刀祢の話が一区切りつき、皆は重苦しく息をついた。 落ち着かないのか、それぞれが立ったり、座ったりを繰り返している。とくにアイリスが忙しなくそうしていると、その度にユーリも一緒にてこてこと後ろをついていく。きっと、この空気感が居た堪れないに違いなかった。アイリスだって一見冷静を保っているが、本当はかなり我慢している。幼い二人に、姉弟とクロエの血生臭い過去は荷が重すぎた。
「……その時に助けた少女が、クロエってこと?」
アイリスがふと口を開く。その言葉に、刀祢は深く頷く。
「白銀クンの顔の傷と、クロエの左目の傷は、その時に出来たのね……」
「その通りよ」
「……ちょっと待ってくれないか。今の話だと、何故君たちが頑なに秘密にする理由が分からない」
「傷ができた理由とかぁ、その変な魔物のこととかぁ、普通は本人に教えてあげた方が安心するよねぇ〜?でもぉ、クロエは何も知らないっぽいしぃ〜?」
イセラとサラの鋭い意見に、皆、確かに…と相槌を打つ。
確かクロエは、傷について触れられるたびに、分からない、と言っていた。そしてすぐに頭痛に襲われて保健室に行く。逆に、白銀の顔の傷について聞かれても同様の反応をした。その場合は体調が悪くなることはなかったが、本当に何も知らない様子だった。
「なんで教えねェんだよ。ワケ分かんねェまま毎回頭痛くなるってさ、気持ち悪くねェ?それこそ余計に逆効果だろ?」
「……秘密にしなきゃいけない、理由があるの」
急に、刀祢と白銀の表情が暗くなる。レヴィンは意味深な二人を見つめながら、がりがりと頭を掻く。
「ここまできたら最後まで話してくれよ。全部知りたいんだ、ダチとして」
間を開けて、刀祢がゆっくりと顔を上げる。白銀は、咄嗟に姉の肩を掴んだ。最後の躊躇いだった。刀祢は優しく微笑んで、大丈夫よ、と囁きかけてやる。
それから、そっと口を開いた。
「……続けましょう。うちにクロエを運び込んだあとのことだけど……」





SCHOOL IS OVER 後編





あれから三日経った日の朝、少女が目覚めたという知らせが入った。
白銀は傷の治療中で、顔に包帯を巻かれて安静にさせられていたが、そうと聞いては黙って寝ていられなくなった。部屋を抜け出し、姉と共に少女のいる寝室へと急ぐ。
礼儀作法も忘れ、バン、と勢いよく障子を開けて入っていく。すると、布団に包まれたまま上体を起こしている少女と目が合った。
ぱちくり、と目を瞬かせる少女の左目に、縦一文字の傷痕が残っている。もともと黒かった瞳は赤色になっていた。東方ではあまり聞き慣れない言葉だったが、これはオッドアイというものらしい。同席した抱え医がそう教えてくれた。
「きっとあの魔物の光線のせいだわ。なんて酷い…」
「………」
白銀は、驚いた顔のまま固まっている少女の傍に座り込むと、優しく微笑みかけてやる。
「俺は白銀。……君は?」
「……しろが、ね?」
「そう、俺の名前は白銀。君の名前はなんと言うんだ?」
「……えっと…」
少女は、そこで言葉を切ったまま動かなくなった。
流石に様子がおかしいと気づき、姉弟が揃って少女に詰め寄る。
「何か覚えていることはあるか?」
「………」
「もしかして、何も……分からないの?」
「………うん」
姉弟に衝撃が走る。少女は、記憶を失っていたのだ。
名前も、生いたちも、ここが東方であることも、三日前にあの魔物に襲われたことも、一切覚えていなかった。
なんてこと、と悲嘆に暮れる姉を支えながら、白銀は考え込む。それから唐突に席を立つと、刀祢を廊下に無理やり連れ出した。
「ちょ、ちょっと、白銀ったら、いきなりどうしたの?」
「お願いがあります。父上と母上に一緒に頼んでくれませんか。……俺はもう一度あの山林に行く」
「はあっ?!あなた何言ってるの?!」
「危険なのは承知です。……でも、このままあの子を放っておけません。名前も分からないなんて残酷すぎます。あの魔物から走って逃げてきたなら、そう遠くない所に住居を構えていたはずです。そこに何か、あの子の手掛かりがあるかも……」
「………ったく、仕方ないわね」
渋々ながら、刀祢は頷いた。






その次の日、陽が昇ってすぐの早朝の時刻を見計らって、姉弟は山林へ向かった。
父は、病床に伏せって長らく療養中のため、出歩くことはできない。そのため、母が二人に付き添ってくれた。
家庭に入ったと言っても、母はもともと腕の立つ剣士で、一族の現当主の妹君にあたる。その強さは確かであり、万が一あの魔物が出てきても大丈夫なはずだ。
数刻かけて、ようやく四日前の現場に辿り着く。まだ凄惨な血の跡が残っていた。
それを見たせいか、白銀の顔の傷が疼きだす。母が気付いて、落ち付かせようと優しく頭を撫でてくれる。複雑な気持ちでその場を後にし、三人は更に奥へと進む。
しばらく歩いて行くと、急に山林が開けた。ここまで来ると、もう私有地を抜けただろう。そう深くない崖下に大きな川が広がっている。
「知らなかった…。私たちの土地の後ろにこんなところがあるだなんて…」
刀祢がその景色に見惚れながら言う。三人のいる上の方にまでせせらぎが聞こえてきた。
「母上、姉上!あれを見てください…!」
白銀が崖下を指さす。すると、川の近くの盛り上がった丘の上に、一件の家が建っていた。
よく見ると、ここからあそこの家に行けるようになだらかな坂が出来ていた。家の者が作ったのだろうか。
三人は坂を下り、近くまで来ると、そこでようやく家の異常な様子に気付いた。
「何、これ…!酷いわ…!」
屋根に、不自然なくらいの大きさの穴が空いていた。壁もぼろぼろに焼き焦げていて、窓は全て割れている。意図的に破壊された跡だ。
反射的に、姉弟の母は、腰に下げた武器を構える。扉はかろうじて開けられるようだった。内部を覗き込みながら二人に振り向く。
「刀祢、白銀。あなたたちはここにいて。私が中を見てきます」
「いいえ!俺たちも行きます!」
「お願い母上、行かせてください!」
「……もう。仕方ないわね」
ふたりが勇敢すぎる精神を持っていることは、母が一番よく分かっていた。母を先頭にして、三人は家の中へ入っていく。予想していたが、中も激しく壊されていてめちゃくちゃだった。雨漏りしたのか、至るところに水たまりができている。
長い廊下を抜けて、その奥にあった扉を開く。卓と三つの椅子が目に入った。奥にはキッチンもある。恐らくここはリビングなのだろう。
「……二人とも、気をつけて…」
「うん…」
不意に、びしゃ、と白銀の足元で水たまりが跳ねた。
咄嗟に下を向くと、それは水ではなかった。本能的にそれが溢れているもとを目で辿る。そして行き着いた先で見たものに、白銀は我が目を疑った。
「母、上…、姉う…え……!」
がくがく、と白銀の体が震えだす。目に入った光景に全身が総毛立つ。
白銀の声に気付いて二人が振り向くと、同じように驚愕して後ずさった。

赤い、紅い、血の、海。
その、中に、浮かぶ、のは………ふたつの死体が、食い散らかされた、跡。

「人が……っ、食われてる………っっっ!!!!」
「いやぁぁぁぁっ!!んぐ、っ、う、ぇっ…、うえぇぇぇっっ!!!」
「刀祢っ!!」
凄惨な死体を目の当たりにしたショックで、刀祢がその場で嘔吐してしまう。
うずくまる娘を母が必死で支え、慌てて部屋の外へ連れ出して行く。
「白銀、あなたも出るのよ!!」
「……は、い…」
「あとは私が調べるから、あなたたちは今すぐ外へ出るの!さ、早く!!」
姉弟を家の外へ向かわせると、母は布で口を覆いながら、血塗れのその部屋を見て回る。
死体は中年代の男女のようだった。この家に住んでいた夫婦だろうか。まだそんなに腐敗は進んでいない……死後三、四日というところだろう。あの少女を助けた日にちょうど重なる。
二つとも内蔵を食い散らかされ、顔は爪で切り刻まれている。かろうじて耳が尖っているのだけは確認できた。この男女は自分たちと同じ、悪魔だ。
(悪魔を食う、魔物……?)
姉弟から聞いた話だと、少女を襲っていたのは異形の魔物だったという。
ふつう魔物は、魔物同士はもちろん悪魔とも戦闘することはあるが、それはあくまで縄張り争いや侵入者を排除するために過ぎない。捕食するという話など聞いたことがない。
この想像が間違っていないなら、その魔物は、悪魔を食うことで相手の魔力を取り込んでいるのかもしれない。それゆえ異形になったと考えられる。
(気配がしないから、もうこの辺にはいないようね。きっとまた何処かへ獲物を探しに行ったんだわ…。でも、万が一を考えて、早く兄上と夫に報告しないと……あら?)
不意に、キャビネットの上の写真立てが目に入る。
家のあらゆる家具はぼろぼろに壊されていたが、唯一、それだけは無事のようだった。
「これは……」
家族の写真。真ん中にいるのは、姉弟が助けたあの少女。じゃあ、左右にいる男女はこの子の―――
写真の右下には、手書きでこう書かれている。

『私たちの愛しい娘 クロエ』――――






「……そして、私たちは記憶喪失の少女にクロエという名前を与え、家族として迎え入れることにしたの」
皆、無言で立ち尽くす。何を言えばいいのか分からなかった。
今までずっと沈黙を保っていた白銀だったが、す、と懐から何かを取り出して話し始めた。
「これが……その写真だ。俺が母上から頂いてずっと持っている。これもクロエには教えていない」
「それも、かよ……」
「仕方ないんだ…、これも、見せれば記憶を取り戻してしまうかもしれなかった……」
白銀は、早々に写真を懐に仕舞いこむ。
クロエに両親が食われたという記憶を思い出させるわけにはいかない。そのために、姉弟は徹底して関わる秘密を守り、物証も全て隠蔽してきた。
「……クロエだって自分の過去が気にならないわけがない。俺たちが頑として話さないから聞くのを止めたんだ。クロエの不安を払拭させるためには、俺達が血は繋がらずとも家族であるという証を与えてやらねばならなかった」
立ち上がり、ごくゆっくりとした動作で、眠るクロエの傍へ行く。すっかり血色の悪くなっている頬を撫で、枯れかけの涙を拭ってやる。
「だから俺は、クロエのためなら何でもしてやると決めたんだ…。最初はそんな正義感だけだったが…いつの間にか俺は……」
クロエを、愛した。
先に続くであろうその言葉を、皆は聞かずとも感じ取った。白銀の表情が、あまりにも切なく揺らいで、それを現していたから。
不意に、刀祢がそっと弟の背中に寄り添っていく。
「白銀。あなたはいっぱい我慢してきたわ。その傷で苦労してきたのはあなたも一緒。もう、これ以上苦しまないで……」
姉の慈しみ溢れる言葉に、白銀はぐっときつく目を伏せた。
そこで、おずおずとアイリスが手を上げる。
「刀祢さん。白銀クンも、ってどういうこと?」
「ああ……これはうちの話になるんだけど。白銀は私たち一族の後継ぎの本命なの。でも納得のいかない関係者じゅうが、後継ぎの顔が傷だらけなんて縁起が悪い、って悪態つけてきてね」
「えぇ…?!」
びっくりして思わず口元を覆う。
皆も驚きを隠せなかった。今の話からは、そんな跡取りをめぐった生々しいいさかいがあったなんて全く感じ取れなかった。
「ちょっと待ってよぅ。なんで白銀くんが本命なのぅ?刀祢ちゃんのがお姉さんなのにおかしくなぁい?」
「サラ、普通はそーゆーのって男性が継ぐものなの。別におかしくないわ」
「で、でもぉ。一族ってことは他にもイトコとかがいるってことじゃなぁい?」
「それは……、あー、もー、こんがらがるわね!ただでさえ情報少ないんだから分かんないわよ!」
サラとアイリスが言い合っていると、刀祢がすかさず間に入る。
「ややこしくてごめんなさい。うちは候補が……ええっと全部で四人なんだけど、みんな似たような時期に生まれてね。しかも私と白銀は双子だし、一概に決められなかったの。そこで父上たちは相談した末に、一番意欲と実力がある子に継がせると決めたのよ」
その取り決めでいくと、確かに一番の有力候補は白銀ということになる。
他の二人の候補がどれほどの実力者かは分からないが、皆はこれまで、白銀の強さと誇りの高さを見てきたから。家族なら尚更、それに相違はなかったのだろう。
しかし、一族が納得しようと周りはそうはいかない。あくまで取り決めに則り、生まれの早い男児に継いで欲しかったはず。そのため、白銀の顔の傷が格好の攻撃の的になったということだ。
「お前、なんで何も話してくれなかったんだよ…。まさか、これもクロエは知らねェのか。記憶には全然関係ない話なのによ」
レヴィンが、悲痛な顔でこちらを見つめてくる。
彼だけじゃない、アイリスもサラも、イセラもユーリもフローレンスも。みんなそういう目で白銀を見ていた。
「……お前たちに言えば自ずとクロエに伝わる。クロエに知られれば無用な心配をかける。そうなるのが一番怖かった」
「俺達のこと信用してなかったってのか?!」
「違う。お前たちのことは信じている。しかし、この学校の規模は大きすぎる、どこからか漏れる可能性が拭えない。クロエに必ず知られないと言いきれるのか?」
う、とレヴィンは言葉に詰まる。正論だった。こう言われてしまっては納得せざるを得ない。
そっと、白銀は自分の頬の傷に触れた。憎らしい、あの魔物につけられた痕。
「それに、俺の痛みなどクロエに比べれば大したことじゃない。クロエの左目は俗に言うアルビノだ。そのせいでほとんどものが見えていない」
そう言えば、とアイリスとサラが顔を見合わせる。クロエは授業中、必ずノートを白銀に写させてもらっていた。ずっと疑問に思っていたが、自分でそれができないのは、左目の弱視のせいだったのだ。他にも、ありとあらゆるところで不便があったに違いない。そんなこと少しも歯に衣着せていなかったのに。
「そうだ…。どんなに辛くてもクロエは笑うんだ、ひたむきに…。そんなクロエの笑顔を俺は愛した…。クロエが笑ってさえいてくれれば、俺は何もかも耐えられるんだ…」
クロエを想う白銀の表情は、どこまでも優しい。揺るぎない愛情に溢れている。
「だから、俺は…っ!」
ぎりり、と歯を食いしばる。憂いが、あっという間に消え失せる。
「俺は!!クロエの笑顔を奪う奴を絶対に許さない!!あいつは俺が、この俺が必ず殺してやるっっ!!!」
白銀の端正な顔が、激しい憎悪でひどく歪む。凄まじく膨大な殺意。あまりの迫力に圧され、皆の背筋に悪寒が走る。
恐怖のあまり、アイリスの背中に隠れていたユーリがぶわっと泣き出した。サラも腰が抜けてしまったのか、イセラの腕に掴まってかろうじて立っている状態だ。
白銀の、クロエへの愛情の裏に潜んでいた彼のもうひとつの顔。皆、それを垣間見てしまった衝撃が隠せない。
「だからお前は、あんなに…強さを求めてたのか……」
レヴィンが、毎朝の手合いで数を重ねるたびに感じていた白銀の焦燥。ようやく納得がいった。全ては、あの影を抹殺するためのものだったのだ。
慌てて、刀祢と六合が白銀の傍に寄り添う。
「白銀、落ち付いて!」
「いけません、白銀さま……。今、御髪を整えます」
刀祢と、六合が、必死で昂る白銀を落ち着かせようとしてくれる。東方からずっと共にいる理解者。彼らがいなければ、きっとこの狂おしい殺意にとっくの昔に呑み込まれていた。白銀は深呼吸をし、こもる力を徐々に抜いて行く。
「……白銀」
「もう…平気です」
「ねえ、白銀……復讐だなんて考えないで。あなたがこれ以上何かを抱えるところを見るのは、私……」
刀祢が、涙ながらに訴える。姉が自分を思ってくれているのは痛いほど分かっている。しかし俺は、と白銀は口惜しさで唇を噛み締める。
「姉上……ならば俺はこれからどうすればよいのですか?このままではいつクロエが記憶を思い出してしまうか分からない。クロエは実の両親が喰われるのを目の前で見ていた、その心の傷を乗り越えろと言うのか?!そんなのは絶対にやらせない!!あいつを殺す以外に、クロエの苦しみを取り除く術は俺には考えつかないっ!!!」
「白銀…っ!」
しがみついてくる姉の腕を、乱暴に振り払った。
白銀の憎む魔物の影が、姉弟の絆にまで亀裂を入れさせようとしている。咄嗟に、レヴィンが二人の間に割って入って仲裁する。
「二人とも落ち着けよ!大体、どうやってその魔物を討つつもりだ?もう東方にもいないんだろ?居場所が分からねェんじゃとても……」
「ボクなら知ってるよ」
急に、扉の方から声が聞こえてきた。 皆が慌てて振り向くと、そこにはいつの間に入ってきたのか、我らがクラスの謎の天才少女・ルーが笑顔で立っていた。
「ルーちゃん?!!」
「ヤー、みんなご無沙汰だねぇ。寝坊して行ったら凶室が封鎖されててびっくりしたよぉ。」
からからと笑いながら、ルーはこちらの方に歩いてくる。相変わらず趣味の悪いお面を手に持っていた。ひっ、とフローレンスがそれが近づいた瞬間に思わずおのめく。
「そ、そ、それよりも……知ってる、ってどういうこと?!」
動揺しながらも、アイリスが意を決して問いかける。皆それが気になっていた。ルーは「だからぁ」と強い抑揚で話し始める。
「悪魔喰いの魔物のことでしょ?さっきから言い合ってるのが外に丸聞こえだったからさぁー。部外者なのは分かってるけど、困ってる人見つけるとつい教えたくなっちゃって。」
確かに、正直なところ、皆はそんなに彼女と話したことがない。それはルーの天才ゆえ?の変人っぷりが大きな要因なのだが、それがこんなところで思わぬ助け舟になるのなら、頼らない理由はない。
「流石、天才辞典だなァ」
「なんか某テレビ番組みたいに言わないでほしいなぁー。教えてあげないよー?」
「た、頼む、教えてくれ…!俺は一刻も早くそいつを討たなければならないんだ…っ!!」
「うん、おっけー」
白銀が必死に頼み込むと、それであっさりと機嫌を良くしたのか、ルーはニカッと微笑んで頷いた。
「……って言っても、居場所は具体的に分からないんだよね。そいつ、常に捕食対象の強い悪魔を探して彷徨ってるからさぁ」
「おい!なんでも知ってるんじゃないのかよっ!」
「流石のボクでもそんなピンポイントでGPS機能内蔵してるわけじゃないからねー。でも大丈夫。他にもっと手っ取り早い方法があるから」
「それは…なんだ?」
恐る恐る、白銀は問いかける。
ルーは、何処からともなく分厚いアヤシゲな書物を取り出すと、おもむろに皆の目の前に翳してみせた。
「召喚魔法だよ。ボクがそいつを呼び出してあげる」
「本当か…?!あいつを呼べるのかっ?!」
白銀は激しい気の昂りを隠せない。当然だ。ずっと行方も知れず憎み続けてきた敵と、ついにあいまみえる機会に恵まれたのだから。
「っつーか、呪術師のくせに召喚士の素質もあるのかよ。半端ねェなお前」
「もっちろん。だってボク、なんでもできるからー。」
からから、と無邪気にルーは笑う。天才って本当に頼り甲斐があるというか、末恐ろしいというか。
「で、その召喚の儀式だけどね、ちょっとばかり時間と材料がいるんだよねー。」
「俺にできることなら何でもするっ!」
全く躊躇することなく、白銀は速攻で頼み込む。ルーは流石にこれには驚いたのか、本当にいいの?キツいよ?と聞き返してきたが、白銀の決意は変わらなかった。
「……了ー解。じゃ、今から言うもの、ちゃんと集めてきてね?」
ごく、と白銀は生唾を飲み込む。
かたかたと体が震え出した。咄嗟に両肩を抱き締める。
怖いからではなかった。小さな笑い声のような吐息が漏れ、無意識に口角が上がる。
ああ、自分はいま一番嬉しくて仕方がないのだ。

長年、愛しい少女を苦しめてきたあの魔物に、ついに俺は辿り着ける―――










あとがき。
侍×盗賊小説でした。といいつつ、今回は過去の話が中心なのでそんなにカプ要素出てません。
スクールイズオーバー。直訳で、学校が終わったあと。終わったというか強制終了したというか…笑。
ずっと心の中にため込んでいたクロエの過去。白銀の秘密。ようやくこうして形にすることができました。伏線を一気にどばーっと回収、大変でした…。おかげで相変わらずとりとめなく長くなってしまって、、前後編です、、すみません……。
ルーちゃん、思わぬかたちで大活躍(笑)。そして刀祢の台詞で出てきた後継ぎの話。あとふたりの後継者候補、それは『FIRST OUR SCHOOL』とディス2キャラ設定を見た方にはすぐ分かると思います(笑)。チラッと出てきた刀祢・白銀姉弟のお母さんも、ここだけの話、また違う次元で出てくる予定ですよ〜。
それでは、ここまで読んで頂き有難うございました。次回作にてまたお会い致しましょう。



ブラウザバックでお戻り下さい。

2style.net