疾風のごとく、何かがばびゅんと砂埃を舞い上がらせながら、通り過ぎていった。 赤い余韻を残したその風に、暫く町の人達は硬直して動けなかったとかなんとか…? メロン騒動勃発中。 「ティ〜〜〜ア〜〜〜〜〜〜!!!!!」 「?」 いきなり何処からか、雄叫びに似た叫びが聞こえてきて、しかもその中で名を呼ばれたティアは声のするほうへと身を向けた。 その途端にかの見慣れた青年が突っ込んできたのは、ほぼ同時だった。 ボフッ!!と、まるで柔らかい毛布に突っ込んだような音が立った。 「る、ルーク?!」 「ティア〜〜聞いてくれ〜〜〜!!また、闘技場で負けちまったんだ〜〜〜〜!!!」 ティアに勢いに任せて抱きついてきたルークは、いきなりそんな事をわめきだした。 これも勢い…なのだろうか、それとも偶然なのだろうか、ティアの胸に顔を押し付けながら。 「ルーク、ちょ、やめ…」 「もう四回も挑戦してるんだぜ?!いい加減あんな恐竜みたいな奴に負けるとか、俺情けねぇ…!マジ悔しーんだよー!!」 「お、落ち着いて…」 「何回も挑戦してたら体中痛ぇしで…でも諦められないし…俺どーすればいーんだよー!!」 あんまりにも間髪入れず喚き、更には子供のように自分を抱きしめて離さないルークと、被害者ティアの惨状を皆が見ない筈もない。ガイもナタリアもジェイドもアニスも、勿論皆二人に視線は釘付けだ。 恥ずかしさで、ティアの顔が湯気をたてるように真っ赤に染まっている。 しかし、ふと見下ろせば、まるで子供の様に、泣き声に似た声色でルークは喚いている。……自分の恥を専決して、目の前の困ったちゃんを見捨てられるほど、ティアの性格は悪くない。 「……だ、大丈夫よ………ちゃんと回復して装備を整えて…上手く立ち回ればきっと…」 「本当か?本当にそう思うか?」 「え、ええ。だからルーク、落ち着いて」 「ティア………ありがとう!」 さっきの惨状が嘘の様に、ルークはニッコリと太陽のように微笑んだ。その笑顔が眩しくて、思わずティアがうっ、と目を細める。しかし、これでルークの機嫌は直った。これでなんとか離れて貰える…と思ったが、そんな筈はなかった。 「マジでありがとな、ティア!やっぱティアに相談して良かった…!」 ぎゅううっ!と、寧ろ余計に腕に力を入れてルークはティアを抱きしめる。勿論顔はまだ胸に埋めたまま(多分ルーク自身完全に素)。ティアは案の定更に顔を染めて、もはや恥ずかしさで言葉も発せないのか、ぱくぱくと口を開けている。 傍から見ればまさに男のロマンのような状態なのに、ルークはこんなオイシイ状況であることを全く気付いていない。いや、気付いてないからこそ、遠慮なくこんな事が出来てティアからのお咎めも受けないのだろうか。答えは、全くもって謎である。 とりあえずティアは「ううぅ…」と恥ずかしさが混じった弱弱しい呻き声を漏らしながら、腕の中の子犬の頭を、まるで母親の様にぽんぽんと優しく叩くのであった。 ほぼ一方的天然でお熱い二人はさておき、此方は見学組の四人。アニスがぼそりと呆れた顔で呟いた。 「………ちょっと、みんなぁー。ルークがティアを独り占めしてるよ」 「そうだなぁ。しかもルーク曰くメロンもしっかりと独占済か」 「ハハハ。羨ましいですねぇ」 ガイが苦笑しながら言うと、さらりと嫌味そうな顔でジェイドが続く。しかし、ジェイドの言葉にアニスはあんぐりと口を開けて反応した。 「はうあっ…!た、大佐もティアのメロン狙ってるんですかぁ?!」 「おやおや、違いますよ。私は生憎と貧乳派ですし…例えばアニスみたいな、ね」 「ぎゃ、大佐セクハラです!」 「失敬ですねぇ。……それならばどちらかというと、ガイの方がメロンには興味あるのではないですか?」 「なんですって?!がががガイ、貴方がそんな破廉恥な……」 「ち、ちっがーう!!ナタリア、ジェイドの言葉を信じるな――!!」 いきなり疑いを押し付けられたガイが必死で言うが、天然でおまけに世間知らずなナタリアには早々誤解を解くことは出来ない。そのやりとりを、にやにやと楽しそうにジェイドは笑んでいる。 「あ、貴方の事を見損ないましたわ!ガイなんて知りません!!」 「――な、ナタリア…!…ジェイド…どういうつもりだ…!!」 結局誤解が解けないままナタリアが行ってしまったので、ガイはジェイドの首ねっこを掴んで詰め寄る。ハハハ、と動じず肩を竦めながらジェイドは余裕そうな笑みで言った。 「おやおや、大変ですねぇ。スケベ大魔王の呼び名は伊達ではないですか」 「誰のせいだと思ってるんだ……!」 「さぁ?知りません」 ………一触即発な上、多大な誤解がまだ残っている見学側と、未だ抱きしめられたまま動けない被害者and天然鈍感な加害者側。 どうやらこの騒動、まだまだ続きそうだなーと思いながら、完全に人事のような顔をして、アニスは一人駄菓子をついばんだ。 あとがき。 ただ単純に、ティアの胸に顔を埋める天然変態ルークが書きたかっただけなお話(笑)。 それを皆がからかったらいいなぁと思って、ついつい見学側の妄想をくっつけたら、自然とガイナタとジェイアニもあるようになったしまった…のかもしれません。 もともと小話用として作ったために短いですが、楽しんで頂ければ幸いです。 ブラウザバックでお戻り下さい。 |