鈍感らぶず
その日、俺達の元に甘い匂いを漂わせる大きな大きな箱が届いた。
その大きな箱の中には、大量のチョコレートがぎゅうぎゅう詰めにされていた。
鈍感らぶず
「っはぁ〜〜、コジロウ先輩羨ましいですーッ。」
「それならこれ、一つあげるわよ。」
ムサシは、俺宛の綺麗にラッピングされた箱を適当に一つ掴み、
その大量のチョコレートを運んできたモンドへ手渡した。
「ほっ…ホントに頂けるんですかーッ!?」
「いつもいろいろと協力してもらってるんだもの、当然よ〜。」
ムサシは、語尾にハートマークをつけてそう言った。
「……それなら、自分のをやれよ…。」
「何か言った?」
「いえ…。」
よくあんな呟きが聞こえるもんだ。
思いながら俺は、また大量のチョコレートに目をやった。
…どうするかな、これ。
「モンド君ッ!何をしてるんですッ!」
一人の少女がバイクのようなものに乗ってやって来た。
「あ…ちゃん。」
「あら。」
「ムサシ先輩コジロウ先輩ニャース師匠!ご無沙汰しております!」
いつもモンドと一緒に配達をしているだ。
「…あ、ちゃんじゃないですよッ。用事が終わったらすぐに本部に戻る!基本ですよッ!」
「ど…どうしたのちゃん…怒ってる…?」
「怒ってます!だいたい今日は忙しいんですから!知ってますでしょう!?」
「ま…まぁまぁ落ち着きなさい。」
「え…あ、すいません…。」
いつものじゃなかった。
眉間にはシワが寄っていて、明らかにいらついている。
あの微笑ましい笑顔はどこへ消えたのだろう。
「…さ、モンド君帰りましょう。」
は乗ってきたものを折り畳み、転送鞄に詰め込んだ。
「あ、うん。それでは先輩方!」
「あ、じゃあね。」
「またにゃ!」
「じゃあなー…。」
俺は、ボーっと片手をあげた。
「モンド君、早く。」
は、ジープのハンドルを握りモンドを促した。
「あ、うん。」
「それでは皆さん。」
が告げるとほぼ同時、ジープは走って行った。
「…それにしても、美味そうな匂いだにゃ〜。」
「で、これは全部私宛なのね。」
「コジロウ宛だにゃ。」
「うっさいわね、分かってるわよ。」
「……それ、全部やるから知ってる名前があったら俺に渡してくれ。」
からのを、もらいたかったんだ。
「……えぇ、分かったわ。」
「分かったにゃ。」
「あー、美味しかった!」
「美味かったにゃ〜!もう3日何も食べてなかったからにゃ〜。」
二人は、見事にそれを食べきった。
こんな甘いもの、よく食べられる。
「……あのさ。」
「何?もう食べちゃったんだから返せないわよ。」
「いや…なかったか?知ってる名前。」
「えー?知ってる名前って、具体的に誰の名前よ?」
ムサシは、にやつきながら言った。
「……………。」
「あ、のならあったけど…。」
「ま…マジでか!?」
「…ぷふっ、うっそよ〜ん。」
「なっ………。」
ばれた。
…っていうか、ばれてた。
俺がのこと、好きだってこと。
でもさ、俺のこと好きとかそういうのじゃなくても、
一応これでも先輩なんだから、普通義理っつーのを渡すもんじゃねーのかな…。
「そりゃこれだけあんた宛のチョコがありゃねぇ…。」
「え…ど、どういうことだよ…?」
「あんたってホント鈍感。」
「は…はぁ…?何だよそれ…。」
「もういいわよ、私が上手くやってあげるわ。」
ムサシは、呆れ半分にそう言った。
上手くやるって…何なんだよ…?
「こ…コジロウ先輩…。」
「ん…?」
急にがジープに乗ってやって来た。
「あ…あの…ムサシ先輩達は…。」
「え、あぁ、どこ行ったんだろうな…。」
「え…その…お一人なんですよね…?」
「あ、あぁ。」
「あの………。」
はもう、怒ってはいなかった。
だけど今度はどこか寂しそうで、切なげだった。
「…その…ライバルが多いことも知ってますし…。」
そりゃ、ライバルが多いよ俺には。
相手はこのだからな。
「自分が眼中にないことも分かってます…。」
いや、そこまではっきり言わなくても…いいんじゃねーの…?
「だけど……だけど……。」
「………?」
「……その…好きなんです…!!」
は言い終えると、ピンク色の包み紙を俺に押しつけた。
「え……?」
「ごめんなさい、迷惑なことして…!!それじゃあ…さ、さようなら…!」
そう言っては走り出そうとした。
瞬間、
"あぁ、俺って、バカだったんだな。"
と、そんな想いが頭を駆けめぐった。
ジープへ走り出すの腕を掴んで、少しだけ強く引っ張った。
はバランスを崩し、倒れそうになる。
そして、その細い体を受け止めた。
「えっ……!?」
「サンキュ、嬉しい。」
「ちょっ…コジロウ先輩…!?」
「俺も好きだよ、のこと。」
「えっ…う…うそ…。」
は俺の腕の中で呟く。
「俺バカだからさ…がそんな風に思ってたって知らなかった。」
「…コジロウ先輩………あの、コジロウ先輩……。」
「ん?」
「……………好き…です…。」
俺、本気でが好きなんだなと思った。
「……大…好きです……。」
なんて言いながら額を胸に押しつけてくるもんだから、
俺も好きだなんて、言えたもんじゃなかった。
とにかく心臓が大きく鳴って…聞こえそうで……なんてーか……恥ずかしい…。
俺はを自分から引き剥がした。
そして、ほんの少しだけしゃがんで、
の唇へ、本当に触れるだけのキスをした。
顔赤いのが、バレないかと心配したけど、そんな心配はいらないみたいで。
「え…ちょ…こ、コジッ……コジロッ…せんぱッ…!!」
「…お…俺も、好きだよ。」
「うそ…やだ…どうしよっ……。」
はそう言って、泣き出してしまった。
俺…なんかいけねぇことしたか…?
「えっ…ど…どうした…。」
「ごめんなさいっ…もう……あのっ…幸せすぎてっ……。」
可愛いと、本当に思った。
愛しいと、心底感じた。
「…あぁ、俺も幸せ。」
典型的なハート型のチョコレート。
もったいなすぎて食べれずにいたら、
無理矢理口に押し込まれた。
ものすごく…美味かった。
ものすごく…甘かった。
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あの、
甘いのはいいけど、
ベタはダメだよ。
ベトベターはダメだよ。
ベトベトンだよ。(壊
…あ、っていうか、
モンド君だしちゃった。
懐かし。