「ふわああああ〜〜〜……」 凶室に、戦士レヴィンの大きな欠伸が木霊した。 お嬢様の仰るままに 今はちょうど二時間目の授業が終わり、休み時間になったところである。結局二時間目の間じゅう一回も開かなかった教科書の上に、ぐったりと突っ伏すレヴィンを見て、アーチャーのシドが声をかける。 「どうした、レヴィン?」 「あぁ、いや、実はここのところ毎朝白銀と稽古してんだよ。五時に待ち合わせだから、おかげですっげェ寝不足…」 「大変だな……。白銀と朝から戦ったら疲れるだろう」 「そりゃーもう、朝っぱらから容赦ねェぜ。ただでさえ強ェのに、今朝は特に…なんかあいつピリピリしててな、いつもより3回くらい多く手合せさせられたぜ」 その理由は、恐らく昨日、転校生リチェルと、謎のクラスメイト・柊の件があったからなのだろう。二人の段違いの強さを感じ取って焦燥しているのだ。態度にはおくびにも出さないが、白銀がクロエのために強くなろうとしているのは知っている。詳しい事情は話してくれないが、レヴィンは、聞かずとも、ダチとしてその気持ちを組んでいるつもりだ。 「シド、次の時間何か分かるか?」 「確か英語だったと」 「げっ、マジかよ?!あんなん上等の子守歌じゃねーか、ガン寝しちまうぜ!!」 レヴィンはいびきが五月蠅いので、授業中に寝るとすぐにバレてしまう。ただでさえすぐ後ろの席が生真面目な白銀なので、厳しく起こされるのは目に見えていた。 そのお決まりの光景を何度も見たことのあるシドは、ぷっと吹き出した。 「ははっ。いっそのこと保健室で寝てきたらどうだ?」 「寝不足で行けるのかァ?」 「あんまりにも眠くて逆に授業に集中できません、って言えばいい。保健室の先生は甘いから大丈夫だ」 なるほど、とレヴィンは納得する。白銀といいシドといい、頭がよく、機転のきく友人が多いのがとても有難い。 「ふぁぁ……。じゃ、そうすっかなァ……」 「ああ。先生には上手く言っておくさ」 「頼むぜ…サンキュー…」 シドに手を振ると、レヴィンは眠たすぎてふらつく体に鞭打って凶室を出て行った。 すると、レヴィンとちょうど入れ違いで、刀祢・白銀兄弟と、クロエ・アイリス・リリィの仲良し三人組が凶室に入ってくる。 「あらぁ、シドくんこんにちは〜」 「刀祢さん、こんにちは」 「レヴィンは何所かへ行ったのか?」 二時間目の授業の教科書をひっちらかしたまま空席になっているレヴィンの席を見て、白銀がシドに尋ねる。 「今にも倒れそうなくらい眠たそうだったんで、保健室に行かせたよ」 「…そうか」 今朝は流石に激しく手合せをしすぎたな、と白銀は小さく呟く。 昨日のことがあって、どうしてもいつもより多く剣を揮いたい気分だったのだ。しかし朝の弱いレヴィンに幾らなんでも遠慮しなさ過ぎたと、白銀は反省する。明日はたまに休みにして、一人で座禅でもするのがいいかもしれない。 「ねえねえ!シドくんって英語得意?」 「ああ、まあできないこともないが…」 「三時間目の頭で小テストあるでしょ。ヤマ張り教えて欲しいんだけど…」 クロエとアイリスにノート片手に頼まれ、シドはそんなことを聞かれる日がくるなんて…と驚いた。だが、すぐに嬉しさで笑みが零れる。 「お、俺に分かることで良かったら」 「やったぁ!ねえねえ、白銀も刀祢おねえちゃんも!英語教えてもらおっ」 「し、白銀と刀祢さんも?!」 「俺達は東方出身だから、英語はあまり馴染みがないんだ。シドの方が詳しいと思う」 なるほど、とシドは頷く。文武両道な二人にも、苦手な分野はあるものだなぁと新しい面を見れた気がした。 シドはノートを皆見せながら、恐らく今日のテストで出ると予想していた単語や文法と、できる限り分かりやすく説明する。クロエや刀祢がふんふんと頷きながらペンを走らせている。 「リリィ、どうしたの?一緒に教えて貰いましょ」 (リリィ?!) 不意に、アイリスが後ろでずいぶんと大人しくしているリリィに声をかけた。 アイリスはリリィをシドのもとへと引っ張り、隣にずいと押し込める。急な接近でシドの体が強張った。ふたりの視線が、すぐ近くでばちんとぶつかる。 「っあ…」 「えと…」 二人の間に妙な空気が流れ、思わずどもってしまう。 「…リリィ…」 「…シド…くん」 名前を呼び合うものの、次の言葉が出てこない。 この間、はずみとはいえ、手を握るなどという馬鹿な行為をしてしまったため、シドはどう顔合わせしていいのか分からなかったのだ。 「んん〜〜ん?ご両人、熱々ねぇ〜」 「姉上!」 刀祢の言葉で、ふたりはハッ!と正気に戻ると、どちらとも慌ただしく教科書を開き、あたふたし出した。 「えっとえっと、あああのね、ここが分からないんだけど…っ」 「あ、ああ、そそそこはちょっと文法がややこしいからちょっと覚え方にはコツがっ」 微笑ましい二人のやりとりを見て、皆の顔が綻ぶ。白銀がそっと口を開いた。 「それにしても、シドは本当に馴染んできたな」 「え?ほ、本当か?」 「そうそう。最初の頃はもっとキツい感じの人かと思ってたのよねぇ〜。でも喋ってみればむしろ優しい人ってカンジ?」 ははは、とシドは苦笑する。やはりこの目つきの悪い目に加え、友達ができなくて一人で行動する姿を見れば誰でもそう思うだろう。 だからこそ、今こうして皆と和気あいあいと話せることが、嬉しくて堪らないのだが。 「リリィがね、よく言ってるよ。シドくんに友達ができてよかった、って何回も。すごく嬉しそうに言ってるの」 「く、クロエちゃん!」 「リリィ…?」 顔を赤く染め、恥ずかしげに頬を手で隠しているリリィと目が合う。 その仕草が可愛らしくてしょうがなくて。クロエの今の言葉の意味を、知りたくて。リリィ、本当なのか、と問いかけようとした、そのとき。 キーンコーンカーンコーン、と無情にも鐘が鳴ってしまった。 ああ、休み時間って本当にあっという間。 「…時間がなくなってしまったな」 「あらあら。じゃあシドくん、今度みんなで放課後に勉強会しましょうか。その時にまた教えてね〜」 刀祢が柔らかな笑顔で手を振り、それに続いて皆もばたばたと席に戻り始める。 シドは、今の時間が終わってしまったのが惜しくてしょうがない。 (リリィ……) ついこの間までとは違う、リリィの態度。おこがましいと分かっていても、期待せずにはいられない。 慌ただしく三時間目の授業の準備をしつつ、クロエやアイリスと話すリリィの頬は、まだ少し赤みを帯びていて。 可愛い、好きだ、とシドは心の中で思った。 ああ、俺は、あの子の小さな手にもう一度触れたいと思っている。 一方、保健室へとたどり着いたレヴィンの方はというと。 「おーっす。先生、ちょっと寝させてくんねーかな……って、誰もいねェ」 勢いよくドアを開けて入ったのはいいものの、中はとても閑散としていた。先生はどうやら外出中らしい、鍵も掛けていないとは不用心なものだ。 「しょうがねェ、勝手に寝させて貰うか」 がりがり、と頭を掻きながら、レヴィンはベッドへと急ぐ。今はとにかくこの睡眠不足を解消したかった。後で先生が帰ってきたときに事情を説明すればいい。 「ん?」 白いカーテンの仕切りを捲って中に入ると、既に誰かが横になっていた。 どうすっかな、とレヴィンは首をもたげる。 すぐ隣のベッドは開いているが、レヴィンはいかんせん自分のいびきが五月蠅いことを自覚している。本当に体調が悪い人なら、隣で寝るのは迷惑が掛かるかもしれない。 それに、あまり他人の隣で横になるというのも、やや抵抗があるものだ。もしレヴィンが苦手な女性だとすれば尚更。 (誰だか覗いてやるか) もしも、確認して、クラスメイトの見知った男だったとしたら、それはもう遠慮なく寝させて貰おうと決めて。 被っている布団をそーっと捲ると――― 「うおっ?!」 レヴィンは驚いて、思わず声をあげてしまった。 「んん……誰ですの…?」 (お、起こしちまった…面倒臭ェ……) そう、寝ていたのは、レヴィンがこの上なく関わりたくない一番苦手な女性。世間知らずお嬢様フローレンス。 何かとレヴィンに『あなたの行動を品行方正にしてさしあげますわ!』とのたまってくるのを皮切りに、この間は変なスタンプカードまで渡されて。 レヴィンは“おいた”をすると追加されるそのカードを、先日、案の定MAXまで貯めてしまい『必殺!お仕置き弓』を食らって痛い思いをしたばかりだ。 そんな厳しい彼女に、寝不足という理由で来たことがバレたら一体どんな目に遭わされることか。レヴィンが舌打ちをしかけていると。 「……あなたも気分が悪いのですか?隣、使ってもいいですわよ…」 「は?」 お嬢様の全く予想外の台詞に、レヴィンは思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。 「どーしたんだよお嬢様。『あなたが病気などするわけないですわ!さては仮病ですわね!いけません!』とか言わねェのかよ」 「失礼ですわね…。またスタンプ追加ですわ…よ」 レヴィンにけしかけられて言い返そうとしているが、今のフローレンスはなんだかとても弱弱しい。っつーか、衣服が乱れていて胸元がいつにもまして危ういせいか、無駄に色っぽい。いやいや、邪念は捨て去れ、俺。 犬猿の仲とはいえども、流石に彼女の体調が気になりだしたレヴィンは、彼女の枕もとに顔を寄せる。 「熱はねェみたいだな」 「きゃっ」 こつん、と額と額をくっつけられ、フローレンスが驚いて声をあげる。その声がまた女の子らしい可愛らしいものだったから、レヴィンもまた驚いてしまった。 「な、なんだよ」 「あなたの方こそ、ですわ…、女性が嫌いですのに、意外と大胆ですのね」 「う、五月蠅ェよ。実家じゃいつも家族にやってたんだっつーの」 言われてから急に恥ずかしくなり、レヴィンはそっぽを向いて鼻先をこする。 「家族…。きょうだい、とかが…いらっしゃいますの?」 「……そんなもん、お嬢様には関係ねーだろ」 急にレヴィンの声が冷たくなり、フローレンスはあまり触れられたくない話なのだと気付いて、悲しそうな顔をする。 レヴィンは今のフローレンスにそんな顔をさせてしまったことに、舌打ちをしてがりがりと頭を掻いた。 「っだーもう、気にしてんじゃねェよ!それよりも!お嬢様こそどうしたんだよ」 「……わたくしは、貧血ですわ。体があまり丈夫ではないので…よくこうなりますの」 いつも背を真っすぐに伸ばして、凛としている彼女の姿からはとても考えられなかったが、今の姿を見る限り事実なのだろう。いや、本当は弱いからこそ強くあろうとして見せているのだろうか。 フローレンスの意外な一面を知ってしまったレヴィンは、なんだか急に彼女のことが気になって仕方なくなった。 「……なんか飲み物買ってきてやろうか?マムシドリンクでも飲んだら元気になるかもしれねーぜ」 「大丈夫ですわ、しばらく寝てれば治ります。……くすっ、あなたらしいというか…。不器用ですけれど、優しいのですわね」 「んなっ!!」 カァァ、とレヴィンは顔を真っ赤に染める。 必死になって「やっぱ絶対買ってやらねェ!!」と叫ぶレヴィンに、フローレンスは弱弱しく微笑みながら、手を伸ばす。 大きなレヴィンの手を取ると、そっと両手で握りしめた。 「なっ……」 「わたくし、家で体調が悪くなった時は、こうして、お母様によく手を握り締めてもらっていましたわ」 「おふくろと一緒にすんなよ。俺は男だし…っつーか俺は」 「女性が嫌いなのは、知っています。でも、今だけ……わたくしの願いを聞いてください」 「……チッ。仕方なくやるんだぞ!仕方なくな!」 「くすくす…。ありがとう、レヴィン…。とても…温かいですわ……」 そう言って、フローレンスはすぅ…と眠りに落ちる。 自分の大きな手を、縋るように握り締める彼女の手は、とても冷たくて小さいもので。 いっこもゴツゴツなどしていなくて、滑らかで、か細くて。 「チッ」 レヴィンは、どかっとその場に座り込むと、彼女の傍らに居座ることにした。こうなったら自分もこのまま寝てやろうと思った。いつどこでも、どんな体勢でも寝れる図太さが自分で有難いと思う。 警戒心のない、とても安らいだ顔をして眠っている彼女を見つめて、レヴィンはそうっと額のバンダナを上へずらした。 その下に隠された、大きな傷が露になる。 (家族……か。こいつはやっぱりお嬢様だ。何も知らない幸せ者…。俺には、そんなもんありゃしねェよ……) 再びバンダナで傷を隠すと、ベッドの端に体を預け、眠る体勢に入る。 何も知らない彼女を羨ましく思いながらも、どうか彼女はそのままでいて欲しいとも思う。 そんな、心が無垢だからこそ頑固で強いお嬢様を見ている方が、自分は一番安心するのだ。 「早く復活しろよ、お嬢様」 すっかり彼女のお世話係になった気分になりながら、レヴィンはそっと彼女の滑らかな金髪を撫でた。 「……って、寝過ぎだろお嬢様ァ、あァ?!!」 「騒がしいですわね。近所迷惑ですわよ、静かになさい。」 すっかりいつもの調子を取り戻したフローレンスに小突かれ、レヴィンはぶつぶつと不満をもらした。 時刻は午後6時。ふたりが保健室で目覚めたときにはすでに夕方で、授業はとっくに終わっていた。『すっごく仲良さそうに寝てたから先生起こさなかったぁ♪』と保健室の先生に散々からかわれながら、荷物を取りに行ったりして、宿舎についたときにはもうこの時間である。 不意に、ぐううぅ、とレヴィンのお腹の虫が盛大に鳴った。 「腹減った〜…。そういえば、昼飯も食ってねェ」 「わたくしに付き合わせてしまいましたものね…。そうですわ。今晩はわたくしがお礼に夜食を御馳走いたしますわ」 「マジで?!!」 ものすごい嬉しそうにレヴィンはフローレンスを振り向く。子供のようにご飯に喜ぶ彼に、フローレンスはふふっと微笑んだ。 「わたくしの部屋にいらっしゃいな。すぐに用意して差し上げますわ」 「へ、部屋って」 「この際、女性が苦手なのは我慢しなさいな」 まあ、ご飯にありつけるなら…とレヴィンは行くことにした。長居しなければ耐えられるだろう。 お嬢様なのだから、とんと豪華なご飯を食べているのだろう、と期待に胸が膨らむ。 そんなこんなで、彼女の部屋にお邪魔し、暫くして彼の目の前に差し出された料理は。 「っな……なんじゃこりゃああああ――――ッッ?!!」 えげつない色をして、ボコボコと泡立ち、謎の煙をあげる料理の数々。 料理?いや、人体実験の間違いじゃね?と思ったが、どうやらフローレンスはガチのようだ。 「どうなさったの?早く召し上がりなさいな」 「いや、あ、ああああのさ。お嬢様いっつもこれ自分で食ってんの?」 「当たり前でしょう?」 いや、サラッと言われても……どんだけ味覚オンチなんだよ!! こんなもん平気で食ってるから、貧血持ちなんじゃないかと疑わずにはいられない。 「さぁ、遠慮せずにお食べなさいな!おかわりもたくさんありますわよ!」 「……かっ、勘弁してくれよォ、お嬢様〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッッッ!!!!」 今日のレヴィンの一日は、なんだかとても散々であった。 その日の夜、宿舎のとある廊下で、刀祢・白銀姉弟が顔を合わせていた。 「姉上、六合はそろそろ電報の使いから帰ってくるのか」 「ええ、明日にも帰ってくると思うわ。急に代役をやらされることになってしまって、六合には悪いことをしたわ。本来なら彼の仕事ではないのに」 「そうだな……。俺達も六合がいないと困る。普段どれほど俺たちを補佐してくれているか、感謝してもし尽くせない」 「あぁん、早く六合に会ってナデナデスリスリしてあげた〜いっっ!!」 真面目な話からショタコンモードへ突入し出した刀祢を、姉上、と白銀が諌める。 「ごめんごめん。……ところでクロエは?」 「俺の部屋にいる。この間から悪い夢が続いているらしい…。一緒に寝てくれと頼まれた」 「そう。あなたとなら安心して眠れるでしょうね」 「ああ…」 「『ああ…』じゃなくて!あなた、クロエと一緒に寝てどうともならないの?!今いくつでちゅかーっ?!」 「あ、姉上。大声で不謹慎なことを言わないでくれ」 地団駄を踏み始めた刀祢に、白銀は圧されて一歩引く。仕方ないだろう、と白銀は呟く。彼女の安息を守るためには、自分の感情など捨て置かねばならないのだ。 「我慢しなくてもいいようになればいいじゃない。クロエだってあなたのこと好きでしょ」 「……無理を言うな。兄としか、見られていないのに」 限りなく強い愛情を持ちながら、それを伝える勇気すら、白銀には許されない。そんな弟を見兼ねて、刀祢は静かに口を開く。 「……あなたが。いつまでも家族家族って言ってるから、男として意識して貰えないのよ」 「………」 「言い聞かせちゃだめよ。クロエにも、あなた自身にも」 そう言うと、刀祢は自分の部屋へと入って行った。 白銀もまた、ゆっくりとした動きで自室へと戻る。 刀祢の言葉が突き刺さって、気が落ち込んでいく。全くもって図星だった。自分の気持ちをそうやって制さなければ、今の関係を壊してしまいそうで。 「……クロエ、遅くなった」 「白銀!おかえり!」 それでも、満面の笑顔で出迎えてくれる彼女を見ると、自分にはそれしかないのだと気づかされる。 彼女のすべてを守るためなら、白銀は自分がどうなろうと構わないのだ。 灯りを消してしばらくが経ち。クロエが白銀の腕の中で寝静まったころ。 白銀は、少女の寝顔を見つめながら、自分へと問いかけていた。 俺がクロエに思いを伝えるということは 俺が彼女に牙を剥く獣になるのと同じことではないか と 彼女が優しき兄であり騎士を求めるならば、白銀に宿る片恋はもう育ちすぎて、彼女の全てを求めていて。 一度でも触れることを自分に許してしまったら。それはもう止まることを知らずに、彼女の体も心も壊してしまうかもしれない。 それは、彼女を苛めて苦しめて攻め立てる黒い影と、同じになるのではないか。 「クロエ……お前に見せている俺は…兄でしかないんだ」 兄ではない純粋な愛し方なんか、分からないんだ。 「……クロエ…ッ!クロエ、愛している…、愛している…!!愛している…っ!!」 白銀は、クロエの体を強く、強く、それでも決して気づくことのないように、ひたすらにかき抱いた。 愛している、と白銀は何度も叫ぶ。 気付いてほしい。 気付かないでほしい。 いつでもこの無垢な唇を奪えるのに。 それでも奪うことなど許されない。 宵闇の中で滲む視界に、白銀はただ咆哮する。 もう限界だった。愛している。その気持ちが零れて、止まらない……… 一刻の猶予も残されぬ二人を包み込んで、魔立邪悪学園の夜は更けゆく……… あとがき。 戦士♂×僧侶♀小説でした。といいつつアチャ♂×アチャ♀と、侍×盗賊と、フルコースになってしまいましたが。 最初からこれとこのEPは入れよう、と思っていたものを入れられて満足なのですが、どれにも愛が走り過ぎて。あはっは、纏まりなくて申し訳ないです。。 それぞれの思いや隠された秘密が、少しずつ育ってまいりました。ここからいよいよ折り返します。どうぞこれからも見守って頂けましたら幸いです。 それでは、ここまで読んでいただき有難うございました。また次回作にてお会い致しましょう。 ブラウザバックでお戻り下さい。 |