Xmas magic ジェイド×アニス編 「……聖夜、ですか…」 ケテルブルクの宿屋の寝室にある椅子にゆったりと座りながら、一人の男性がひっそりとそう呟いた。彼の名は、ジェイド・カーティス。本日はクリスマスということで、仲間達と先程までクリスマスパーティを楽しんでいた。 …が、それも終わった頃、何故かジェイドはこの宿屋の寝室で待っているように――仲間の一人である、アニス・タトリンに半ば無理矢理に託けられた。 一体パーティも終わったというのに何の用なのか――と考えてみたが、まあ大体察しがつく。今日は朝から女性陣が余所余所しかったり怪しい素振りを見せていたので、恐らくクリスマスというイベントに便乗して、何かやらかすつもりなのだろうと。 それが当たっているのであれば、恐らく先程自らと同じ様に「待ち合わせの約束を託けられた」といって宿屋から出て行った、ルークやガイも女性陣に何かされているはず。自分を誘ったのがアニスであるならば、あの二人にはティアとナタリア、というところだろうか。 そこまで考えて、ジェイドはふと窓際を見た。 「……ホワイトクリスマス…なんて、ここに居た頃はいっつもそんな感じでしたけどねえ…」 そう、ジェイドはこのケテルブルク出身。 ここに住んでいた頃は冬にはほぼ毎日雪が降り、ホワイトクリスマスなんてあまり意識したことがなかった。――いや、クリスマスという行事にすら、ということだろうか。 幼い頃から天才と言われてきて、そこらの大人よりか大人びていた彼にとっては、クリスマスなんて子供の行事であり――自らには関係のない事だ、とずっと思っていたので。 「まあ…楽しみ、にしておきましょうか」 そう呟くと、ジェイドは窓の向こうに見える、地に降り注ぐ雪から、目を逸らした。 「大佐ー、お待たせしましたー!開けて下さーい」 不意にドアをノックする音が聞こえる。そして数秒の合間もなく、そんな風な元気のいいアニスの声が聴こえてきた。ゆっくり椅子から立ち上がると、ドアを開けた。 「はいはい。ほら、開きましたよ」 「有難うございまぁす♪」 ニッコリとした笑顔を見せて、アニスは自然な動作で部屋に入る。彼女が中に入ったのを確認すると、ジェイドはゆっくりとドアを閉めた。 「それで…アニス。私に何か用が」 「メリ〜クリスマ〜ス!」 ジェイドが声をかける前に、アニスのそんな声が続きを消し、それとほぼ同時にパァン!と軽快な音が耳元に響いた。数回瞬きをし、アニスの方を見下げると、その小さな手にはクラッカーが握り締められていた。 「ふっふ〜、驚きましたかぁ?」 「そうですねー、強いて言うならこの私を驚かそうとした度胸に驚愕致しましたね♪」 「やだーもう大佐ったら♪」 そんな感じで話した後、ジェイドはふとあることに気付く。 「…おや、アニス。今日は服装が違いますが?」 ジェイドの言ったとおり、アニスの服装はいつもと違っていた。 赤いノースリーブワンピースに、とこどころに柔らかそうな白いファーがつき、いつものリボンにもヒイラギの装飾がついていて、更に胸元あたりには、可愛らしい小さな星がついたペンダントがあった。形や色からして、クリスマスツリーの上によく飾られるトップスターのようなものらしい。 ジェイドに気付いてもらえた事が嬉しいのか、アニスは自らの指先と指先をを絡め、いかにも可愛らしい仕草をしながら、ジェイドに近づいた。 「えっへへー、気付きました?サンタさん仕様の衣装なんですよ♪可愛いでしょ♪」 「ええ可愛いですね、服がとっても」 「大佐の意地悪〜!」 アニスが軽めにジェイドの胸板(といってもあまり届いていない)をポカポカと叩く。 が、少ししてアニスは本来の目的に気がついた。 「こ、こんな事がしたいんじゃなかった…!大佐、ちょっと椅子に座って下さい!」 「別に構いませんが」 ジェイドはアニスに言われるがままに椅子に座る。一体何をやるつもりなんだか、と心の中で思いつつも、アニスが行動に出るのを待つ。…数秒後に、何か後ろの方から、ふわりとした感触が走った。それから肩にアニスの両腕が伸び、絡み、ついに抵抗を一切しないまま、ジェイドはアニスに後ろから抱きしめられた。 「おやおや、今日のアニスは積極的ですねえ」 「当たり前じゃないですか!この格好だって勿論その為ですし☆」 茶化すようにしたつもりだったが、アニスはどうやらその通りだったらしく、首を絞めない程度にジェイドをぎゅーっと抱きしめる。後頭部あたりに何か、微かに柔らかなものが押し当てられていることに気付くと、ジェイドは全て理解した。 つまり、この服装も、この積極的さも。 『ジェイドを誘っている』という心理が裏にあったのだということだ。 「やれやれ……どうしましょうかねぇ…」 「紳士は女性に恥をかかせるんですかぁ、大佐〜?」 ジェイドが意味に気がついたのをアニスは悟ると、一層すりすりとジェイドに身を擦り寄りながら、甘えるような声色を出してジェイドを誘う。 ジェイドはふう、とひとつ溜息をつくと、ふと手をアニスが見える角度にまで上げ、意識を集中する。…すると、いつも槍を出す時のように、どこからともなく、少し大きめの袋が現れた。 「わあ!大佐、それなんですか?」 「ま、大体察しがついてましたからね。あなたへプレゼントですよ」 「わ〜、有難うございます大佐♪」 嬉しそうに、抱きついたままアニスはそれを受け取ると、早速包みを開ける。すると、中から可愛らしい人形が出てきた。 「すっごく可愛いです、大事にしますね!」 そう言いながら、アニスはニッコリと微笑む。後ろからでは分からないが、アニスが笑ったことはジェイドには大体分かった。アニスはまた人形をそーっと袋の中に戻し、一度ジェイドから離れ、テーブルに置く。そして、振り向いた時には、座っていた筈のジェイドは此方を見下げて仁王立ちしていた。 「た、大佐…?」 「いやあ、私があげたのに、サンタである貴女から貰えないのは、どうかと思いまして」 そう言いながら、ジェイドはアニスをじりじりと移動させ、窓際の方にトン、と背中を軽く打つようにして追い詰めた。アニスはぎこちなく笑いながら、なんとか逃れようと慌てる。が、それも虚しく、アニスの顔の隣あたりに、トン、とジェイドの手がつき、完全に追い詰められてしまった。 「何か下さいますか?アニスサンタさん?」 怪しい笑顔でニッコリとそう問い詰められ、アニスはぎこちなく笑うと、両手の人差し指で自らを刺しおずおずと言った。 「ぷ、プレゼントはこのアニスちゃんです♪…な〜んて……」 その言葉を聞くと、ジェイドはフッ、と一層怪しげに微笑んだ。 「…では、早速頂きましょうかねぇ」 「ひあっ!ちょ、たい…さ…!やめっ…!!」 アニスの制止も聞かず、ジェイドはまずアニスの柔らかな頬に口付け、次に素早くその唇を奪う。 「んっ…!大佐…!」 「誘ったのは貴女ですからね。今更、覚悟は出来ていない…なんてありませんよね?」 「でも、皆が戻ってきちゃいますよ…!」 慌ててアニスがそう言うと、ジェイドはまるで動じず、寧ろ楽しそうに微笑みながら言った。 「平気ですよ。鍵かけておきましたから♪」 「いつの間に…?!」 恐らくアニスを迎え入れてドアを閉めた時だと思われるが、既に遅い。 そのままされるがまま、アニスの体は床にずるずると滑り落ち、最後にはジェイドの腕に抱きとめられていた。脱力しているアニスを抱えながら、ジェイドは楽しそうに笑み、こっそりと僅かに上にある、白く曇った窓に、その細い指で文字を描いた。 それにアニスは気付く事なく、ゆっくりと水になり消えていったが、次の日の朝、昨夜その窓に刻んだ「想い」を思い出しながら、ジェイドは随分とご機嫌な様子だったという。 記された想いは、そう――― 『Merry Xmas』…! あとがき。 「Xmas magic」、ジェイアニ編です。 なんだか他のと一際外れて糖度高いですが、多分愛の力量と書き易さの違いだと思います(汗)。ルクティアもう少し甘くても良かったかしら…汗。 ジェイドは鬼畜さんなんで聖夜の日にそーゆーことわざとしてればいいよ、うん。()こ、これ一応R指定じゃないので…多分…!(待てい 感想など宜しければ聞かせてやって下さい。それではMerry Xmas! ブラウザバックでお戻り下さい。 |