャルル、何か用?」 「うん♪……ねえ、師匠ってさ、ディオナのこと好きなんでしょっ♪」 ぴきん。 シャルルの直球な発言に、当のウィルは勿論、それを聞いていたルーウェンと閃光までもが硬直した。 そして次の瞬間、カァァ〜ッ、とみるみるうちにウィルの頬が真っ赤に染まりあがる。 「………はあぁぁぁ――――――――っっっ?!!!! そそそんな訳ないだろっ?!!こここの僕が、あああんなバカを好きなわけないよっっ!!!」 遅れてウィルは大絶叫をかまし、早口で必死にそう捲くし立てる。 「えー?でも、師匠いっつもディオナのことばかり言ってるし……」 「そ、それはアイツが悪いんだっ!!アイツが僕を怒らせるから……っ、だから、ぼぼぼ僕は断じて、ディオナのことなんか好きじゃないんだからね―――ッッ?!!」 どうにも居た堪れなくなったのか、ウィルはマッハ2.0の速度で脱走した。 ウィルはウィルなりに、なんとか適当な理由をつけてシャルルの言葉を否定しようとしていたようだが、いかんせん、『ディオナが好き』という事実が誰から見てもバレバレである。例え本人が頑として認めようとしていなくとも、あの鈍感シャルルでさえ分かったのだから、よっぽどのことだ。 閃光はやがて苦笑すると、前髪を掻き揚げながら言う。 「ったく、あいつもなんだかんだで素直じゃないな。何処かの誰かと一緒で…」 「…オイ。閃光、それ明らかに俺に言ってるだろ?」 「さぁな?」 「にししっ、師匠、がんばーれっ☆」 満面の笑顔を浮かべて、シャルルはウィルの走り去った方角に手を振った。 (冗談じゃない、冗談じゃない、冗談じゃないっっ!!僕がディオナのことを好き?!そんなこと天地がひっくり返っても有り得ない!!なんでこの僕が、あんなバカのことを好きにならなきゃいけないんだっ!!) ウィルは思いっきり走りながら、ずっとそんなことを頭の中に駆け巡らせていた。 しかしすぐに、元々運動が得意でないせいもあるため、ウィルは走るのが限界になってしまい、ホルルト村の外れまで来たところで、息を切らせて立ち止まった。 「はあ、はあ……何やってんだ、僕は……」 自分は優秀な筈なのに、あんなに取り乱して走り去るだなんて、カッコ悪いにも程がある。先の自分の姿を恥じ、ウィルは溜息をついた。 ―――ウィルの夢は、皆が認める、一流の魔法使いになること。その為だったら、昼夜問わず、幼少期には重要だと言われる睡眠時間すら惜しんで、猛勉強に励んできた。自身の努力の甲斐あって身に付けたこの魔法は、何者にも脅かされないはずだった。 ところが、アデルに仕えるようになって数週間が経ったのち、突然現れた、自分と同じく魔法を使う少女。 バカくさい口調と振る舞いをして、自分の様にまともに勉強も出来ないのに、いとも簡単に魔法を使うディオナを見て、妬ましく思った。だから、自分は何かにつけて、ディオナをライバル視してきたはずなのに……ただ、それだけのはずなのに…… この、わけわかんない感情は、なんなんだよ?! 「ウィル、ウィル!」 「…誰っ?!」 不意に、自分の名を呼ぶ声を聞こえ、慌ててウィルは顔を上げる。 すると、忌々しい少女が、幼くも可愛らしい笑顔で自分に微笑んでいた。 「ぽこん!」 「って、ディオナ……僕に何か用でもあるわけ?」 さきの戦闘での恨みもあり、ウィルはわざと苛立たしげな声色で問う。しかしディオナは全く動じず、ずいっ、とウィルに何かを差し出した。 「何これ?……クッキー?」 目に入ったのは、小さなバスケットに入った、形こそ歪だが、とても美味しそうなカホリを漂わせる焼き菓子、クッキーだった。 「ぽこん!ディオナ、おししょうさまにおしえてもらって、ウィルにつくった♪」 「……ふーん…ありが」 甘いカホリに誘われて、ウィルは素直に手を伸ばした、が―――受け取ろうとしたその直前で、先程のディオナにやられた仕打ちを思い出し、手を止める。 (って、何してるんだ僕は…?!こいつはことごとく僕の夢への道を邪魔した張本人だぞ?!) そんな奴からクッキーを貰うだなんて、あまりにも癪すぎる。否、それを知ってわざと作ってきたのだろうか。 どちらにせよ、今のウィルにとっては面白いことではなかった。 胸の中に込み上げてくる怒り。悔しさで自然と歪む口角。それでも目の前には、なんら変わらぬディオナの純真無垢な笑顔。ウィルには到底、この笑顔が嘘だという風には考えられなかった。 (…なんだよ……、なんでだよ、なんでそんな笑顔で、僕にクッキーなんか作ってくるんだよ……!!) しかし、だからこそ、ウィルの頭は更なる謎の深みへと嵌る。 ぐちゃぐちゃにかき乱された脳内を鎮める術が、全く分からなくて。もはやどうしようもない勢いのまま、ウィルは硬直していた右手をぶんっと振り上げ、そして、 「……いらないよっ!!こんなのっ!!」 力一杯、目の前のクッキーを叩き付けた。 「ぽ、こ……?」 ぼとり、と草原の上に無残に落ちたバスケットとクッキーを、ディオナは凝視する。目の前で起こった信じられない光景に、フッ、とディオナの笑顔は一挙に消えうせ、琥珀色の瞳が、ぱちぱちと、何度も大きく瞬いた。 「…ウィル…?、…ぽこっ……ぽこーんっっ!!」 ぶわっ、と目に涙を溜めたディオナは、踵を返して何処かへと走り去ってしまった。ウィルは息切れをして、走り往くディオナの背中を見据えたまま、ただひたすらに立ち尽くしている。 そこで不意に、一連の光景を目撃していたクローディアとユリエットが、慌ててウィルに近付いた。 「ちょっと、何してるのウィルっ?!あのクッキー、ディオナがウィルにあげようと、一生懸命作ってたのよ?!それなのに、それを引っ叩くだなんて……」 「うるさいうるさいうるさいっ!!!あいつが悪いんだっ!!あいつが、僕の癪に触ることばかりするから…!!」 頭をぶんぶんと振りながら、ウィルは喉を枯らして叫ぶ。クローディアは、ウィルのその言葉にほとほと呆れ返ったようだったが、すぐに、翳した右手拳にハァーッと息を吐き掛けると、 「―――ウィル、いい加減にしなさい!!」 「あいだっ?!」 ゴツーンッッ!!といい音を立てて、思いっきりウィルに拳骨をかました。 とんでもない激痛と衝撃でぐらぐらしているウィルに、クローディアはキッと眉を顰めて言い放つ。 「……後で知ったのだけれど、昼間の戦闘での敵たち、本当はウィルが倒そうとしてたらしいわね。そのために、わざと単独行動したそうじゃない?」 「…………」 「だけど、ディオナにとっては、あなたが一人で魔物に囲まれて危ない……って風に見えたの。だから、あなたを助けるために魔法を放った。クッキーだってそう。甘い物好きなあなたを喜ばせてあげようと、ディオナが頑張って作ったっていうのに……」 ハッ、とウィルは顔を上げる。 「……あいつが…そんなはずが…」 唖然としているウィルに、ユリエが横から優しく囁いた。 「ねぇ、ウィル。ウィルが、ディオナのことを煩わしく思ってても……ディオナにとっては、あなたは大切な仲間なのよ。まだ幼いあのディオナが、誰かを守りたいって心を傾けるくらい…大切な………」 「…………」 ウィルはふっと俯き、暫く何かを考え込んでいたが、やがて落ちたバスケットを拾い上げると、ディオナの走り去った方角へ重い足を動かした。 「……僕、行って来るよ」 「それでいいわ。いってらっしゃい、ウィル」 クローディアの強い口調に圧されて、ウィルはディオナのもとへと走って行った。遠くなるウィルの背中を見送りながら、ユリエは微笑むように呟く。 「うまくいくといいね、あの二人」 「……だといいんだけどね。一つだけ、心配の種が残ってるっていうか…」 「え?」 クローディアの言葉を意味が分からず、ユリエは思わずきょとんとした。 「………ディオナッッ!!」 切羽詰まったウィルの声が、ホルルト村から外れた平原に響き渡る。 「! ぽこ……っ」 「に、逃げるな!逃げるなよ!」 先程が先程だ、どうにも会うのは居た堪れないのか、慌ててウィルを撒こうと走り出すディオナを、ウィルは咄嗟にそう叫んで引きとめる。 「………」 珍しくディオナは沈黙を保ったまま、ウィルを振り向きもせず俯いている。 ウィルは見下ろしたディオナの目元にうっすらと水滴が溜まっていることに気付き、更なる罪悪感に駆られながら、けれどなんとか勇気を出して、ディオナの目の前にまで移動し、そして、ずいっ!と何かをディオナの顔面に差し出した。 「これっ!」 「……! …ぽこん?」 それが、自分がウィルにあげようとしていたクッキーのバスケットだという事に気付き、ディオナはぱちくりと目を瞬かせる。ウィルは目を泳がせながら、ぼそぼそと囁くように話しだした。 「………その、さっきは…僕が悪かった。お前は本当は僕のことを考えてしてくれたことを、勝手に勘違いして…八つ当たりして…、だから……ごめん」 「ウィル…」 ディオナの弱弱しい声が、自分の名前を呼んで、鼓膜を突いて。 どきん、とウィルの胸が高鳴る。しかしこんな突然の鼓動の対処法を、ウィルは知らない。 「…っだ、だから!悪い事した…から、これも、受け取って……やらなくもないよ」 困惑した結果、フイッ、とディオナから顔を逸らして、結局また素っ気ない言葉を吐いてしまった。 内心、なんて自分はこいつに対する態度だけは学習能力がないのだろう、どうしてこんな言葉しか言えないのだろう……と激しく悔やんだが、実際自分にはこれで限界だった。 しかし、そんな言葉でも、ディオナには十分想いは伝わったのか。ディオナの目元には、先程よりも多く、今にも零れ落ちそうなほどに涙が溢れ出してきていた。 「ウィル…ウィル…」 「うわっ!な、なんだよ、泣くなよ!」 慌てるウィルに、ディオナは、ふるふると首を振った。 「ディオナ、ウィルにクッキー、ばちんってされて、かなしかった」 「だ、だからそれは謝って…」 「でも、ちゃんとウィルはもらってくれた…。だからうれしい、ディオナうれしい。だからこれは、うれしいなみだ………ぽこん!」 「……っ!」 いつもの忌々しい、能天気な彼女の声。 いつものバカくさくて大嫌いな、彼女の口癖。 いつもの、でも何故か、今までで一番輝いて見える、彼女の笑顔。 自身の、高鳴る鼓動と、上気する頬。体温が勝手に高ぶっているのが分かる。 (……な、なんだ?なんだよこれ?胸がどきどきして…五月蝿くて…息ができないくらい…!) 初めて体験する意味不明な感覚に、ウィルは困惑して、堪らず胸元のマントをぎゅっと握り締める。 しかしそれでも鼓動は止むことはなく、寧ろより一層、速く速く脈動する。 苦しいのに、こんなの煩わしいのに、何故か、これが心地よいと…もっと、憎らしかったはずの、ディオナの笑顔を見ていたいと……そんなバカなことを考えるほどの、この不可思議な感情の答えを―――― (絶対、こんな思いは有り得ない、って思ってたけど…) 決して認めるのは不本意であるのだけれど、一つの予想がウィルの脳裏を過ぎった。それは、そう、弟子の盗賊の少女、シャルルが自分に投げかけた『とある感情』の名称と同じ――― (…もしかして、僕…コイツの事…好き…なのかな……?) きゅん、と何故か切なくときめく胸中。 眼鏡越しの世界が、一瞬だけ潤んで揺れた。 「ぽこん!ウィル、クッキー、たべてみて!」 「あっ?!あ、ああ、うん。いただきます」 ディオナのすっかりいつもの調子を取り戻した明るい声に促され、ウィルは我に返った。慌てて、ディオナの言う通り、バスケットに入ったクッキーを手に取る。 ぱくっ。 ……………。 ……………っっ?!! 「ぶっは――――――――ッッッ?!!何だよコレ―――ッッッ?!!」 口腔内に感じたとてつもない味に、ウィルは思いっきり吹き出した。 それは、甘いような辛いような、苦いような酸っぱいような……兎にも角にも、言葉に表すのももどかしいほど、普通のお菓子には有り得ない独創的な味。何を入れたらこんな味がするのか、というかなんでクッキーでこんな味が出せるのか、それこそ摩訶不思議である。 「ぽこっ♪ウィル、たべてくれた♪」 「いや喜んでる場合じゃないよ?!何だよこの奇跡的な不味さは?!あの甘い香りはまやかしか―――ッッ?!!」 必死で自身の体感した驚異的な味覚を訴えるウィルだが、ウィルがクッキーを食べてくれたことに満足して喜んでいるディオナに、もはや苦情など通用しない。 ここまできてしまえば、いつものノリ。 先程の、甘い麻痺に似た感情は何処へやら。すっかり今のウィルの気分は、いつもと同じ怒りでいっぱい。 (前言撤回!!……やっぱり、僕はコイツなんか大嫌いだッッ!!!) 唇をぎりりと噛み締めて、ウィルはそう心の中でかたく誓った。 幼く淡い、恋心。 お子様達の微笑ましい(?)恋のゆくさきは、どうやら、まだまだこれからのようだ。 あとがき。 以上、ドクロのウィルと、魔法使いディオナのお話でした! この通称・おこちゃまカプの二人は、かなーり前から考えてた絡みだったのですが、形にするのがかなり遅くなって申し訳ない…漸く小説で主人公としてお披露目だね!(え 勤勉なウィルはどうしてもディオナをライバル視しがちですが、それもまた一つの恋の形…(笑) それでは、ここまで読んで下さって有難うございました。楽しんで頂けましたら幸いです。 ブラウザバックでお戻り下さい。 |