先日の『レヴィンがお嬢様を泣かせた』騒動から数日が経ち、ようやく凶室が完全復旧したと連絡網が回ってきた。 その頃にはシドとレヴィンも全快し、約一週間ぶりに全員揃っての授業が再開された。 久々に集まったというのに、クラスはいつもと変わらぬ賑やかな雰囲気で、瞬く間に時間は進んでいった。 そして、その帰りのHRでのこと―――。 「突然ですが、明日はプール開きです!!」 「「「ぷ、プール開きぃ?!」」」 お嬢様のその手にキスを 「そうです。では皆さん、明日に備えて各自水着を用意してきて下さい。黒か紺のスクール水着であれば良し、後は皆さんのモラルに任せます。では、HRは以上です!」 先生はそれだけ手短に連絡すると、凶室を後にした。そして、その後の一瞬の静寂ののち―――。 「い〜〜〜〜やっほぉぉ〜〜〜う!!! やったぁ、明日はプールよぅっ♪」 「わーい♪プール、プール♪」 サラの掛け声を切欠にして、皆は勢いよく歓喜の声をあげた。嬉しさのあまり、さっそくクロエと手を繋いでぐるぐる踊りだす。 「ったく、二人とも、子供みたいにはしゃいじゃって。まあ、あたしもプールは好きだけど」 「あ、アイリスちゃん…僕は嫌だよぉ。だって、僕、泳げないんだもん…。」 「あんたねぇ…」 アイリスは呆れた様子で溜息をつく。どうやら彼女の明日はカナヅチのユーリのお守りに追われることになりそうであった。 まあ、一部そういう生屠たちもいるものの、皆、明日を楽しみにしている様子だ。そんな賑やかな光景を見守りながら、白銀は不意にとあることに気付いた。 「そういえば、水着を準備していなかったな……」 その瞬間、何故か、白銀の呟きを聴いていたらしき生屠達の大半が思いっきり硬直した。 ただの独り言のはずだったのだが、もしや―――と思い起こし、そしてすぐ想像に相違ないことを知る。つまり、皆も水着の準備をしていなかったらしい。 プールという習慣に馴染みがない、自分を始めとした東方出身者ならば、準備が出来ていなくてもまだ納得出来るのだが…皆のそれは不味いのではないのだろうか……? いや、そこがこの学園の生屠らしさと取るべきなのか? 白銀が頭を抱えていると、それを見兼ねた姉の刀祢が、ぽんっ、と大きく手を叩いた。 「そうだわ!ねえ、みんなで購買に買いに行きましょうよ。よろず屋は万能だし、きっとまだ買えるはずだわ!」 「成程。……ではそう致しましょう、姉上」 ナイス提案をしてくれた姉に感謝しつつ、白銀はさっそくいつものメンバーに声をかけ始める。すると間もなく、あるとんでもない事実が発覚した。 「……ちゃんと水着を用意してたのは、あたしたちだけみたいね」 「そうだね、アイリスちゃん…。」 「皆……本当にこれはどうかと思うんだが……」 まさかの、水着を用意していたのはアイリスとユーリの二人だけという始末。白銀はますます頭を抱えるが、皆は目を泳がせてただただ苦笑い。 ちゃんと用意していた二人を置いていく形になるのは忍びなかったが、まあこの際仕方がない。「これから図書室で魔道書でも物色して帰るわ。気にしないでね」とアイリスの有難い言葉をもらって二人と別れ、いそいそと皆で購買に向かおうとすると――― 「……あ、あの。申し訳ないのですが、わたくしは、ちょっと……」 フローレンスが、唐突にそう呟いた。 きょとんとして、皆で彼女を見つめる。どうやら行くのにあまり気がすすまないらしい。見兼ねたサラがひょこっと顔を覗かせて、尋ねてみる。 「どうしたのぅ?もしかしてもう水着の準備はOKだったりぃ?」 「そ、そうではないのですが…ただ……」 ちろり、とフローレンスはレヴィンの方を見つめる。 その僅かな動作で、ああそうか、と白銀は気付いた。実は、あれからフローレンスとレヴィンは仲直りどころか口をきいてすらいなかった。そんな状態で、彼のいるメンバーと行動を共にするのが気まずいのだろう。 と、そこで渦中のレヴィンもフローレンスの視線に気づいた……が、レヴィンはすぐにプイッと素っ気なく目を反らしてしまった。 「…レヴィン!」 「………」 咄嗟にレヴィンに小声で耳打ちするが、頑としてフローレンスの方を見ようとはしない。 仕方なく視線を戻すと、そこには酷く傷ついた顔をしたフローレンスが立っていた。 「……わ、わたくしのことは構わず行ってきてくださいませ。では、お先に失礼致しますわっ!」 フローレンスは、早口でそれだけ捲し立てて、凶室を出て行ってしまった。彼女が泣いていたことを見逃さなかった一人であるサラが、じろり、とレヴィンをきつく睨みつける。 「ちょっとぉ、レヴィンくん……今の態度、ひどくなぁ〜い?」 「あァ?文句あンのか?」 レヴィンはヤンキーさながらな声色でサラを威嚇し、ガァン!!と机の脚を蹴りつける。 びく、とサラは一瞬だけ怯んだが、諦めずにまたレヴィンを睨む。場の空気が段々と澱みだしてきて、白銀は密かに溜息をついた。 同じ女のコ同士として、どうしたってサラを始めとした女性陣はフローレンスの方に同情する。そうすると、自ずとレヴィンを攻める発言が増えてくるわけで、あの一件以来、こういう険悪なムードになることがしょっちゅう起きている。 となると、専らそれの仲裁役となる白銀などの気疲れが増えるワケで。あの二人が仲直りするまではこの状態が続くのかと思うと気が重たくなってくる。 兎にも角にも、まずはこの場を諫めねば……と思い起こし。白銀はもう一度息をついてから、気だるげに歩み出る。 「お前たち、いい加減に…」 「リチェルちゃ―――んっ!」 が、それを遮るようにして、突然、クロエが元気よく手を振り出した。 「……あなたは…この間の」 呼ばれた先にいたのは、転校生である盗賊の少女・リチェルカーレだった。先日、クロエの積極的なアプローチによって、彼女の友達(?)になったばかりである。 クロエは軽快な足取りで駆け寄ると、ぎゅっとリチェルの両手を握りしめた。 「ねぇ、リチェルちゃんも一緒に水着買いに行こっ?」 「……え?」 「ダメかなぁ?」 「う…っ。わ、私は…その…」 クロエのきらきらした目で見つめられて、リチェルが怯む。 彼女の大体の性格を考みて、突然自分たちの大所帯に混じるのには抵抗があるのだろう、と容易に想像はできたが……あんな純粋な眼で見つめられては、断るに断れなくなって困惑しているに違いない。 リチェルがなかなか答えられずにいると、突如そこへある男が二人に忍び寄った。 「良いんじゃない? せっかくのお誘いは受けないと勿体無いよ」 「ひ、 見計らったかのようなタイミングで出現したのは、謎の侍・柊だった。 柊は、リチェルの肩を掴んで握られなくしてから、ニッコリ、とクロエに向かって微笑む。 「何するの、離…っ」 「実はさあ、俺も水着買いに行きたいんだよね。と言うわけで、リチェのついでに俺も一緒させて欲しいんだけど。いいかな?」 「あ、あなた、何を言って…っ?!」 まあまあ、と柊はリチェルの口を手で覆って抗議しないよう押さえつける。あくまで軽いノリで、しかし的確に、そこで柊は白銀に向かって目配せをしてきた。 ……ここは応じろ、ということか。 彼の真意はなんなのか、直ぐに理解することは出来なかったが―――特に何か危うい気配がするという訳でもなかったため、一先ず了承することにする。 「…ああ…大丈夫だ」 「というか、柊くんがついでなんて有り得ないわよ〜。むしろメインだと思うけど。ねぇみんな?」 「はい。刀祢さんの言うとおりだと思います」 「お、俺、柊…さんとこんな近いの初めてなんだが…。うわ、近くで見てもすっごいイケメン…こりゃアイドルって言われてておかしくないよな…」 「あ〜!!シドくんまでそんなこと言うんだぁ!!このクラスにはサラちゃんっていうアイドルもいるんだからね〜っ?!」 皆、白銀と柊のアイコンタクトに気付いていないらしく、むしろ『学年一のアイドルと放課後にお買い物』なんてイレギュラーな事態に騒いでいるようだった。 と、そこで、いつの間にか徐々に皆のムードが和んでいっていることに気付き、白銀ははっとする。もしや、柊はこうなることを見越して話しかけてきたのだろうか。 「……柊、世話をかけたようだな」 カマをかけるつもりでそう言ってみる。すると柊は、ニッコリ、と意味深に微笑んで見せた。 「まあ、俺は俺でやりたいことがあったからね。キミが快くOKしてくれたお返し」 「…やりたいこと?」 「まあ、ちょっとね。ああ、キミの心配するようなことにはならないから安心していいよ」 相変わらず謎めいた柊の口ぶりに、訝しげに目を細める。まだ彼への警戒心がすべて無くなったわけではないが、少なくとも、今回は純粋に友好的だと捉えていいようだ。 「わーい!リチェルちゃんと一緒、一緒♪」 「うう…。柊、後で覚えていなさい…!」 かくして、柊・リチェルを加えた新鮮なメンバーにて、購買へと向かうことになった。 購買に着き、さっそくよろず屋の店主に水着を買い求めたところ、店の奥の広い商品売り場へと案内された。 たくさんの水着が店内に飾られており、試着室もたくさん完備されている。どうやらここは、学園で使う衣服を買い求める生屠たちのための専用スペースらしい。 白銀・レヴィン・シドの三人は、試着もそこそこにさっさと水着を買い終えてしまい、レジ近くに備え付けのベンチに座って、未だ買い物の終わらない女性陣たちをぼ〜〜〜っと待っていた。 「女の買い物は…長ェな……」 「俺達よりも、身につけるものにこだわっているということだ。理解して待ってやろう」 「それに柊…さんもまだみたいだし。きっと俺たちが特別早いんだよ」 「はァ…そんなもんかねェ……」 「……?」 シドが妙な違和感に首を傾げる。少々考え込んだのち、シドはそ〜っと白銀の方に体を寄せ、レヴィンには聞こえないくらいの小さな声で話しかけてきた。 (なあ、白銀……。今日のレヴィンはなんだかおかしいよな?) (それは俺も感じていた) シドの問いに素直に頷く。そう、今日のレヴィンはおかしい。何故だかやけに大人しいのだ。 いつもならば、短気なレヴィンがもっと文句を言って騒いでもおかしくないはず。授業中も何処となく上の空だったし、先ほど凶室でサラと睨みあった時すら机を蹴る程度で治まっていた。 あの『ヤンキー上等!』なキレッぷりを発揮しなくなるほどおかしくなる原因とすれば―――現時点では一つしか思い浮かばない。 (フローレンスのことだろうな) (やっぱり……) シドも白銀と同じことを考えていたようだった。なあ、とシドは更に続ける。 (こないだ、フローレンスが言ってた『退け者にした』って台詞。白銀も気になってる…よな?) ああ、と素直に頷く。あの言葉が今でも心の中で引っ掛かっている。 単純に考えれば、レヴィンが部屋を抜け出してみんなと喋っていたことを指しているのかと思ったが……フローレンスがそれを叱ることはあっても、あんなヒステリックを起こすはずがない。クラスメイトとして彼女が そんな人物ではないと理解しているつもりだ。 とすると益々原因が分からなくなってくるのだが、白銀はある一つの可能性を考えていた。 (シド。これは俺の推測だが……聞いてくれないか) (なんだ?) 一息置いて、シドをじっと見据えつつ、口を開く。 (……フローレンスは、先日のレヴィンの話を聞いていたのではないかと思っている) 「そっ、その話って!!俺と白銀だけが聞かされたやつかっ?!」 ……あ。 「あァ?あんだってェ?」 「……シド…」 「す、すまん…!」 シドがついつい口に出してしまったため、レヴィンにバレてしまった。 白銀はぐったりと項垂れる。どうやら、レヴィンは今のシドの失言により、二人の内緒話の内容を察したらしく、明らかに苛立ちMAXな顔をしている。これでは誤魔化しようもないな、と判断し、思い切ってレヴィンに切り出す。 「……これ以上黙っているのもどうかと思っていたところだ。はっきり言わせてもらう―――フローレンスに謝りに行け」 語気を強くして言い放ってやると、レヴィンは、明らかに不愉快と言わんばかりの表情をする。 「―――嫌だねッ。 大体、先に手ェ出されたのはこっちだぜ。なんで俺からあのお嬢様に謝らなきゃならねェんだよッ」 「俺たちはお前からすべてを聞かされた。だからこそ分かる。お前は彼女に素直に事情を話すべきだと」 「アレは、お前とシドだから話したんだ。あのお嬢様に言うつもりはこれっぽっちもねェ!」 「やれやれ…。この頑固者の鈍感男め」 最後の方は、ほとんど聞こえないくらいの小声で言った。 どうやら、レヴィンは梃子でも説得に応じる気はないようだ。どうしたものかと呆れ果てていると、そこで不意にシドが二人の間に入ってきた。 「なぁ…レヴィン」 「シド。なんだよ」 「俺もレヴィンの話を聞かされたから、お前の言いたくない気持ちが分かる気がする。男ってそんなもんだよな。譲れないプライドって、あるもんな?」 シドの言葉を受けて、レヴィンの表情から徐々に苛立ちが消えうせていく。 俯いてしまったレヴィンに、シドはより優しい声色で続けた。 「……でも、頼む…そこをなんとかフローレンスにも話してやってくれよ。きっと今、お前に『自分だけ大切な話を聞かされずに退け者にされた』って思い込んで悲しんでると思う。それを拭ってやれるのはレヴィンだ けだって俺は思う…だから……」 と、そこでシドは唐突に我に返った。 気付けば、レヴィンがすっかり黙りこくってしまっている。まずい俺ってば今絶対なんかやらかした、とシドはわたわたと慌てふためき出す。 「ごごごごめんっ!俺、調子に乗って偉そうなこと言いすぎ―――」 「いや―――いい。二人には悪ィことしたな」 レヴィンはシドを制して宥めてやると、ぐしゃ、と前髪を両手で無造作に掻きあげた。 「分かってる…分かってるんだよ。けど俺は…俺は!どうしてもお嬢様だけには言いたくねェんだ!ああそうだよ、シドの言うとおりだッ!!なんでか分からねェけど、あのお嬢様のこと考えただけで……それだけは譲れねェって思っちまうんだよッ、俺のやっすいプライドがよォッ……!!」 (―――ようやく、本音を言ってくれたな) ふ、と白銀は密かに微笑む。ここは自分ではなくシドが適任だったのだろう。論理で言うのではなく、持っている感情を認めてやること。シドはそれを包み込む優しさを持っているからこそレヴィンを説得できた。彼がいてくれたことに、感謝をせねばならない。 「……安心したぞ。どうやら意外と鈍感でもなかったようだな?」 「あァ?!白銀それどーゆー意味だよっ?!」 「いや。さぁ、そうと分かれば皆のもとに行くか。シド、レヴィンを絶対に逃がすなよ」 「あ、ああ!分かった!」 シドは大急ぎでレヴィンの背後から両肩を掴み上げる。ぎょ、と当然ながらそれでレヴィンは仰天して暴れ始める。 「おっおいっ白銀ェッ!なんなんだよ!オイ、コラァ――ッッ!!」 レヴィンは、やっといつもの調子を取り戻し始めたらしい。 こいつはこうでなくては此方も調子が出ないからな、と思って自然と口元に笑みが浮かんでくる。 (さてと。上手く女性陣の協力を得られるといいが) 白銀の頭の中にはある考えがめぐっていた。それをなんとか遂行するためにも、シドと協力しつつ、レヴィンを引き摺って店内へと連行していった。 「リチェルちゃん、それ似合ってるよぉ♪えへへ、楽しいねっ♪」 「べ、別に…こんなの楽しくなんか…ない…ような…そうでもないような……」 「イセラさん、やっぱりスタイルいいですね…。わたし憧れちゃいます」 「キミの方こそ可愛らしいよ。自分に自信を持つといい」 「―――あっ!シド君に白銀くんにレヴィン君じゃなぁい☆」 「……お前達、何をしているんだ?」 女性陣に無事に合流できたのはいいものの、白銀を始めとした三人は、目の前で繰り広げられている光景に絶句した。 「じゃっじゃ〜〜〜ん♪どぉどぉ、似合う〜っ?絶世のアイドル・サラちゃんにお似合いだと思わな〜い?」 「……その水着は完全に指定外だろう」 「もぉ、白銀くんったらつれなぁ〜い。ちゃんと買うのは指定のやつにするも〜ん」 ―――どうやら、いつまで待っても来なかったのは、こんな風にみんなで水着の試着をして遊んでいたかららしい。 サラ、イセラ、リリィ、クロエ、刀祢、リチェルカーレの六人が全員水着(みんなスクール水着だが、サラだけピンクのフリフリビキニ)を試着しており、色々なタイプの美女・美少女がよりどりみどりに立ち並んでいる光景はまさに盛観。案の定、健全な男子であるレヴィンとシドが、顔を真っ赤にして悶え始めている。 「す、す、すっげ〜刺激的な光景だなァ…」 「り…リリィの…リリィの水着姿……っ」 白銀ははぁーっと握り拳に息を吹きかけると、ゴツンゴツンッ!!といい音を立てて二人に拳骨をお見舞いした。 「あ゛いったぁ?!」 「いっでェェ!!し、し〜ろ〜が〜ぬぇ〜!!テメェ何するんだよォォ!!」 「お前達がだらしないからだ。全く、だいたい女性陣も女性陣だ。姉上やイセラがいながら何をやっているのだ……」 「そそそそういう白銀は平気なのかよォ?!」 レヴィンに問い返され、思わずムッとするが―――これでもかと冷静な表情で答えてやる。 「肌の露出が少々多いだけだろう。それを決して良しとは思わないが…さして俺の精神を乱すものではない」 まるで真面目を絵に書いたような様に、シドは驚いて感嘆する。 「白銀…鉄面皮だな……」 「いや、絶対ェ建前だぜアレ。そんなこと言ってクロエにだけはちゃっかり鼻の下伸ばして……あ゛いっでェ!!!」 ごっつん!!と先程よりも五割増しの拳骨を食らわせて黙らせる。 クロエの水着姿が可愛いことは否定しないが、別に鼻の下を伸ばしてなど―――いや、ここで自分まで流される訳にはいかない。 「いいから本題に入るぞ。―――姉上。少々いいだろうか」 「あら、なぁに白銀?」 「し、しろがねさま……たす、たす、たすけ…っ、僕もう駄目でっ…」 「………」 振り向いた刀祢が、スク水姿のまま六合をぎゅうぎゅう胸に押しつけて可愛がっていたので――いないと思っていたらまさかそんな所に――白銀は唖然とした。 ついこの間、刀祢本人に『六合と交際を始めた』とカミングアウトされたのは記憶に新しい……が、ますます六合可愛がりっぷりがパワーアップ(単にイチャついてるともいう)のはいただけない。元々、そういう恋愛絡 みを大っぴらに出されるのは苦手な方なので、進んで介入したくはない。 「……いえ、やはりなんでもありません」 「し、白銀さまぁぁ?!」 六合の泣き声が聞こえてきたが、申し訳ないがここは彼自身に頑張って貰おう…。 刀祢を介して頼むつもりだったが、この際仕方がない。白銀は腹を据えて、サラとイセラの方に歩み寄った。 「……ゴホン。少々言いにくいのだが、二人に折り入って頼みがある」 「えぇ?なぁーにぃー?」 「白銀クンが私たちに頼みごとなんて初めてだね。どうしたんだい?」 「実は……」 レヴィンを横目で見つめつつ、白銀はフッと不敵に微笑む。 自分を助けてくれた恩を返すにはまだ足りないだろうが―――良い機会だ。 敢えて彼の言葉を借りて言うならば。ここはひとつ、“ダチ”の恋路を応援するために、一肌脱いでやろうではないか。 >>後編に続く ブラウザバックでお戻り下さい。 |