「えっと……みんなにお伝えしたいことがあります」
ホルルト村の、アデルの家の前に突然集められたメイキング仲間達。彼らを集めた張本人、アーチャーのローラは、いきなりそんな風に切り出した。
「伝えたいこと?それってなんだ?」
戦士のルーウェンがそうローラに言うと、ローラは両手で頬を覆い、ポッと頬を淡く染めながら、やや躊躇いがちに返答した。
「ええ、私情なんですけど…でも、私にとってはとっても重要で大切なことなんです!」
「ローラが私情の話とはなあ…、珍しいな」
ルーウェンのすぐ隣に立っていた侍の閃光が、思わずぼそりとそう呟いた。
そう、ローラといえば、いつも明るくハキハキとしていて、その持ち前の明るさで、皆の悩み事などをよく聞く娘…という印象が強い。そんな彼女の私情の話などを聞くのは、正直初めてかもしれないと思うくらいだ。
思わず呟いてしまった閃光も、あのマイペース娘のおかげで何度も相談をしていたりするが、こんなことは初めてだった。
疑問と期待に胸を膨らませる皆に、とうとう、ローラは色めいた声色で告白した。



「実はわたし………好きな人ができちゃったんですv」



思わず皆、目を点にして、あんぐりと口を開けたままカチーンと凍りついた。





Prohibition☆shock!!





「はああああああ―――――ッ?!!ろ、ローラに好きな人ぉぉぉぉぉぉぉぉ?!!!!」
思わず、驚きを隠せない皆の雄叫びが広場の隅々にまで響く。この叫びはルーウェンのものであるが、他の皆も似たような事を叫んだため、ほぼ皆の聞き返したことは同じに近い。
「ほ、ほんとなのっローラ!あたし全然そんなの聞いてないよー!」
「ごめんねシャルル…わたしも最近やっと気付いたの。この胸を締め付けるようなドキドキする気持ちの正体に…!」
ローラと歳が近く、普段から仲の良い盗賊シャルルでさえも、この事実は知らなかったようで。思わず詰め寄るシャルルに、ローラは目を伏せながら、まるで詩人のようにうっとりと語った。
「で、で……そそそ、それって誰なの?」
「えーっ、それ言わなきゃダメかなあ…?」
「当たり前じゃんっ!ローラとあたしの仲じゃない、ねえ!」
ナイス、シャルル。皆はシャルルのローラへの問いに、思わず心の中でそうグッジョブのポーズを取った。
『好きな人ができた』だなんて事を伝えられれば、当然そこ、つまり意中の相手が誰なのかという所が一番気になるところである。ここまで大胆告白をしておいて、肝心の所を教えて貰えないだなんて言われたら、勿体ぶるのもいいとこである。
勿論その真相に興味があるのはシャルルだけではない。ローラと同じく他のメイキング女性である、僧侶のクローディアや魔法剣士のユリエ、女忍者のイライザなどは勿論のこと、男性陣メンバーまでもがローラに事の真相を確かめようと詰め寄った。
「ど、どうなのローラっ?」
「私も知りたいなあ…」
「ちょっ、俺にも教えろローラ!」
「同じ師を持つ仲間としてそこの所把握しておきたいものだな」
答えを教えてくれと主張する皆に、ローラは少し時間をおき、それから楽しそうににんまりと笑む。
「ふっふふーv誰だと思う?」
小悪魔っぽく焦らされて、思わず皆はがくっと肩を落とした。
それでも少しでも答えに近づこうと、各々が予想を始める。
まずユリエが、指を順番に折りながら候補の数を、つまり男性陣メンバーの名前を挙げていく。
「えっと…ルーウェンでしょ、閃光、ウィル、ヴァジー、スメタナ、若狭、カロン、と……こんなものかしら?」
「閃光は有り得ないだろ。こいつはシャルルしか眼中にねえし」
「るっルーウェンッ!!」
真っ先に候補から外された閃光が、特定の名を出されて、ボッと一気に真っ赤になった。ルーウェンのまるで予想通りの反応だったようで、ルーウェンはニヤニヤと笑っている。
時既遅いというのに、ルーウェンの口を慌てて塞ぐ姿は、皆にはもはや照れ隠しにしか見えなかった。
口を塞ぐ閃光の手のひらを除けて、ルーウェンはにんまりと意地悪そうな笑みで閃光を見据えた。
「いやー面白えなーお前の反応」
「ハッ…!、お前こそ、クローディアにお熱だから論外だなあ?」
「なななっ?!べっ別に俺は…!!」
「そっそーよっ!!大体なんでそこに私の名前が出てくるのよッッ?!こ、こんな野蛮人と一緒にしないでよね!!」
「だ、誰が野蛮人だぁ?!」
同時に真っ赤になって、必死で声を荒げて否定するルーウェンとクローディア。それみたことかと逆襲に成功した閃光が、クックッと楽しげに笑んでいる。閃光の思惑通り、案の定ご両人は喧嘩を始めてしまい、ギャーギャーと騒がしく喚き立てる声が聞こえてきた。
「え、えと……次いっていい?」
「うん、いいよー」
背後の三人を無視して、再びユリエ司会(?)のもと皆は次の予想を立て始めた。
「じゃ、次、ウィルだけど…」
「師匠も×ー!ディオナがいるしー♪」
「ちょっシャルルっ何言ってんだよぉっ?!ボボボボ僕はこんな奴のことなんか大嫌いなんあだっ!!」
「ポコンポコン♪」
「お、お前ッ!!話がよく分かってない癖に勝手に騒ぐんじゃな―――い!!」
名前を呼ばれたことに反応して、能天気に両手を振って飛び跳ねるディオナの手に頭を叩かれて、ウィルはそう激怒する。が、相変わらずその怒号は何の効果もないようで、ウィルはやはりいつものように一方的な説教をかます破目となった。
「で、ヴァジーは…」
「ヴァジーはイライザがいるよねえ?」
「にん。良い相棒でござるよ」
うんうんと頷きながら、そう肯定したヴァジーに、なんか違うんだよなーとシャルルは首をしかめる。
「もー、ヴァジーったら、そんなんじゃなくてさあ…相棒以外であるじゃない?」
「にん…?これ以外とは一体…」
「し、シャルル殿!!ヴァ、ヴァジー殿お気になされるなっ!なななんでもないでござる!!」
ばばっと突然いつもの冷静さを失ったイライザが咄嗟にそう誤魔化した。まだ疑問が残るのか、いまいちよく理解していない表情をして、にん…?と困惑するヴァジーに、イライザが必死でなんでもないと説得を開始している。
「あれれ…ヴァジーって鈍感なのかな…?」
「みたいだねぇー。ユリエ、つぎつぎー」
「あ、うん。後は、スメタナと若狭とカロンの三人だけど…」
その三人の名を聞いて、うーん、とシャルルは悩ましげに呻いた。
「若とカロンはないと思うなあ…」
「た、確かに…」
思わずユリエが肯定してしまうのも無理はない。何せ若狭は基本的にいつも単独で、誰かと行動を共にするところなど滅多に見ない。ローラの片思いならまだ分かる気がするが、同じ女性のカンとでもいうのだろうか、なんとなくその可能性は低いような気がした。
更にカロンは、このメイキング達の中では、師のアデルすら超えるとも言われる最強最悪の魔人。恐ろしいオーラと威厳に、あまりにも近寄りがた過ぎて、恋愛に発展するのは皆無に思えた。
「じゃあ、後はスメタナだけど…」
「うーん、それは…」
二人は同時に頬杖をついて考えて、一息ふーっと息を吐く。
「「………ないねぇ(作曲者だし)」」
シャルルとユリエのナイスマッチな否定の言葉に、それを聞いたスメタナ張本人が、影で一人密かに目元に涙を溜めていたのは誰も知る由もない。
と、そこまで考えたところで、二人はハッと大変な事態に気が付いた。
「えっ、えーっ?!もしかして誰も候補にならない?!」
「ほ、本命も大穴もつけられないだなんて…い、一体ローラが好きな人って誰なの…?」
消去法で消していってしまうと、どうしても答えを絞り込めない。かといって僅かな可能性に賭けるには、決定打もないせいもあって、誰にも可能性がありすぎて今度は全く分からない。
漸くそれぞれ喧嘩を止めたり、説得を終了したりして戻ってきた皆と再び考え直してみても、どうしてもその答えはまとまらず、結局皆は白旗を挙げた。
「だ、駄目だ、降参!」
「ローラ、結局誰なの…?!」
予想だけで疲れ果てて、ぐったりとしている皆の様子を、始終端っこで楽しそうに見ていたローラが、ふふっと一度微笑んで、とうとう皆に切り出した。
「もう、皆ダメねえ。私が好きな人は、もっともっと素敵な人よ!」
「分からねーよ…素敵な人って誰だよオイ」
相変わらずさっぱりな様子の皆を尻目に、ローラは両手を目の前で組み合わせ、半分自分の世界に浸りながら、うっとりと語りだす。
「そう………私の好きな人は……とっても格好良くて、麗しくて、逞しくて、私が唯一心の底から尊敬出来る……」
ごくり、と皆は息を呑み込んだ。



「私の麗しいお姉様、マーシェルさんで――――すっっっ!!!!!」



ガックーン。
思わず、一斉に皆は足の力がぬけてその場に倒れるように座り込んだ。
「おおおおおおい、ローラ…マーシェルって……お、おまえら女同士だよな…?」
「そうよ!だけどもうこの気持ちに性別なんか関係ないわ!わたしがこんなに尊敬できる相手はマーシェルさんしか有り得ないもの!わたし、一生マーシェルさんについていきま―――す!!!」
あ、あの必死の討論はなんだったのか。答えはまさに大穴の大穴、まさかの同姓である、魔獣使いマーシェル。
確かにルーウェンや閃光などの前衛に負けず劣らず、魔物達を引き連れ、主力の一人として、槍を振るい勇敢に戦う様は、尊敬の域に達するものがあるが。
こんな答えなど予想だにしていなかった皆は、呆れと驚愕ですっかり脱力して、立つ事が出来ないでいた。
と、そんな皆のところに、能天気な顔をして何も知らないマーシェルがスタスタと歩いてきた。
「おーい、みんなー!みんなして座り込んで何してるんだー?縄張り争いかー?」
「な、縄張りって違…じゃなくて!ま、マーシェル逃げろ!逃げた方がいい!いや逃げて、マジで!!」
「マ―――シェっルさぁ――――んっっっwww」
これでもかと回りにハートマークを乱舞させて、ホップステップジャンプのテンポで、ローラは満面の笑顔でマーシェルに近づいていった。
ルーウェンが必死で次げたマーシェルへの警告も虚しく、ローラはがばりとマーシェルの腕に自分の両腕を絡めてくっ付き、すりすりとほお擦りをする。
哀しきかな、マーシェルにとってはこれは魔物とのスキンシップと似たようなモノらしい。いきなりのローラのハグにも、全く警戒心など抱いておらず、寧ろ魔物達にしてやっているように、よしよしとローラの頭を優しく撫でてやっている始末だ。
がばり、と一度ローラはほお擦りを止めてマーシェルを見上げると、ハキハキした声で大きく叫ぶように言った。
「マーシェルさん!わたし、マーシェルさんにお願いがあります!」
「ん?なんだ?」
すうっ、と勢いよくローラは息を吸い、胸いっぱいの想いを吐き出さん如く熱く叫んだ。



「マーシェルさん、わたしの『お姉様』になって下さ――――――い!!!!」



先程の優しい撫で撫でのせいなのか、はたまた勢いに任せたのか。ローラは公衆の面前(皆の目の前)で、いきなりマーシェルにそんな大胆告白を試みる。
お、おい、それはやばいんじゃないかローラ、と思わず皆が心の中で呟く。
しかし、突然こんな無理な要望には、流石のマーシェルでも応えたりはしまい。皆そんな風に思い、ふうっと安堵の息をついたのだが…。
「いいぞー」
「「「「「いいの?!!!」」」」」
思わずそこにいた全員が声を合わせて突っ込んでしまった。
「マーシェルさん、有難うございます!わたしとっても感激ですっ…!!vv」
「あはははは。今日からローラはあたいの妹だなー、よーしよし」
嬉しさで思わずマーシェルに抱きつくローラに、これまたマーシェルは魔物を手懐けるような手つきで、なでなでを頭を撫でてやる。
そんな二人のある意味微笑ましい(?)光景を、皆は愕然として見ていた。
多分マーシェルは、ローラのあの要望が『お姉様になって下さい』=『付き合って下さい』だなんて思ってもおらず、『お姉様』=『家族のように仲良くして下さい』程度のストレートな受け取り方だったのだろう。
いつの間にか、度を越えた超絶暴走特急ミーハー少女になってしまったローラに突っ込めばいいのか、鈍感で何も知らないままOKしてしまったマーシェルに突っ込めばいいのか、もうみんなにはどうすればいいのかもう全く分からなかった。




「こ、こんなのってアリなのか…?」
「で、でもまあ…二人は(マーシェルは分かってないみたいだけど)一応円満っぽさげだし…」
ルーウェンとクローディアが、先程の喧嘩など記憶の彼方のように、困惑しながらそう言い合って。
「良かったね、ローラ!」
「………もう…勝手にしてくれ…」
一人能天気に、友達の想いの成就(?)を喜ぶシャルル。恐らくこいつもマーシェル並の鈍感だ。
そんなシャルルを、あの関係について何も言うなと、半ば無理矢理退場させるように引き摺りながら、閃光は思わず、青ざめた顔色をしてそんな呟きを洩らした。




本日も、ホルルト村は晴天なり。
新しき一組の新カップル(?)の誕生に、苦悩に満ちた声が暫く彼処で響いていた。










あとがき。
皆様の予想を裏切る超絶カップル(爆)アチャ×魔獣使いと言うとんだ小説を書いてしまいました。
いや…、もうなんか、ここ一応ノーマルオンリーサイトなんですけどね。百合に手出して何やってんだろうというか…最近何故か百合に目覚めてしまいまして…いやはや。もはやノーマルオンリーだなんて肩書きが使えません(爆死)
超絶ミーハーアーチャーと鈍感魔獣使いという至上稀に見るコンビ(一応訂正!)ですが応援してやって下さったら幸いです!無理を承知で!(去ね
それでは、ここまで読んでくださって有難うございました〜。



ブラウザバックでお戻り下さい。

2style.net