<前回のあらすじ>
ダロス大河での一件で、スメタナが自分とのファーストキスを覚えていないことを知ってしまったイヴ!
思わず全力で銃を投げつけ、作曲者を一発K.O.させた後、ホルルト村へと独走し、仲間のメイキング女性陣たちにぼろぼろと涙を流しながら縋りつくイヴ……!
さぁ、傷付き篭ってしまったイヴを、作曲者はどうするのか?!果たして二人は無事に結ばれるのか?!長きに渡り紡がれ続けた二人の恋心に、今、終結の音符(ノート)が描かれ―――



「エトナさん、あらすじはもういいですから本編に行きましょうか?」
「え〜、まだいいじゃないフロンちゃ〜ん。もしかしてもう出番終わり?ったく、つまんないわね〜」





二人ンフォニー





アデルの家の廊下に、不意に、どーんっっ!!という、何かを突き飛ばしたような鈍い音が木霊した。
次いで、どさっ!と硬いフローリングの上に尻餅をついたのは、ガンナーのスメタナこと作曲者だった。目の前には、彼を突き飛ばした張本人たちである、クローディア、ローラ、マーシェル、シャルル、ユリエ、イライザといった、女性陣達が一つのドアの前に立ちはだかっている。
「だ〜め!作曲者、通っちゃだめ〜〜っ!!」
「いって…!な、なんでだよ?!イヴに逢わせろよ!!」
そう、このドアの奥は、スメタナが今逢おうと試みている人物、銀河魔法使いイヴの部屋だ。
しかし、スメタナの要望を頑として受け入れるつもりのない女性陣達。ローラは、ちっちっ、と指を口元の前で左右に振って見せた。
「そりゃ、イヴちゃんを泣かせた張本人を、易々と通してあげるはずがないでしょ?」
「そーだ、通してやらないぞー!」
「泣かせた…って、俺はそんなつもりは……」
確かに、あの時自分に銃を投げつけ逃走したイヴの目元には、涙が浮かんでいたことを、スメタナは薄れ行く記憶の中に覚えている。しかし、『なんで泣かれたか』というと、それはスメタナには全く分からなかったため、それ以上の言葉を紡ぐ事が出来ず、口篭った。
「とぼけたって無駄よ。あなたがイヴちゃんを泣かせたことは紛れもない事実だもの。それに、イヴちゃん自身も『暫く誰にも逢いたくない』って言ってるし。今はそっとしてあげなさい」
「けどよ…俺は…俺は……」
クローディアの強い口調に気圧されながらも、なんとか食って掛かろうとしたスメタナを、ユリエとイライザが制す。
「ごめんね…、それじゃ、そういうことだから」
「お引取り願うでござる」
常識人二人にきっぱりと言い放たれては、もはやぐうの音も出ず。引き下がることを余儀なくされたスメタナは、深い溜息をひとつ吐いてから、分かったと女性陣達に告げると、背を向けてその場から立ち去った。






一方此方は、イヴの部屋の中。電気が全くついておらず、薄暗い部屋の寝台の上に、イヴは小さく縮みこんでいた。
今のスメタナと女性陣の会話の一部始終をドア越しに聞いていたイヴは、愛用の抱き枕をぎゅうっと抱き締めて、それに泣き腫らした顔を埋めた。
(ごめんなさい、スメタナさん…スメタナさんが悪いわけじゃないんです…悪いのは、イヴなのに……)
幾ら彼が自分とキスしたことを覚えてなかったとはいえ、よくよく考えれば、彼はあの時、若狭にシメられ気絶していたのだ。覚えていろという方がおかしいのではないか。よって、それを攻める権利は自分にはないのに、それなのに。
好きな人とキスしたことがあまりにも嬉しすぎたから、それが打ち砕かれたのがあまりにも哀しくて。彼に八つ当たりをした挙句、一方的に彼を拒絶したりなんかして。
(スメタナさん…スメタナさん…ごめんなさい……っ)
彼に酷いことばかりをしてしまった手前、今更、どうやって顔向けすればいいのか分からない。
嗚呼…少女の涙とともに零れる旋律は、さしずめ哀しみの夜想曲(ノクターン)…。彼を想っては、自分の胸を延々と苦しめる…。出口の見つからぬ悪循環に、少女はただただ、涙を流し続けていた……






「……畜生…一体なんだってんだぁ?」
イヴに謝る事も出来ぬまま、強制的に追い出されてしまったスメタナは、行き場のない不満を吐き出しながら、とりあえずいつものお気に入りの草原に座り込んでいた。
「わけわからねぇよ……。一体、俺の何があいつを泣かせちまったんだ……?」
幾ら頭を抱えても、答えは浮かばず……唯一思い当たるとすれば、やはり自分がイヴを助けるためにした人工呼吸だろうか。
そりゃそうだ。年頃の、しかもイヴのような純情無垢な少女のこと。好きでもない男に、例えしょうがなかったこととはいえ、キスなんてされればショックを受けるに決まっている。
「やっぱ…こーゆーことなのかねぇ…」
深い溜息をつき、スメタナは三白眼を細める。酷く胸中に巡る、やるせなさ。イヴの命は救えても、今度はイヴに嫌われてしまうだなんて、自分は一体どうすればよかったんだ。そんなことをぐるぐると考えていると、何故かひどく自分の胸が痛んだ。
スメタナが、今日何度目か知れない溜息を、もう一度吐こうとした瞬間、
「随分と苦悩してるみたいだな、作曲者?」
「どわぁぁぁっ?!!」
突如、誰かに背後から耳元で囁かれ、スメタナは、ずささささぁ!!と思いっきりその場から飛び退いた。
囁かれた耳元を両手で覆い、ぞわぞわとした悪寒に耐えながらよくよく見てみると、その犯人は閃光だった。そしてその後ろには、ルーウェン、若狭、そして弟子のヴァジーもいた。
「っお、お前達……一体俺に何の用だ?」
何分、先程女性陣にえらい扱いをされたこともあり、訝しげにスメタナが問いかけると、予想を反して閃光は至って微笑みながら、ぽん、と肩を叩いてきた。
「なーに、悩める作曲者に、人生経験抱負なこの俺がアドバイスしてやろうと思ってだなぁ」
「いや…閃光だと逆に話がややこしくなりそうだから止めとくわ……」
「それは俺も同感だ」
スメタナとルーウェンが賛同し合うと、閃光は、ギラッ!!と眩い赤光を放つ愛刀・妖刀村正の刃を抜き身し、鋭く二人を睨み上げる。
「あ゛ぁ?……お前ら、今何か言ったか?」
「「なんでもないです!!」」
途端、ぶんぶんぶん!!と息ピッタリで首を左右に振る二人。
「……下らぬ…」
「にん…」
若狭はいかにも呆れた面で溜息をつき、ヴァジーは苦笑して二人を哀れんだ。
「まあ、兎に角。どーせこういうことに鈍い作曲者のことだから、イヴがなんであんなことになってるのかが分からなくて困ってる、ってところだろう?」
刀身をしまいながら、閃光が単刀直入に切り出す。ぎくり、と図星を指されたスメタナは、ただ素直に頷いた。
「……ああ。閃光の言う通りだ」
「だったら、俺たちに正直に話せ。お前が知る限りの、イヴがあんな風になった前後のことを全部だ」
「はぁっ?!ま、マジかよ?!なんでそんなこと話さなきゃ…」
流石にその要求には驚き、拒否しようとしたスメタナの目前に、ギラッ!!と黒い輝きを放つ槍が突きつけられる。
「……今は素直に従った方が貴様のためだと思うが、どうだ?」
「はひ…わわ…分かりました…」
「にん……」
若狭の鋭い黒眼とガイアの槍のあまりの恐ろしさに、スメタナはコクコクと機械のように頷いた。以前、若狭にシメられた経験があるだけに、その恐怖は他の人より五倍増しだろう。ヴァジーは、不幸な師匠を前に、目を伏せて哀れんだ。
「実は、かくかくしかじか………ってことなんだけどよ…」
素直にスメタナは――イヴを修行に誘って行ったその帰りに、イヴが川に落ちてしまい、イヴを助けるために人工呼吸をしたこと、その後イヴに銃を投げられ気絶させられ、今に至ること――を全て余すことなく四人に話した。
「なるほど。そういうことだったのか」
「そりゃ……イヴがあんなことになったのも、納得できるよなぁ」
閃光とルーウェンのその言葉に、ズキン、とスメタナの胸が痛む。
「はは…やっぱり、そうだよな。好きでもない男に、人工呼吸とはいえキスされて、ショック受けないわけないよなぁ……」
自分に皮肉めくように呟くと、四人は、明らかにきょとんと目を瞬かせた。
「…は?もしかして作曲者、何も気付いてない…のか?」
「もしかしなくてもそうみたいだな。…ったく、この超絶鈍感男め…」
「な、なんだよ?!お前達、なんか既に全部分かったような顔しやがって…!」
閃光とルーウェンが呆れながら言い合っている模様を見て、流石に黙っていられなくなったスメタナが、眉を顰めて二人に詰め寄る。だが、スメタナの鈍感っぷりに痺れを切らしたのは閃光のほうだった。逆に閃光がスメタナの目前にまでズイッと詰め寄り、鼻上を指刺す。
「ああ、分かるに決まってるだろ?!この時点でなんっっにも気付いてないのは、作曲者、お前だけだ!!」
はぁ?と困惑して、目をぱちくりとさせているスメタナ。その様子を見かねて、スメタナの弟子であるヴァジーが、初めて一歩踏み込んできた。
「師匠…。イヴ殿は、師匠のことを好いているのでござるよ」
「へ……っ?」
全く予想だにしていなかったヴァジーからの言葉に、スメタナの三白眼が完全に見開かれる。
ヴァジーは一呼吸置いて、続きを話しだす。
「故に、師匠がイヴ殿と口付けしたことを覚えておらず、初めての口付けを奪って悪かったなどと言われたことが……衝撃だったのでござろう」
ヴァジーの言葉に、閃光とルーウェンもうんうんと頷き賛同する。
スメタナは未だに今告げられたことの脳内セーブが完了していない様子だったが、やがて数秒してから、何かを思い出したように、慌てて皆に詰め寄った。
「ちょ、ちょっと待て?!一体いつ俺とイヴがキスしたってんだ?!」
「はぁ?してただろ、この間。俺がイヴに二回目の流れ弾当てられた時。お前、若にシメられて倒れた後、お前に慌てて近付いたイヴがコケて…そのままキスしてたじゃねぇか」
ルーウェンの説明を受けて、スメタナは漸く脳内の試行錯誤に合点がいき、一気に緊張が緩んだのか、へなへなとその場に座り込んだ。
「……っマ、ジかよ…それじゃ…俺は一体なんつーことを…」
スメタナは独り言を呟き、震える手のひらを見詰める。そして、グッと決意を込めて握り締めた。
「……イヴ…俺は…、くそッッ!!」
ガバッ!!と勢いをつけてスメタナは立ち上がると、一目散にアデルの家の方に向かって走り出した。その背中を四人は見送りながら、一仕事終わったような、安堵の笑みを零している。
「ハッ、どーやら、あの鈍感男も、やっと動き出してくれたみたいだな」
「……だが。果たしてこの後、拗れた糸をどう解くのかは、あの男の行動次第だ」
閃光の言葉に、今までほとんど黙っていた若狭が、厳しい声で呟く。
そんな相変わらずお堅い思考な若狭に、ルーウェンは、ニヤリ、とわざとらしい笑みを含んで肩を小突いた。
「…そう言ってるけど、実際あの二人が拗れた原因は、若があの時作曲者をシメて気絶させたせいなんだけどな?」
「…………」
「にん…ど、どんまいでござる…若…」
身も蓋もない事実を言われ、黒い睨みをきかせながら押し黙る若狭。ヴァジーは慌てて若狭を諌めた。






アデルの家の廊下に、カツン!、と強く決意を込めた靴音が響き渡る。その音に気付いて女性陣たちが目をやると、そこには、先程とは明らかに違う顔つきをしたスメタナの姿があった。
「あ、作曲者、また来たのー?」
「んもう。イヴちゃんには逢わせないって言ってるのに、しつこいわねー」
シャルルとローラがそうスメタナに言うが、それすら構わずスメタナは女性陣たちの前にまで近づくと、ガバッ!!と突然女性陣たちに深々と頭を下げた。
「……ッ頼む!!俺をイヴに逢わせてくれ!!」
あまりに深い礼と、スメタナの必死な叫びに、一瞬女性陣達は気圧されかけたが、やがてイライザが、複雑な心境でスメタナに告げる。
「そんなことを申しても…無理な相談でござるよ。イヴ殿本人が面談を拒否しているのでござるからな」
「……なら…ドア越しでもいい。イヴに聞いて欲しいことがあるんだ…それを言わせてくれ」
あくまでこれ以上退くつもりのないスメタナの要望に、流石に女性陣達も、これ以上NOを出すのは(はばか)って思えた。ユリエがそっと隣のクローディアに視線を送る。
「クローディア…」
「…まあ良いでしょう。言うだけ言ってみなさい」
「すまねぇ、ありがとな…」
ふぅと息をつき、クローディアがOKを出した。スメタナはハッと身体を起こし、もう一度深い礼をしてみせた。
クローディアに従い、女性陣たちがドアの前から除け、廊下の端で、ドアの前に佇むスメタナを見守る。そこで、外から戻ってきたルーウェン、閃光、若狭、ヴァジーも女性陣達に合流する。
皆が見守る緊迫した空気の中で、スメタナは大きく深呼吸をし、優しくも透る声色でそっと話し出した。
「……イヴ。俺がお前を泣かせちまったワケ、やっと分かったんだ。お前と…俺が気絶してた時とはいえ、キスしたことを全く覚えてなくて…そんでまたキスしたとき、ファーストキス奪っちまって悪かったなんて言って……無神経にも程があるよな。本当にすまなかった……」
部屋の中にいるイヴは、スメタナの謝罪の言葉を聞きながら、ドアの向こうのスメタナの姿を想い、そっとドアに手をあてる。彼の声に反応するたび、少しずつ、ドアが僅かに振動するのを感じる。
「でも、聞いて欲しいんだ。お前と初めて話した時……お前は自分が嫌いだって言って泣いてたよな。俺も、こんな作曲者って言われてる自分が嫌いだから……ちょっとした同情のつもりで、声をかけた。その後も、同じ悩みを持つ妹を持ったような気分で、ずっと接して世話焼いてきた」
「………」
イヴは、ぎゅうっと抱き枕を抱き締めた。
スメタナはドアに手をあて、ドアの向こうにいるイヴに、少しでも奥深くまで届くように、声を一層張り上げる。
「けど……お前が俺のことを、唯一"作曲者じゃない"って言ってくれた時…本当に嬉しくて…衝撃だった。それからだ、お前が俺にとってかけがえのない存在になったのは」
(…スメタナさん…!)
どきん、とイヴの胸が高鳴る。夢にまで見たスメタナの言葉。思わず、大きな瞳から一滴の涙が零れた。
「…ねぇ、作曲者。イヴちゃんが好きだって気付いてたなら、なんで二回目のキスの時に謝ったりなんかしたの?」
不本意ながら、ローラがきつめの口調でそう問いかける。
「それは……きっとイヴの方も、最初の俺みたいに『同じ悩みを持った兄』みたいな風に接してるもんだと思ってたから……、キスして、嫌われるのが怖くて……咄嗟に謝っちまったんだ」
スメタナは正直にそう話し、不甲斐無い自分への悔しさからか、ギュッと拳を握り締める。
しかし、スメタナは強い意志を持って、ドアから手を離して胸を張ると、喉の奥から精一杯の声を振り絞って叫び出す。
「今更、許してくれだなんて言わねぇ…!!でも、これだけは頼む!!俺はお前のことが好きだ!!お前の自分に負けないようにって頑張ってる姿が、頑張れた、って無邪気に喜んでる笑顔が、好きなんだ…!!だから、お前の泣いてる姿は、見たくねぇ…!!そんなの都合良いって思われるかもしれねぇけど、それだけが、俺の唯一の願いで―――……」



「………スメタナさん…」



「…イヴ……ッ?!」
「あ…イヴちゃん…」
不意に、キィィー…と控えめにドアが開き、イヴが部屋からそうっと出てきた。
泣き腫らしてあまりに悲痛なイヴの姿に、それを見たスメタナも、周りで見守っていた皆までもが、一瞬、胸を切なく締め付けられるような感覚を覚えた。
しかし、イヴはまだ緩む涙腺を少しでも止めようと、目をこしこしと擦って、もう一度周囲を見詰めた。
「ごめんなさい…皆さん。もういいんです。ほんとは、イヴがぜんぶ悪かったんです…」
「イヴちゃん…」
「…皆、行きましょう」
思わず慰めに行こうと近付きかけたローラを制し、クローディアが皆に向かって言う。
「そうだね…。作曲者、イヴちゃんのこと、任せたよ…」
ユリエがそれに頷き、スメタナに後を託してその場から去る。皆もクローディアとユリエに続き、廊下からぞろぞろと立ち去っていった。
ぽつんと一気に人の気配がなくなり、完全に二人きりになった廊下で、スメタナは言い難そうに、けれど言わねばなるまいと、そろそろと口を開く。
「イヴ…俺は……」
「ごめんなさい!」
しかし、それを制すかのように、イヴが頭を下げた。黒い長髪が、それに伴ってふわりと舞い上がった。
「ごめんなさい、スメタナさん…。イヴのせいで、スメタナさんをこんな目に合わせて…。イヴは、スメタナさんに、いつもいつも迷惑をかけてばかりで……、…ッ?!」
必死に謝罪の言葉を紡ぐイヴを、今度はスメタナが制し、突然その華奢な身体を引き寄せ、抱き締めた。
背中に回された腕に、ぎゅうっと強く抱き締められ、ぱちくりとイヴは目を瞬かせる。それと同時に、頬が一気に紅潮していくのがよく分かった。
「もういいんだ…悪かったのは、お前のことを何も気付いてやれなかった俺の方だ」
「そんな…、違います、スメタナさんは何も…。イヴの、イヴのせいで……」
ふるふると首を振って、あくまで悪いのは自分であると主張するのを止めないイヴを、一端スメタナは離すと、今度はそっと両手で頬を包み込み、背中を屈める。
間髪入れず、イヴの目の前に、スメタナの顔が近付いて――……そっと、唇が触れた。
「…スメタナ、さ……?」
名残惜しそうに唇が離されると、イヴはまだ驚きで目を瞬かせながら、ぽかんとスメタナの顔を見据えた。
スメタナもまた赤い顔をしながら、気恥ずかしそうに、へへっ、とはにかんだ。
「一度目も二度目も、どっちかは気付いてなかったわけだし…いっそチャラってことにしようぜ?だから……これが俺達の本当の"ファーストキス"だよな?」
そう言って、こつん、とスメタナはイヴとおでこをくっつけて見せた。
間近にある照れ屋な想い人の微笑みと、温もりと、あまりに嬉しすぎる彼の言葉……。胸に染み渡って、あっという間に体中へと広がる温かな気持ち。
「……はい…!!だいすきです、スメタナさん…っ!!」
イヴは、ぱあぁっ、と心からの満面の笑みで笑うと、感激のあまり、ぎゅうっとスメタナに抱きついた。
(この不幸人な俺が、こんな幸せな気持ちになれるだなんて…全部、お前のおかげだな…イヴ……)



不幸な作曲者に舞い降りたのは、幸福の奇跡を秘めた、純真無垢な一人の少女。
嗚呼、きっとこれから紡がれるのは……何よりも幸せな愛を育む二人の交響曲(シンフォニー)……。
今まで不幸だったぶん……これから、作曲者には、たくさんの幸せが訪れるでしょう……。






ところが。
「「さ〜っきょ〜くしゃっっ♪」」
背後から突然降り掛かった、いかにもアヤしく色めいた、ダブルトラブルメーカー・ローラと閃光の声に、スメタナは、げげっ、と明らかに眉を顰めて後ずさった。
「あらあら♪そんなに警戒しなくてもいいじゃない♪わたしたちはただ、恋に鈍感で奥手な作曲者が、ちゃんとその後もイヴちゃんと上手くいってるかな〜って調査に来ただけよ♪」
「余計なお世話だ!!お前らに介入されると面倒臭い方向に行くから関わるんじゃねぇよ!!シッシッ!!」
「ハッ、随分な言い草だなぁ?俺達のアドバイスがなけりゃ、イヴと仲直り、その上付き合うことになんかならなかったはずだってのに……いわば俺達はお前達の恋のキューピッドだぜ?その後の進展具合くらい確認させろよ〜」
「だ――!!確かに感謝はしてっけどよ!!けど、お前ら幾らなんでもしつけぇんだよ―――!!!」
ローラと閃光に徹底的にイジられるスメタナを尻目に、少し離れたところで、クローディアとユリエとイヴがそれを生暖かく見守っている。
「あらあら。作曲者、えらい目に遭ってるわねぇ」
「す、スメタナさん……」
「まあ、しょうがないよね…あれだけ皆の目の前で堂々と告白しちゃったんだもの。注目の的(?)になるのも無理ないわ」
「そ、そういえば…はわわわぁ……」
ユリエの言葉で初めて『皆の目の前で大々的に告白』されたことを思い出し、今更ながら顔を真っ赤に染めて硬直するイヴ。その初々しい姿に、くすくす、とクローディアとユリエは嬉しそうに笑いあった。
「さぁさぁ、素直に吐きなさい♪イヴちゃんと何処まで進展したの〜?あ、それとも、これから進展させちゃうつもり?きゃっ、恥ずかしい〜♪」
「色恋に疎い作曲者のことだ。もし攻め方が分からなかったら俺に聞けよ?幾らでもレクチャーしてやるぜ♪」
「だぁぁぁぁ!!!ほっとけ――――!!!やっぱ俺はどうしよーもねぇ不幸人だぁぁぁぁ―――――ッッ!!!!」



ホルルト村に響く作曲者の叫びは、一体何の旋律(メロディー)か?
不幸も幸福は、いつもいつも隣り合わせな音符(ノート)。今の不幸は、きっと後程の幸福の為に。
これからもずっと一緒に紡いでいこう。作曲者と少女の、真実の愛の交響曲(シンフォニー)










あとがき。
作曲者スメタナ×新米銀河魔法使いイヴちゃんのお話、第四弾+完結編!
四つにまで渡ったこの二人のお話も、漸く今回で完結を向かえることとなりました。ずっともどかしく引っ張り続けてごめんなさい(笑)。私的には結構満足のいく完結になったつもりなのですが、いかがでしょうか……。これをご愛読頂けた皆様にもお気に召して頂ければと思っております。
一応今回でこの二人の話は完結となりますが、今後も機会があれば何か書けたらいいなぁと。これからもどうぞ、この二人を可愛がってやって下さいね。
それでは、ここまで読んで頂いて有難うございました。



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