○月×日、晴れ………
この日は、何時にも増して賑やかだなぁ…と思っていたら、そりゃもう青天の霹靂の如く、新しい出来事が起こりました。



「あっ、アニキ?!アニキやん!!なんでここにいるんや?!」
「何いってん、そりゃ、女にしてワイと同じ盗賊になった妹のことを、心配して来たに決まってるやろ〜?」

――――…シャロン(トラブルメーカー)が二人に増えました。





ーゼー記帳





「どうなってんだ、こりゃ……」
魔王城のロビーに広がる、大きな人だかりを凝視して、ストライダーのゼーベックことゼーゼーは、思わずぽつりと呟いた。魔王城は元々沢山の悪魔がひしめいてはいるが、こんなに一点に密集しているのを見るのは初めてだ。
やや背伸びをして見てみると、人だかりの中心には、盗賊シャロンと、もう一人、見知らぬ盗賊が何やら親しそうに話している。
しかし、ざわつきのせいで、ゼーゼーには、二人が何を喋っているのか、あまりよく聞こえない。
困惑して立ち尽くしている所で、何処からともなく、我らが仕える魔王・ラハールがゼーゼーの元に歩み寄ってきた。
「ゼーゼー!貴様、俺様の話を聞いていなかったのか?!」
「はあ、すみません……ちょっと所用で出掛けてまして…」
武器防具の強化をしに、アイテム界に行っている間に、この出来事。
本当に何も状況を把握出来ていないらしいゼーゼーを見て、ラハールは面倒臭そうに溜息をつく。
「…仕方ないな。こっちに来い」
ゼーゼーを手招きし、人だかりを掻き分けて、二人は輪の中心となっている盗賊二人のもとにまで辿り着いた。するとすぐ、ラハールは見知らぬ盗賊の方を指差し、説明を始める。
「こいつは、今日新しく仲間になった宇宙海賊のフェイロンだ。俺様もついさっきまで知らなかったが、こいつはシャロンの実の兄らしい」
「あっ、兄ィ?!!」
ギョッ、とゼーゼーは目を見開いた。
「ははは、ゼーゼーも驚いたろ」
「何処か似てるなぁとは思ってたけど、本当に兄妹だとは思わなかったから……」
丁度近くにいたらしい、戦士のルーカスと僧侶のレイラが、にこやかに笑いながらゼーゼーにそう言う。
はぁ、へぇ、そうなんですか、と乾いた相槌を打つしか出来ていないゼーゼーに、いきなり、フェイロンと呼ばれた盗賊が、ひょこっと間に顔を挟んだ。
「おや、もしかしてそこにおわすんは、噂のゼーゼーはんかいな?」
「へっっ?!」
まだ自己紹介すらしていないというのに、突然名前を(しかもあだ名で)呼ばれて、ゼーゼーは吃驚して後ずさった。
「おっと、申し遅れたわ、ワイは宇宙海賊のフェイロンゆうねん。もう知ってると思うけど、シャロンの兄貴なんや。妹が今どうしてんのかな〜元気にやっとんのかな〜って気になったんで、ちょっくら此処に仲間入りする事にしたんや。まぁ、今後とも宜しく頼むで〜」
「は、はぁ、宜しくお願いシマス……」
軽く握手を施され、流れに乗せられてゼーゼーとフェイロンは握手をし、されるがままぶんぶんと上下に激しく振る。
と、そこで漸く我を取り戻してきたゼーゼーは、握手を解くと同時に、フェイロンを疑わしそうに睨み付けた。
「って、"噂の"…って言ってたけど、俺が一体なんなんだよ?」
「だってワイの実家では有名やで?ゼーゼーはんは将来シャロンの婿になる逸材やって……」
「ブハッ!!む、婿ぉ?!!」
「わーわーわーわーっ!!!あああアニキ何ゆーてはるんやっ?!!!」
とんでもない発言をかましたフェイロンを、慌ててシャロンが止めにかかる。
「だってこないだ送ってきた手紙でゆーてたやん、仲が良くて、一緒だと楽しい人がおるって……」
「そ、それは別に婿だとかにしたいって意味で書いたんじゃないんや!」
フェイロンがあまりにもあっけからんとした顔で言い、シャロンが顔を真っ赤にして苦情を叫ぶ。
あの自由奔放・天真爛漫なシャロンを、これだけあっさりと捻じ伏せるとは、シャロンの兄貴だということは間違いではないらしい。…というか、ある意味でこいつはシャロン以上の……。
思わず考えてしまった恐ろしい予想を、ゼーゼーは慌てて振り払い、言い合う兄妹の間に無理矢理割って入った。
「っつーか、シャロン、お前もお前でややこしい文面書くなよ、誤解されるだろ?!」
「………誤解って…それ、どーゆー意味や?」
「へ?」
何故か、突然シャロンの顔色が悪くなり、そのまま俯いてしまった。
全く意味が分かっていないゼーゼーに、シャロンが追い討ちの如く言い放つ。
「ウチとそーゆー関係だって思われるのが嫌なん?……そうなん?」
「い、いや別に、俺はそこまでは……」
妙に質量の効いたシャロンの声色と、やや据わったような目線に、びくり、とゼーゼーは思わず怯んだ。
そのゼーゼーのビビッたような反応が最後の引き金だったのか、シャロンは突如、ぶわっと目元に溢れんばかりの涙をためて、思いっきり喚き声を上げた。



「―――ゼーゼーはんはウチのことが嫌いなんやっ!!ウチはもう失望したで〜〜〜っっ!!!」
「だぁ――――っっ?!!ちょ、どうしてそうなるんだよお前わ―――?!!!」



ゼーゼーの制止の声届かず、シャロンはいきなり猛ダッシュで走って行ってしまった。
この沢山の人がいる状態で、そんな事を叫ばれて、その上シャロンに逃げられてしまっては、もはや自分が悪人も同然ではないか。…いや、実際悪人なのか…?
どちらにせよ、自分が、意外と乙女な、あの盗賊の少女の癪に障る発言をしてしまった事は確からしい。
「あははは〜、ゼーゼーはん、あんまワイの妹を苛めないでくれへんか〜?」
「誰のせいだ誰のッッ!!」
けらけらと笑いながら、呑気な面をして上下に手を振るフェイロンに、ゼーゼーは全力で叫んだ。
「知らへんよそんなもん〜………って、ん?」
嗚呼、もうこいつには構ってられない、早くシャロンを追いかけなければ…と思ってゼーゼーが走り出そうとした瞬間、



「………っちょ、ゼーゼーはん!!」
「へぐぅっ?!!」
「あ、アニキ?!!」



何故か分からないが、物凄い力でフェイロンがゼーゼーの胸倉に掴みかかった。
あまりの苦しさにゼーゼーが悶え、丁度城を一周して戻ってきたらしいシャロン(どんだけ足速いんだこいつ)が、慌てて兄を止めようと近寄る。
「な、何す…ぐ、苦じ……」
「ゼーゼーはん、あそこにいるべっぴんはんは一体誰や?!」
ビシィ!とフェイロンは必死の形相をしながら、とある女性を指差した。
はた、と指差された方を見てみると、そこには、魔王城の廊下を、黒髪をなびかせ、しゃなりしゃなりとしとやかに歩いている侍のアウレリアの姿があった。
「へ?あ、アウレリアのことか…?」
「アウレリアはん……ええ名前やわぁ………」
ゼーゼーが答えた途端、フェイロンは、うっとりとした表情でアウレリアの名前を呟き、パッ、と力なくゼーゼーの胸倉を掴んでいた手を離す。
「……??」
「アニキ…?」
フェイロンの百面相に着いていけていないゼーゼーとシャロンは、頭に疑問符を浮かべて、首を傾げる。
ふと、自分を見つめる、フェイロンの視線に気付いたらしいアウレリアが、くるりと方向転換をして、フェイロンの方に近寄ってきた。
「もし、貴方は今日新しく加入したという盗賊殿か?」
「あ、ああ…フェイロンゆーねん」
尋ね人本人だという事を確認すると、アウレリアは満足そうにニッコリと微笑んだ。
「御意。フェイロン殿、拙者の名はアウレリアと申す。以後、宜しく頼む。同じ仲間としてラハール殿に仕える身、使命をまっとうするべく、共に戦っていこうではないか」
侍らしい、堅実で武士道精神溢れる言葉を紡ぎ、アウレリアは握手をしようと、スッとフェイロンの目の前に手を差し出す。
「………」
「? フェイロン殿、いかがいたし…」
しかし、何故かフェイロンは無反応で。
どうしたのかと思い、アウレリアがそっとフェイロンの顔色を窺おうとした途端、



「―――――アウレリアは〜〜〜〜〜〜〜〜〜んっっっ!!!!」



「〜〜〜ッッッ?!!!」



―――物凄い勢いで、フェイロンはアウレリアに抱きついた。
フェイロンの突拍子もない行動に、当然ながら仰天し、声にならない声を上げてしまったアウレリア。勿論、ゼーゼーやシャロン、周りにいたその他全員も、目を点にして驚愕する。
「ふぇ、フェイロン殿ッ?!いきなり何を…」
こういうのにめっぽー免疫がないアウレリアは、真っ赤に頬を染め上げ、必死でフェイロンを引き剥がそうとする。が、ぎゅうぎゅうと力いっぱい抱き付き、胸にどさくさ紛れて顔を埋めてくるフェイロンを、離す事が不覚にも敵わない。
「殿だなんてそんな余所余所しく呼ばんでええでvフェイロンって呼んでぇな〜v」
「フェイロンっ…ちょ、離し………」
希望通りの名前を呼ばれた事に満足したのか、にんまりとフェイロンは微笑む。
そして、一端胸に埋めていた顔を上げ、超至近距離でアウレリアを見つめる。
「ワイ、どーやらあんさんに一目惚れしたみたいや〜v絶対ワイんものにしたるから、覚悟しといてや〜!!」
「え…えええぇぇっ?!!」
大胆告白キターーー。
こんな公衆の面前で、アウレリアに抱き付き、更にはこのオトしてみせる宣言。
恐らく、いや絶対、初めてアウレリアを目にした瞬間から、フェイロンには、既にアウレリア以外どれ一つとして見えていないに違いない…。
「し、しかし、拙者はそのようなことには興味がなくてだな……」
「これからどうなるかはわからんやろ?もしかしたらワイにゾッコンになるかもしれんやんv」
((それはお前だろう……))←ゼーゼーと妹の心の声
「も、もういい、兎に角離してくれないかっ!!」
「いやや、離したら逃げるやろ?だから、離してっつっても絶対ワイは離してやらんで〜v」
「か、勘弁してくれ………!」
いつも凛々しく、己を保っているアウレリアが、フェイロンに見事に言いようにされてしまっている。
その様子を見て、ゼーゼーは額に青筋を浮かべ、ボソッと呟いた。
「…………すっげぇな、お前のアニキ……あのアウレリアが押されてら……」
「あ、あはあはあははは……そうやね………ちょっと見んうちにパワーアップしたんかな…なんて………」
シャロンもまた、予想以上の兄貴の暴走っぷりに困惑しているよう。
と、そこで、呑気な顔をしてルーカスとレイラが喋り合う。
「ある意味、フェイロンはシャロンより更にムードメーカーの素質があるんじゃないか?」
「これからもっと賑やかになりそうね、ルーカスv」
「そうだな、レイラv」
どうすれば、そんなポジティブな考えが出来るのだろうか…と、我が友達ながら、ゼーゼーは思わず口元をひくつかせた。
それにしても、先程からアウレリアは、必死に抵抗はしているものの、無理矢理フェイロンを引き剥がす事は出来ていない。その上、真っ赤に紅潮した頬は、困惑しているというより、まんざらでも無さそうに照れている、と言った方がしっくり来ると思うのは、自分の気のせいなのだろうか。
―――どちらにせよ、騒がし過ぎて、見るに耐えないのは変わりないが。



「………どうかお願いだから、俺の苦労がこれ以上増えませんように……」



自分の願いが叶うことは、100%有り得ないと、ゼーゼー自身が痛いほど分かっていても、思わず平穏を願わずにはいられない。
これからどんどんページ数を増やす事になりそうな、自分の悲惨な日記帳を想いながら、ゼーゼーは大きな溜息をついた。










あとがき。
ディス1の初・メイキング小説です。カップリング的には盗賊♂×侍♀のつもりなんですが、なんだかスト×盗賊♀も目立ってるなぁ…(あ
シャロンの兄貴、フェイロンの登場話です。本当はこれより前に戦僧の馴れ初め小説やら、スト盗のドタバタコメディやらも書きたかったんですが、この二人を早く出したくてつい……(あ)。それにしても、ゼーゼーを書いてるうち思ったんですが、ディス2の戦士ルーウェンに非常に似ている気がした。苦労人だから?笑
非常に分がまとまってない上、支離滅裂で申し訳ない……だってこれ一日で速攻で書き上げた話ですs(ry
それでは、ここまで読んで下さって有難うございました。また次回作品でお逢い致しましょう。



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